先輩たちからのメッセージ

イラスト

宇宙の仕事




「宇宙の仕事=宇宙飛行士」というイメージが強いかもしれませんが、ほかにもたくさんの仕事があります。
ここでは、実際に宇宙にかかわる仕事をしている先輩たちから、いろんな話をきいてみよう!

*書籍『宇宙のがっこう』(138-142ページ)「先輩たちからのメッセージ」全インタビューを掲載しています。

地球以外の天体を調べてみたい!

顔写真1

自己紹介・この仕事につくきっかけ

子供の頃、なぜ地球にだけ人間や生き物がいるのか不思議に思い、地球以外の天体に興味を持ちました。他の天体のかけらの石が地球に降ってきていることを知り、大学では、それらの石(隕石と呼びます)を調べる研究室に進みました。大学院では、米国のアポロ計画で人間が月から持ち帰った石と、月から飛んできた隕石の両方について、成分や石ができた年代を調べたところ大きな違いがあり、月についてまだわかっていないことがたくさんあることがわかりました。探査機を送って月や地球以外の天体を調べる計画に関わる仕事をしたいと思い、JAXA(当時のNASDA)に入りました。

荒井 朋子(あらい ともこ)さん

千葉工業大学 惑星探査研究センター(主席研究員)

ふだんはどんな仕事をしているのですか?

2016年から2019年まで行っていた国際宇宙ステーションから流星群をハイビジョンカメラで観測するプロジェクト(METEOR, メテオ)が無事完了し、現在は流星映像の解析を進めています。最近は、ふたご座流星群のもととなる塵(ちり)を吹いている小惑星フェートンに探査機を送って調査するプロジェクト(DESTINY+、デスティニープラス)にサイエンスチームの責任者として関わっています。フェートンは地球と違い、楕円形の軌道で太陽の周りを回っているため、探査機は秒速33㎞という超高速でフェートンに近づき、天体の写真を撮り、天体の周りに漂う塵の成分を調べるという挑戦的な計画です。2024年の打ち上げを目指し、プロジェクトのメンバーやこの計画を支える多くの研究者と協力しながら計画を進めています。

なお2013年には米国の南極隕石探査に参加して南極点付近の氷河で約400個の隕石を採集したりもしました。


DESTINY+ DESTINY+

仕事にやりがいを感じるのはどんなときですか?

プロジェクトを進める中で、世界中の研究者やいろいろな業種の方と相談や協力をして、目標が達成できたとき。仕事を通して夢が叶ったとき。





日米プロジェクトメンバーの写真

NASAジョンソンスペースセンターにて、宇宙飛行士によるメテオカメラの操作性確認を行ったときの日米プロジェクトメンバーと

メッセージ

私たちの住む地球、太陽系そして宇宙には、まだまだわかっていないことがたくさんあります。宇宙にかかわるお仕事にもいろいろな種類があります。自分が興味のあること、得意なことで、宇宙に関わるどんな仕事があるか、調べてみてくださいね。

みんなの「好き」を集めてパワーに!

顔写真2

自己紹介・この仕事につくきっかけ

星空が大好きな祖母が買ってくれた図鑑を読んで、宇宙に興味を持ち始めました。
小学生の頃は、水ロケット作りや科学館での活動に取り組むなかで理科やものづくりが好きになり、特に「ロケット」に憧れを抱くようになしました。学生時代は、コンピュータを使って機械を動かしたり、計算をしたりする仕組みについて勉強(情報工学専攻)し、いまJAXAで働くようになりました。

浅村 岳(あさむら がく)さん

宇宙輸送技術部門 宇宙輸送安全計画ユニット(研究開発員)

ふだんはどんな仕事をしているのですか?

入社以来6年間、種子島宇宙センターから打ち上げられた全てのロケットに関わっています。
ロケットを打ち上げてから、人工衛星が目的の軌道に投入されるまでのあいだ、地上からは機体の位置や状態を見守り続ける必要があります。飛行中の機体から送られてくる様々なデータを処理して、ロケットが計画通り安全に飛行しているかを計算するコンピュータ(飛行安全管制システム)を開発・運用しています。

イラスト1

仕事にやりがいを感じるのはどんなときですか?

ロケットの打ち上げは、人工衛星を軌道上に送り届けるまでのわずか数十分で終わってしまいます。
その一瞬のための準備には長い時間がかかります。大変だけど、自分が打ち上げに関わった人工衛星が宇宙空間で活躍していると聞くと、とても誇らしく嬉しくなります。


種子島宇宙センター
種子島宇宙センターにて

メッセージ

一人ひとりの「得意なこと」や「好きなこと」 をたくさん集めてみんなで協力すれば、いつかきっと巨大なロケットだって打ち上げられるようなパワーになります。
もしも何か興味のあることを見つけたら、あきらめずに追いかけてみてください!

イラスト1

小さな頃の環境問題への関心が今に

顔写真3

自己紹介・この仕事につくきっかけ

幼い頃から身の回りの環境問題に興味があり、将来は地球環境問題の改善にかかわれるような仕事をしたいと思っていました。
そこで、大学では化学を専攻し、大学院では富士山で発生する雲や雨、雪に溶け込んだ化学物質を分析して日本上空にアジア大陸から流入する越境大気汚染の影響評価を行っていました。
JAXAが運用している地球観測衛星では宇宙から大気中の二酸化炭素濃度や雲の発生状況などを地球規模で観測できるということを知り、JAXAで地球観測衛星の開発や地球観測データを用いた研究がしたいと思ったのがJAXAに入ったきっかけです。

宮谷 新(みやたにしん)さん

追跡ネットワーク技術センター 追跡技術開発チーム

ふだんはどんな仕事をしているのですか?

衛星の位置を知り、地球から衛星へ指令を送ったり、衛星からデータを受信するために必要なパラボラアンテナの開発や維持管理を行ったりしています。パラボラアンテナのことは知らない人が多いかもしれませんが、衛星の活躍にはパラボラアンテナが欠かせません。まさに縁の下の力持ち! 現在の仕事では、従来JAXAが運用してきたパラボラアンテナよりも一度に多くのデータを受信することができる「Ka帯受信システム」という新しいパラボラアンテナを開発しています。「Ka帯」というのは衛星との通信に用いる電波の周波数帯の種類を指します。筑波宇宙センターと地球観測センターに1つずつパラボラアンテナを建設中で、今後打ちあがるALOS-3(だいち3号)、ALOS-4(だいち4号)のデータを受信する予定です。

イラスト2

仕事にやりがいを感じるのはどんなときですか?

新しい衛星が打ち上がった直後、担当しているパラボラアンテナで無事に衛星のデータを受信できたときに一番やりがいを感じました。新しい衛星が打ち上がる前には、打ち上げ後に問題が発生しないように事前に様々な試験を行います。ERG(あらせ)の打ち上げへ向けて勝浦第4送受信局というパラボラアンテナで試験を重ねていた頃、パラボラアンテナに様々な問題が発生しました。夜遅くまで勝浦宇宙通信所で試験を行うなど、大変なこともありましたが一つひとつ問題をクリアし、打ち上げを迎えて無事に勝浦第4送受信局でERG(あらせ)のデータを受信できたときは安堵したと同時にとてもやりがいを感じました。

Ka帯受信システム
Ka帯受信システム

メッセージ

JAXAが行っている宇宙開発には、いろんな分野の知識や経験が必要です。「宇宙開発」といえば衛星やロケット、宇宙飛行士さんなどを思い浮かべると思いますが、これらのミッションを成功させるために電源や熱、素材、ロボティクス、通信、天文……など様々な分野の専門家が集まっています。一見、宇宙には関係なさそうなことも係わっていたりします。
ぜひ、自分が興味のあることは何だろう?と考えて、一生懸命取り組んでみてください。
皆さんの興味のあることが、JAXAの仕事につながり、新しい宇宙開発のアイデアになるはずです。

「世界中の人と友達になりたい」から始まった!

顔写真4

自己紹介・この仕事につくきっかけ

「世界中の人と友達になりたい」これが、物心ついたときから、大人になった今でも変わらない私の夢です。
また、人と動物が大好きで、頭で考えるより先に話しかけてしまう性格で、気持ちさえあれば言葉はあとから覚えられるので本能的な部分で交信しようとします(動物とは目で会話できます!)。
小さな頃、両親に連れられて見たへールボップ彗星の衝撃と当時大ファンだったセーラームーンが忘れられず、宇宙を夢見るようになりました。そういった幼い頃からの憧れと、地球を超えた規模で世界中の人と仕事ができる魅力と、いつかは宇宙人と交信もしてみたい、という理由からJAXAへ就職しました。面接では宇宙人と交信したい部分を強くアピールしました。
未知なる世界への挑戦や刺激を求めるタイプで、JAXAで働くうちに、国連の宇宙部への出向というポストを発見しました。まさに世界中の人と仕事ができるうってつけの場であったため、行きたい!と思い応募しました。尊敬する上司や大好きな仲間たちが背中を押してくれ、晴れて合格、3年間派遣してもらいました。

小島 彩美(こじまあやみ)さん

内閣府宇宙開発戦略推進事務局(2020年~)・国際連合宇宙部(2017年~2020年)、JAXAから出向

ふだんはどんな仕事をしているのですか?

【国際連合】
宇宙先進国と言われる日本やヨーロッパの国々と協力して、発展途上国も一緒に宇宙開発をしていくことができる「初めの一歩」へのお手伝いをしていました。例えばケニアが初めて開発した超小型衛星を日本と協力し、国際宇宙ステーションにおける日本のモジュール「きぼう」まで運び、そこから放出をしたり、ドイツと協力をし、無重量実験に使う、世界一高い落下実験棟での実験機会を様々な国の学生へ提供したり、宇宙を通じ各国の架け橋となるお手伝いをしていました。
その他に、国連全体の取り組みの一つ「若者の声を世界の舞台へ届ける」Youth Engagementという活動の宇宙部代表として、若者が世界のリーダー達と議論できる場を提供する活動を行っていました。世界中の若者を対象に「宇宙がSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)へどう貢献できるか」についてエッセイを書いてもらうコンテストを実施、上位3名をInternational Astronautical Congress(国際宇宙会議)へ引率し、各国宇宙機関のリーダーや宇宙飛行士達とディスカッションしてもらい、どちらにとっても新しい学びと気付きを得られる場を作る試みをしていました。

【内閣府】
日本における今後の宇宙政策を決めていくところです。私は国連での経験を活かし、国際担当として各国と今後の宇宙開発を日本がどのように協力していくかなど国家間プロジェクトに携わっていくと思います。

仕事にやりがいを感じるのはどんなときですか?

●自分が携わったプロジェクトで、誰かが笑顔になったときです。

●宇宙を目指す若手エンジニアや研究者のお手伝いが出来たとき、その彼らが目指すゴールへ到達し、一致団結して感激している時、自分も僅かでも一緒に出来て良かったなと思い、涙がこぼれました。

●宇宙は夢と希望を、すべての人へ届ける力を持っています。一歩一歩、世界中の友達と手を取り合い協力し、ゴールを目指す。それが達成できた時、やりがいを感じます。




ケニア衛星放出@運用管制室
ケニア衛星放出@運用管制室


メッセージ

宇宙を舞台にしたお仕事は無限大にあります。宇宙は未知の世界です。研究者やエンジニアのほかに、私のような国際調整をする人、宇宙を通じて教育をする人、音楽家や芸術家、法律を作っていく人、本当にたくさんの人の力が必要な場所です。
どのようなことでも良いです。人には負けない「大好き」なことを1つ見つけて、それを大切に育ててください。私は「世界中に友達を作りたい」という思いから、すべてが始まりました。友達作りなら、だれにも負けません!
いつか皆さんと一緒に宇宙で働ける日を楽しみにしています。

イラスト2

宇宙食で宇宙飛行士に笑顔と元気を

顔写真5

自己紹介・この仕事につくきっかけ

食品を扱う民間の会社からJAXAに出向をしています。元々私自身も食べることが好きで、美味しい食べ物をいろんな人と共有したい・届けたいと考えていました。日本は世界でも食べ物が美味しいと言われている国で、美味しい食品を作るために必要な高い食品加工技術を持つ食品メーカー等がたくさんあります。私の仕事は、日本中の様々な技術を持つ食品メーカー等と一緒に、私たちに身近な”食”で日本の宇宙開発を支える仕事です。

須永 彩(すながあや)さん

有人宇宙技術部門 宇宙飛行士運用技術ユニット 宇宙飛行士健康管理グループ

ふだんはどんな仕事をしているのですか?

日本人宇宙飛行士が、国際宇宙ステーションに長期滞在する際に持っていくための必要な宇宙食に関わる仕事をしています。JAXAには、普段から日本人が食べ慣れ親しんでいる食品を「宇宙日本食」として認証する制度があります。私は食品メーカーさん等と一緒に、どうしたら安心・安全で美味しい宇宙食を宇宙飛行士に提供できるか考えながら、仕事をしています。また、日本の種子島宇宙センターから打上げる宇宙ステーション補給機「こうのとり」では、新鮮な果物や野菜も載せることができるため、それらを実際に届けるための仕事にも携わっています。

仕事にやりがいを感じるのはどんなときですか?

宇宙飛行士に「おいしい!」と言ってもらえること。食品を作ってくれるメーカーさん達と宇宙に食品を届けるワクワクする気持ちを共有できること。そして世の中の人に美味しい宇宙食を知ってもらうことができること。





 

メッセージ

地球でも宇宙でも人が生きるためには、食べることは欠かせません。美味しいご飯を食べれば誰もが笑顔になります。宇宙食の仕事は、家族や友人と離れて頑張る宇宙飛行士に笑顔と元気を届けられる仕事です。まずは好き嫌いなくいろんなごはんに興味を持つこと。そして、そのごはんがどんな風に作られて、私たちの手元に届いているか考えてみること、それが大事だと思います。

一歩先の新しい自分に出会ってほしい

顔写真6

自己紹介・この仕事につくきっかけ

宇宙に関心を持つようになったのは小学4年生のときです。有人ロケットの打ち上げをテレビで見て、心の底から感動しました。大人になったら宇宙開発の仕事につくんだ!と、そのとき心にちかいました。しかし、わたしは理科や英語が大の苦手。学力が伸びなくて悩んでいた高校生のとき、宇宙や科学の楽しさを子どもたちに伝えるボランティアをはじめました。大学・大学院では、地球大気科学、教育学、科学コミュニケーションを学びました。卒業後、小学校の先生になり、かがやく可能性をもった子どもたちと毎日過ごすうち、子どものころの自分の夢を思い出しました。そしてチャレンジ! JAXA宇宙教育センターの仕事を経て、今は国立天文台アルマ望遠鏡プロジェクトで教育広報の仕事をしています。

宮田 景子(みやたけいこ)さん

国立天文台アルマプロジェクト 教育広報担当

ふだんはどんな仕事をしているのですか?

ふだんは日本で仕事をしていますが、アルマ望遠鏡は遠くはなれた南米チリで宇宙のダイナミックな動きを見つめています。富士山よりも高い、宇宙に近い場所(標高5000m)にあるため、現地の職員は酸素ボンベを背負っています。みなさんに直接見学してもらえない分、アルマ望遠鏡を少しでも身近に感じてもらえるようなイベントを企画したり、ウェブサイトで情報発信したり、おうちで学べるキットなどを開発したりしています。アルマ望遠鏡は、日本、アメリカ、ヨーロッパを中心とした22の国と地域が協力する国際プロジェクトです。世界中の子どもたちに向けたウェブサイト「アルマキッズ」では、遠くの銀河や星たちのようすを世界4か国語で同時配信しています。ぜひチェックしてみてくださいね!

イラスト3

仕事にやりがいを感じるのはどんなときですか?

アルマ望遠鏡は、わたしたちの目に見えない宇宙の姿を見ています。人類が見たことのない景色を、イベントなどを通じて、たくさんの人たちと分かち合えるときにやりがいを感じます。遠くの宇宙まで視野が広がることで、今を振り返るきっかけになったらうれしいです。


宇宙の謎に挑むアルマ望遠鏡
宇宙の謎に挑むアルマ望遠鏡

©ESO/C.Malin

メッセージ

もし興味をもっていることがあったら、何か行動してみてください。その一歩が、将来の自分につながります。そして一歩先の、成長した自分に出会ってください。興味のある分野で、だれにも負けないと思えるくらい経験をつんで、自分を育ててあげてくださいね。

イラスト3

自由な発想とスピード感で答えのないものに挑み続ける!

顔写真7

自己紹介・この仕事につくきっかけ

学生時代は、宇宙に限らず法律全般の研究をしていました。
大学院生の時に新しい分野を研究したいと思い、宇宙法を専攻しました。
研究していくなかで、出会った多くの宇宙分野で活躍している方々の熱量に魅了され、自分も宇宙で挑戦をしたく、大学院を修了してすぐにSpace BDで仕事を始めました。

齋藤 颯人(さいとう はやと)さん

Space BD株式会社 戦略企画部

ふだんはどんな仕事をしているのですか?

Space BDは宇宙に関する新しいビジネスをつくり上げる会社です。社内には様々なビジネスの立ち上げを経験した事業開発のプロや、宇宙にモノを運ぶ方法を知っているエンジニアがいます。社外の各分野の専門家の方々とも協力し、日々新しいアイデアを形にしていく仕事をしています。
私自身は現在、JAXAと一緒に「宇宙飛行士の訓練ノウハウ」の一部を学校や企業へ提供するビジネスを作っています。

仕事にやりがいを感じるのはどんなときですか?

前例のないビジネスを作っていくためには、たくさんの課題を乗り越えなければなりません。
ですがその分、志を持っている方々との仕事を通じた出会いや、お客さまの悩み事を解決し「ありがとう」という言葉をいただいたときのよろこびが、自分のやりがいとなっています。


メッセージ

宇宙といえばロケットや人工衛星などの開発をする技術者の方が活躍するイメージがあるかもしれません。
ですが、Space BDのように新しいビジネスの立ち上げを考える専門家も求められています。
宇宙という分野は、答えのない問いに自由な発想とスピード感を持って挑戦したいすべての方が活躍できるフィールドだと思っています。