ISEB学生派遣プログラム

【2012年度】第63回 IACナポリ大会

派遣期間 平成24年9月28日(金)~10月6日(土)
派遣先 イタリア共和国 ナポリ市(Mostra d'Oltramareモストラ・ドルトラマーレ)他

主なスケジュール

日付 内容
26日(日) ISEB学生プログラムオリエンテーション・アイスブレイキング
27日(月) 開会式・プレナリー・IAC2012プログラム(テクニカルセッション・プレナリーセッション・ハイライトレクチャー)・HoA Q&Aセッション・ウェルカムレセプション等への出席
28日(火) IAC2012プログラム(テクニカルセッション・プレナリーセッション・ハイライトレクチャー)等・ISEBイベント(Panel Session: Human Exploration)等への出席
29日(水) IAC2012プログラム(レイトブレーキングニュース・テクニカルセッション・プレナリーセッション・ハイライトレクチャー)および ISEBイベント(Panel Session: Space Applications)等へ出席
30日(木) IAC2012ログラム(レイトブレーキングニュース・テクニカルセッション・プレナリーセッション)、ISEBイベント(Panel Session: Bridging from student to YP)、IISL模擬裁判決勝への出席
1日(金) IAC2012プログラム(レイトブレーキングニュース・テクニカルセッション・プレナリーセッション・ハイライトレクチャー)およびISEBイベント(ISEB Sponsored Student Research Presentation)・JAXA派遣学生発表等へ出席

IAC(International Astronautical Conference)国際宇宙会議について

IACはInternational Astronautical Federation (IAF:国際宇宙航行連盟)、International Academy of Astronautics (IAA: 国際宇宙航行学会)及びInternational Institute of Space Law (IISL: 国際宇宙法学会)が主催している国際宇宙会議です。この国際宇宙会議では、各宇宙機関長の講演、本会議、レクチャー、各分野に亘る最先端の情報を仕入れる ことのできる会議、研究発表、イベントなどがあり、各国の宇宙機関長並びに幹部、学者、研究者、企業、若手研究者、学生などが参加する世界最大の宇宙会議 です。1949年に第1回国際宇宙会議を開催し、今年2012年は第63回目の会議となります。本ウェブサイトにおいては、本派遣プログラムに参加された学生の皆さんの感想を交え、これらの活動について報告をさせていただきます。

※ 本ウェブサイトにおける執筆者の所属大学・学年等についてはIAC2012ナポリ大会参加当時(平成24年10月現在)のものです。

IAC2012会場
IAC2012会場(Mostra D'Oltremare)
外観
IAC Pleanary会場の様子
IAC Pleanary会場の様子
JAXA派遣学生のプレゼンテーション
テクニカルプレゼンテーションで発表をする
JAXA派遣学生東京工業大学大学院新宅さん

ISEB学生派遣プログラム(第63回IACナポリ大会)(IAC2012)におけるJAXA学生派遣プログラムについて

JAXAは、活動の一環として、IAC2012においては、派遣学生に公式プログラムの参加機会を提供するとともに、ISEB参加機関であるESA、NASA、JAXA、CSA 、CNES、VSSEC、KARIの宇宙7機関間協力の下、学生への宇宙分野における知識・理解増進の機会提供、学生を交えた学術・研究交流の奨励、国境や専門領域の違いを越え た友好の輪を広げることを目指したISEB学生プログラムに参加しています。また、JAXAが本活動を実施するにあたり、より参加学生に資するプログラム作りを目指して、準備・企画段階から学生主導のもと、JAXA学生プレゼンテーションを派遣学生15名全員の参画・貢献により、有意義なプログラムに発展させていくことができました。

ISEB学生プログラムについて

ISEB学生プログラムとしては、IAC2013開催の前日である9月22日(日)を初日としてスタートし、Orientation Sessionが開催され、ISEB参加機関より派遣された69名(JAXA:21名・ESA:11名・NASA:9名・VSSEC:15名・KARI:10名・SANSA:3名)の学生が出席しました。

Meet & Greetの様子
Meet & Greetの様子
Ice Breaking Activityの様子
Ice Breaking Activityの様子
HoA student session
HoA/Students Session
(JAXAより樋口理事が参加)

ISEBオリエンテーション・セッション・Ice Breaking Activity

ISEB学生プログラムのオリエンテーション・セッションとして、IAC会場で各機関のスタッフの紹介やISEBプログラムの概要を説明しました。
Ice Breaking Activityでは学生をグループにランダムに分け、各宇宙機関教育長がそれぞれのグループで学生達とざっくばらんにピザを作る体験をしながら会話をする機会がありました。学生達は他国の学生や教育長と共に食事をし、知りあう機会がありました。

東京大学大学院 修士1年
小寺 彩香

  • 30日はISEB Student Programの一環であるPizza Making Partyに参加し、CSA・ESA・KARI・NASA・VSSCの学生と交流した。特に印象に残ったのがNASA派遣のパキスタン人の学生の話で、「パキスタンの宇宙技術向上への貢献を通じ、パキスタンの抱える貧困や災害、農業の問題を解決するためにアメリカで勉強している」と語っていた。自国の現状を真剣に考え自身の研究を社会に還元しようとする態度は、私を含めて日本の学生に欠けている部分ではないだろうか、と自分自身を振り返る機会となった。また、8月に竹島問題が過熱していた中で、KARI派遣の韓国人学生達が「日本のことが大好き」と語ってくれ、仲良くしてくれたのが非常に嬉しかった。

京都大学大学院 修士2年
長崎 陽

  • ナポリに到着してからは本当に密度の濃い毎日だった。まず会期初日は海外の宇宙機関派遣生との交流を深める場(Ice Break)として皆でピザ作りを行った。テーブルにつくと話はすぐにお互いの研究の話となった。今回JAXA から派遣された学生に博士課程の学生はいなかったが、NASA やESA の派遣学生はほとんどが博士課程の学生だった。自分にとっては研究の先輩であり、彼らの話は自分にとって興味深いものばかりで今後の参考になる話を多く聞くことができた。しかし、多様な訛りを含む彼らの英語を全て理解することはやはり難しく、また私の英語も伝わらないことがあり歯痒さを感じてしまうこともあった。初日から自分の未熟さを痛感する結果となったが、今後の英語学習のモチベーションを得る機会ともなった。研究者にとって英語は最低限必要な能力であることを痛感し、お互いの研究について対等に議論できるような英語力を早急につけようと強く感じた。

Q&A Session with HoA/Senior Representative and Students

本セッションでは、昨年に引き続き、ISEB派遣学生からの質問にISEB参加機関の機関長や代表者が回答を行うという貴重な直接的対話機会として実施されました。

各国学生からの質問に回答する宇宙6機関の代表者
各国学生からの質問に回答する宇宙6機関の代表者
ISEB派遣学生の代表の一人として質問を行う慶應義塾大学大学院田中さん
ISEB派遣学生の代表の一人として質問を行う
慶應義塾大学大学院 田中さん

東京工業大学大学院 修士2年
武井 悠人

  • Plenary Sessionでは小型衛星の需要と市場の拡大が数値と共に示され,国際宇宙ステーションISSにおける科学実験の成果や今後の予定が発表されるなど,宇宙空間・宇宙技術の実利用の拡大と多様化という方向性を知ることが出来ました.その中でも民間宇宙輸送分野を初めとした民間企業による宇宙技術商業化の勢いは凄まじく,NASAボールデン長官がHOA Student Q&A SessionにおいてSpaceX社によるDragon輸送船の成功とISSへの民間有人輸送の早期実現とを強調するなど,宇宙開発における官から民への流れを間近で感じました.展示ゾーンにおいても,各宇宙機関のブースにおいて現在取り組んでいる最先端のプロジェクトや宇宙科学・技術の紹介が行われていただけでなく,企業のブースでは保有する宇宙技術の積極的かつ効果的な宣伝が行われており,今後の宇宙開発の主体として民間が大きな割合を占めていることが強調されていたように思いました.

横浜国立大学大学院 修士1年
植柗 英二郎

  • 魅力的なプログラムが目白押しのPlenary イベントにも参加しました。最も心に残っているのは何と言っても各国宇宙機関の長が一堂に会するHeads of Agencies です。有名人という言葉が霞むくらいの大物の顔ぶれに感動したのもありますが、一番の収穫は、そのような方々が宇宙開発について議論する姿を拝見することで伸ばしても手が届かないと思っていた宇宙というフィールドに一歩近づくことが出来たことです。その距離は依然として大きいものですが、私の人生にとっては間違いなく大きな一歩となりました。

International Student Zone: ISZ(国際学生ゾーン)

ISEB学生プログラムの一環としてIAC2012 展示会場の中に学生のための研究活動成果発表および人材交流の場としてのInternational Student Zone ; ISZ(国際学生ゾーン)が設置され、会期中、主としてランチタイムにISEB参加7機関の中から派遣された宇宙飛行士等の専門家による学生対象のパネルセッション、各機関から派遣された学生によるプレゼンテーション等が実施されました。学生ゾーンでは、 各機関のブースを設け、JAXAブースでは、学生によるミウラ折りを含む折り紙講座を開き、人気を博しました。また、各学生が自分の研究やその他の活動など世界に発信したい内容のポスターを展示し、世界中の研究者や学生達との交流の場にもなりました。

ISZの様子1
国際学生ゾーン(ISZ)
パネルセッションのパネリスト
向井千秋宇宙飛行士
ISZの様子2
国際学生ゾーン(ISZ)
ISZの様子3
JAXAブースで自分のポスターを
貼っている学生の様子
ISZの様子4
ISZに訪れた学生にCanSatについて説明する
東京工業大学大学院の武井さん
ISZの様子5
他国の派遣学生に説明する
慶應義塾大学の星野さん
ISZの様子6
地元の子供に折り紙を教える
田中さん、新宅さん、長崎さん

大阪府立大学大学院 修士1年
伊藤 琢博

  • 宇宙飛行士の向井千秋氏の講演が大変参考となった。向井氏の「有人宇宙探査によって、私たち人間自身の理解を深めることができる」という意見は印象的であった。また、有人宇宙探査のために開発された技術が人間の生活に転用されているという話題も興味深かった。有人宇宙探査の実現方法という点では、複数のテクニカルセッションから最新の研究成果を知ることができた。具体的には、現在アメリカで開発されている宇宙服に関する研究、月・小惑星・火星への有人探査ミッションの実現可能性に関する研究などの発表を聴講し、日本ではあまりなじみのない話題に触れた。今回得られた情報は限定的ではあるが、上述のテーマについて今後も考えていくうえで有益なものであった。

東京工業大学大学院 修士2年
荒川 清一郎

  • 今回のIACは私にとって宇宙分野としては初めての国際学会であり、かつ分野で一番大きな学会であることから、興味をもった専門的な宇宙工学の内容から宇宙を取り巻く様々な分野について最前線の講演内容を聞いてみたいと考えていました。今回出席したPlenary EventやTechnical Sessions等の講演ですが、全体を通して感じた事としては、海外の方の講演内容において日本の衛星の業績について語られていることが度々見受けられたことでした。この海外からの声については普段日本にいるだけでは知りえないため、自分達の業績がどのように海外に評価されているのかということを実感出来る良い機会となりました。
    また、出席予定だった講演以外にもJAXA派遣学生の発表内容をできるだけ聞きに行きました。今回私個人の発表はありませんでしたが、英語で質疑応答までこなしている同期の姿を見て非常に良い刺激を受けることが出来ました。

京都大学大学院 修士2年
長崎 陽

  • これまで世界の宇宙開発を牽引してきた方々の話を間近で聞き、実際に会話を交わす機会にも恵まれた。小さい頃から宇宙に憧れ、現在も宇宙に関する研究を行う自分にとって彼らはまさに「スター」であり、会期中はまるで夢のような毎日であった。宇宙飛行士の方々や長官の話は本当に刺激的で、彼らの視野の広さと熱意には深く感銘を受けた。また、その目はさらに未来の宇宙開発を見据えていた。このようにIAC にはこれまでの宇宙開発の「歴史」を作ってきた人々がいる。このような出会いは私の価値観を大きく変えるものとなった。彼らを目標とし将来自分もこの人たちと肩を並べ対等に議論できるようになろうと強く感じた。

東京工業大学大学院 修士2年
新宅 健吾

  • IAC派遣プログラムの一番の収穫は普段関わりのない分野の人たちと交流をもてたことである。これは他国の学生だけでなく、JAXA派遣のメンバーも様々なバックグラウンドを持った学生が集まったこともあり、自身の知見が広がった。そのような人々と宇宙を話題に盛り上がれたことはかけがえのない経験であった。特に韓国KARIの派遣学生とは様々な交流をした。昨今の日韓事情もあり、最初は恐る恐る話しかけていたのだが、最終的にはかなりくだけた仲となった。学生の一人は今年度中に来日するということだったので、最高のもてなしをしたい。

東京大学 修士2年
大谷 翔

  • 本年度私は縁に恵まれ、学生リーダーとして二度目のIAC派遣に参加させていただく運びとなった。本当にメンバーに恵まれたと思う。初回顔合わせからたったの一か月の短期間でキューブサットやカンサットなどの具体的な学生宇宙活動に加え、パフォーマンスを含む文化的な側面も盛り込んだ発表を私達は作り上げた。正直、当初はかなり不安であったがメンバーのパワーとやる気に押されながらの作業はとても楽しく充実した時間となった。ナポリに到着してからも発表前夜まで練り込んだ発表は無事成功に終わった。来場者の方々に非常に楽しんでいただけたと自負している。その前後にブースに訪れ、熱心に質問をぶつけてくる海外学生や研究者との会話は大変刺激的だった。彼らには実際に書道を体験してもらったり、ミウラ折りを披露しながら折りたたみ技術を説明したりした。日本文化を紹介する私達メンバーはみんなどこか誇らしげだった。

ISEB学生のコラボプレゼンテーション

今年はISEBの活動で新しく、異国の学生同士を会議が行われる1か月前にグループに分けて「宇宙教育をどのように促進させる」べきかをそれぞれ相談し合ってプレゼンをして頂きました。学生はISEB機関のHoEにプレゼンを行いました。

早稲田大学大学院 修士1年
馬場 満久

  • 派遣学生でグループを作り宇宙教育に関するプレゼンを行うCollaboration Presentationにも参加しました.宇宙教育に関することがテーマでしたが,参加者が宇宙を使った教育手法や,子どもたちに対して「夢をみせる」方法について柔軟な考えを聞いたり,また自分が考えたりする機会になりました.ここに参加することを決めた後,会議日程前の事前準備のメールのやり取りにおいても,ネイティブスピーカーの会話速度についていくのが難しい場面が多かったため中々議論についていけず悔しい思いを度々しました.今回一番の力不足を思い知るイベントではありましたが,このレベルまで自分を高めてやろうという決意にもなりました.

慶應義塾大学大学院 修士2年
田中 康平

  • JAXA派遣を通してISEBの方々と深くディスカッションをすることができた.これはとても大きな収穫である.NASA,ESA,CSA等々の学生たちが,学生ながらもそれぞれの組織を代表として意見を述べ,協調していくための方策を議論した.本年度のテーマは「アウトリーチ活動」についてであった.私たちのチームでは,従来のような形式張った普及活動(例えば体験学習や講演会など)はせず,より多くの人に宇宙について考えてもらえることを主眼に,議論を行った.その結果,Space Weekを作ろう,というアイディアが出た.これは,その週には,宇宙に纏わるあらゆる技術を停止しよう,というものであった.つまり,天気予報は使えない,GPSは使えない,BSやCSは見られない,という週を作ろう,というものである.このような取組を実施することで,日常における宇宙利用技術の恩恵を認識するとともに,宇宙をどのように利用するのか,全員で考える機会を設けることを考えた.さらに,知るだけで終わるのではなく,何か行動を起こすことまで考えさせよう,ということで,現役の宇宙飛行士を始めとする宇宙関係者と,宇宙に関係ない市民が,インターネットにおいて相互交流できる仕組みまで含めて提案した.

東京工業大学大学院 修士2年
本田 瑛彦

  • 他国の派遣学生と共に発表を行うCollaborative Presentationはもっとも真摯な交流ができた機会だった.グループメンバーと開催前はメールやSkypeで,イタリアではうまく時間を調整し膝を突き合わせることで意見の交換を行っていった.最初は,時差の事を忘れていたり,なかなかメンバーが集まらなかったりと苦労もしたが,発表のテーマであるアウトリーチ活動に関して真剣な意見交換をすることができた.ここで自分は知らなかったが世界的に注目を集めているもの,論理の出発点や考え方の違い,使われる英語表現など様々な経験を積むことができた.特に今回の英語を母語とする人たちとのディスカッション経験は得難いものだった.彼らはもちろん宇宙開発をしていく仲間ではあるが,自分の意見を主張できなくてはその中で生きていくのは難しいだろう.その難しさを今回実感できたのは良かったと思う.今回は議論の中に必死に意見を挟み込むような感じで精いっぱいだったが,次のこうした場面では積極的に議論を組み立てていく立場になれるように研鑽を積んでいこうと考えさせられた.

JAXA派遣学生のプレゼンテーション

5日(金)にJAXA派遣学生が一丸となって1時間のプレゼンテーションをISZで行いました。学生は研究内容と併せて日本の伝統文化と現代文化を発表してISZを大いに盛り上げました。プレゼンが終わってからもそれぞれの学生の研究内容を聞く人、浴衣や空手着を着ている学生と写真を撮る人、習字で名前を書いてほしい人でISZは大盛り上がりでした。

慶應義塾大学 学士4年
星野 華子

  • JAXA派遣学生による日本文化紹介で感じたことを書きます。文化紹介ということでは、私は主にJAXAブースに集まる外国人に宇宙折り紙を教えることと、墨と筆で外国人の名前を漢字で書いてプレゼントすることに携わりました。折り紙に関しては、ほぼ毎日スペースシャトルの作り方を教えていたのを覚えています。折り紙など滅多に触れることのない外国人にこの複雑なスペースシャトルの作り方を丁寧に教えるのは簡単なことではないのでしょう......という私の懸念をよそに「難しいものにチャレンジしたい」とにこにこ顔で話しかけてくる外国人ばかりだったのが面白かったです。完成したものを見て感激している彼らを見て、手伝えて良かったと思いました。また、外国人に頼まれて当て字を考えて名前を漢字で書くことですが、これが予想外の大盛り上がりでした。学会最終日のJAXA派遣学生によるプレゼンの中で書道を披露する時間を作り、墨と筆で「宇宙」と書くなどして日本の書道の文化を紹介し、プレゼン後に書道体験の場を設けたときのことでした。聞き慣れない外国人の名前を聞いてすぐに当て字を考えて書く作業が絶え間なく続いて大変でしたが、異国の芸術的な文化を間近に見て自分の物にできる喜びか、皆嬉しそうに持って帰っていくのを見て私もとても嬉しかったです。お礼にカナダからの学生があまり見たことのない文字で私の名前を書いて下さったり、とあるイタリア人が墨と筆で "Grazie" と書いて下さったこともありました。

東京工業大学大学院 修士2年
荒川 清一郎

  • 学会最終日に行われたJAXA派遣学生プレゼンテーションにおける発表もまた貴重な国際交流の場でした。ここでは学術的なことに限らず書道や武道など文化的な事も取り上げ発表を行った結果、非常に多くの方に関心を持っていただき、書道や折り紙のデモンストレーションに人だかりができていたことは忘れられません。また、浴衣や着物、柔道着や空手着といった日本の伝統的な衣装に関しても驚くほど多くの方に興味を持っていただき、一緒に写真を撮って欲しいと言われた事も印象的でした。今年の派遣学生の顔合わせは例年より遅く、発表資料作成に際し連携等色々不備があったものの結果的には様々な方に興味を持っていただけたようなので成功の内に終われたのではないかと感じています。

大阪府立大学大学院 修士2年
山元 翔太

  • 本派遣プログラムとは独立に、口頭による研究発表も行いました。母国語ではない英語での発表ということで,極力,自分の英語が伝わらなくても理解されるような,誰が見ても伝わりやすい発表スライドを作ることを心がけました.その結果,与えられた質疑応答の時間が終了した後も,韓国の学生から,質問したいことがあると話しかけられました.そして,その場で自分の研究内容について議論を交わし,納得してもらうことができました.研究発表においては.自らの研究を聴衆に伝え,理解してもらうことが目的であるため,この経験は非常に大きな成果であり,自信にもなりました.
    個人的には,現在取り組んでいる超小型衛星OPUSATについて発信したいと思っていたため,それが実現できたことは収穫でした.しかし,今思うと,OPUSAT並びにそのマスコットキャラクター"おぷー"をきっかけとして,世界中の人々と交流する機会が非常に多くありました.そのため,むしろ自分がこの小さな人工衛星に活かされたような気がしています.スポーツや音楽が世界の人々を繋ぐように,IACではCubeSatが私と世界を繋ぐ架け橋となってくれました.

国際宇宙法学会(IISL)への協力

本派遣プログラムでは、2001年よりIISL主催の「マンフレッド・ラクス宇宙法模擬裁」に協力し、アジア・太平洋地域予選通過チームの学生2名をIAC会期中に実施されるワールド・ファイナル・コンペに派遣しています。本年のアジア・太平洋地域代表シンガポール国立大学チームは、優勝を逃したものの、Best Oral Presentation Awardを受賞しました。

インド国立法科大学チームの学生
インド国立法科大学チームの学生
模擬裁判の様子
模擬裁判の様子
裁判員
裁判員

おわりに・・・

今年度の本派遣プログラムでは、学部生から博士課程の学生まで、多種多様な専攻分野から、幅広い層の学生が参加されました。派遣学生の今後の活躍に大いに期待しています。

東北大学 学士4年
林 高大

  • 今回のプログラムを通して最大の収穫は国際社会でいま自分自身に足りないもの、そして、通用することを知ることができたことではないかと思う。各国から医学生も数名きており、また、フライトサージャンの方とも話し、世界ではどのような宇宙医学を学ぶプログラムがあり、そのためにはどのような方に連絡をすればよいか、自分が頭でいろいろと考えていた疑問がいろんな方に聞くことで答えを知るきっかけをつかむことができた。IACは私にとって夢と現実をつなぐような場所であった。いまはフライトサージャン、宇宙飛行士になりたいという具体的な目標に対する大きな一歩を踏み出すことができ、その夢に対する道も少しずつ明らかになってきたと思う。JAXAとは言わず、世界中で私を必要としていただけるような存在になることで今回のJAXAのプログラムに対する恩返しができるのかと思う。

東京工業大学大学院 修士2年
新宅 健吾

  • 既に私は就職活動を終え来年度から宇宙開発とは距離を置き通信系の研究所で働くこととなっている。これは昨今の宇宙利用の意義や将来像を考えると通信分野での期待が大きいと感じたため、この分野を選択した。IACを終えた後でもこの思いは変わらず持ち続けているが、今プログラムにより改めて宇宙開発にかかわることの楽しさを再確認した。加えて、宇宙開発の技術的な裾野の広さを感じた。就職後働き始めた後になっても、宇宙開発におけるあこがれは忘れずに積極的にかかわっていくチャンスをうかがっていきたい。また、宇宙分野にこだわらずとも自分の専門性にこだわらず広い視野や知識を蓄えることの重要性を感じた。今後は目の前の仕事だけにとらわれるのではなく、貪欲に知識・技術を自分のものとするべく努力していきたい。
    IACに参加して感じたのは、各国、各企業が宇宙において多種多様な利用価値や知的探究心を見出し、活動を行っているということである。普段私自身が携わっている工学系分野のみならず理学、医学、はたまた宇宙法など、様々な側面からのアプローチがある。こういった宇宙開発の価値をきっちりと世間一般に伝えることは宇宙教育の観点から、及びともすれば税金の無駄遣いであると揶揄されてしまうこの分野を盛り立てるうえも重要であると感じた。

大阪府立大学大学院 修士1年
伊藤 琢博

  • 日本の宇宙開発を牽引してこられた向井千秋氏、的川泰宣氏から頂いたお言葉に言及したい。両氏のお話から、現在自分の置かれている環境が極めて恵まれていることを認識することができた。まず、チャレンジするリスクに関して向井氏が講演で述べられた、「あなた達には健康な体があり、夢を持つことができる。世の中には不幸な理由で夢を追い求められない人がたくさんいるのだから、ぜひ夢をもとう」というお言葉は、医者として、宇宙飛行士として、常に命の大切さを意識されてきた向井氏ならではのもので、とても印象的であった。健康な体を私に与えてくれた両親に深く感謝し、大学院での研究を中心に学問に励むことのできる環境に幸せを感じながら、これからも精進していきたい。また的川氏が食事会でおっしゃった「日本人の相手を思いやる心は世界随一である」というお言葉も、私の心に深く刻まれた。これはIACで出会った海外の方々との会話で感じていたことでもあるが、彼らの多くが日本人の心に敬意を抱いてくれていることに驚くと同時に、日本人に生まれたことを誇りに感じた。私が思うに、宇宙開発とはロケットや人工衛星のイメージに代表される無機的なものではなく、もっと人間くさいものである。私自身、現在超小型衛星開発に取り組んでいることもあり、宇宙開発は技術力だけでなく、チームワーク等の人間関係も同様に大切であることを日々痛感している。ゆえに、日本人の思いやりの精神が高く評価されている事が嬉しかった。この精神を海外に広く伝えていくことができれば、より豊かな宇宙開発、延いてはより豊かな人類の未来が築けると信じている。私もその一助に貢献したい。

静岡大学大学院 修士2年
泉 雄大

  • 今回の国際宇宙会議(International Astronautical Congress; IAC)への参加は、所属する研究室の先輩方からJAXA学生派遣に関して教えていただいたことがきっかけであった。海外の国際学会に参加し、研究発表をする経験は2度目となるが、まだ慣れたとは言い難いところが多々あり、緊張の連続であった。IACは、世界最大の宇宙関連会議と呼ばれていることから、前々から興味を持っていたが、確かに世界中の宇宙に関わっている方々、著名人や私達学生も含めて参加するお祭りのような学会であった。主要各国の宇宙関連企業ブースでは、現在の宇宙開発を支えるエンジニア達の熱意を感じることができた。また、JAXA派遣学生として参加したおかげで、各国宇宙機関の幹部の方々や、宇宙飛行士の方々に話を聴く機会に恵まれ、貴重な経験を積むこともできた。特に、2004年にスペースシップワンに搭乗したメルヴィン宇宙飛行士と一緒に日本文化紹介で書道を実演できたことは望外の喜びであった。
    10月1日から5日間にかけてイタリアのナポリで開催されたIACへの参加に先立ち、JAXA派遣メンバーでミーティングが行われた。そのミーティングで、JAXA派遣学生としてIACで発表する各々の研究や日本紹介の内容を話し合い、初めて顔を合わせた派遣メンバーの仲間達と親睦を深めた。ひと月の準備期間、一度の全体ミーティングという余裕のないスケジュールではあったが、無事にIACでの発表を終えることができた。これは、各々の強みを発揮してくれたJAXA学生派遣のメンバー達、発表資料のチェックや相談に乗っていただいた教育センターの皆様、現地でお世話になった方々のおかげであり、改めて御礼を言いたい。

慶應義塾大学 学士4年
星野 華子

  • 総じて、IACの5日間では他の学生の優秀さとモチベーションに圧倒されっぱなしで自分の未熟さが垣間見えることが多かったです。しかし、このように劣等感を持つことは決して悪いことではないと思います。自分が何もできないと思っているときほど自分を向上させるには何をすればよいのかを冷静に考えることができるし、謙虚な気持ちで物事を吸収できます。寧ろ劣等感を持つことは自分を磨く絶好のチャンスなのです。IACで感じた悔しさを踏み台にして今後の研究にエネルギーをぶつけていきたいです。ここで唯一取れたまともなコミュニケーションといえば物理学徒との愉快な物理トークで、星間物質や宇宙背景放射の話などをする中で自分はやはり宇宙物理が好きだと気付きました。そして物理学徒のみならず、残念ながら学問的な深い話ができなかった工学系や医学系を専門とする人を含め、IACは参加者全員が宇宙好きという空気の渦巻く強いパワースポットでした。私はまだ学部生で研究の経験がほとんどなかったために今回は特に学術的な発表はしませんでしたが、近い将来またIACに戻って自分の研究成果を発表するのがここで設定した目標です。

慶應義塾大学大学院 修士2年
田中 康平

  • 今回は自身にとって初の国際学会であり,初めて英語で研究のプレゼンを行った場ではある.勝手がわからないことも多く,不安なことが多かったが,多くの仲間たちと話すことでリラックスでき,平常心で発表を迎えることができた.発表自体は今後の課題も多く,悔やまれる結果になったが,今後改善していこう,とモチベーションを高めることができた.そう,何よりも,同じような意識や目標を持ったこれからもずっと何かしらで関わりあうであろう日本の仲間たちと知り合いになることができ,時にはディスカッションをしたり,くだらないことで盛り上がったりすることができ,とても楽しい思い出にあふれたJAXA派遣となった.
ISEB学生派遣プログラム開催実績

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