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宇宙ステーション(SS)教育的科学実験について

宇宙ステーション(SS)教育的科学実験

国際宇宙ステーション(ISS)・日本実験モジュール“きぼう”を教育コンテンツとして、生徒さんたち一人一人各学校から参加した全員の努力を合わせた科学的アプローチを自ら体験、理解することが本実験の教育目的です。その過程の中で、有人宇宙開発、宇宙放射線、地球環境、植物の育種、変異体の農林業に果たした価値、植物と微生物の共生、遺伝、生態系保護、命あるものの育て方等について学びが進むよう、教材、カリキュラムを用意しました。
今回は、ISSきぼうモジュール船内保管室にて9ヶ月近く保存された植物種子中の遺伝子変化をみんなの力で科学します。

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▲(左)軌道上を飛行する国際宇宙ステーション。赤い丸で囲んだ部分が“きぼう”モジュール(出典:NASA)、(右)日本実験モジュール“きぼう”の構成コンポーネント(赤い丸で囲んだ部分が船内保管室を示す)

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▲(左)2008年3月19日、(右)2008年3月21日。「宇宙と生命」を学ぶ教育ミッションで国際宇宙ステーションへ運ばれたサンプル(植物種子等)と記念撮影する土井隆雄宇宙飛行士(出典:NASA/JAXA)

生物学研究では、特定の因子に着目しその変化によって生じる効果を明らかにする場合、選択された因子以外の条件については本実験と同様な実験(対照実験)を行い、比較するための基準作りを行います。これが対照群(もしくはコントロール)です。
生物学分野では、 “対照なくして実験なし”の言葉があるように、どれほど適切、正確な対照実験が行われたか否かによりその科学的価値のレベルが定まります。
本実験では、地上に保存しておいた種子試料がこれに相当します。(地上対照群: (ネガティブ)コントロール)

実験群を舞台劇、お芝居の主役に例えるなら、(ネガティブ)コントロールは脇役、舞台背景です。脇を固める人たちがいてこそ、効果的な舞台背景があってこそ主役が光ります、その特徴が浮き彫りになります。
さらに、作用因子が最大限影響を及ぼした例を具体的に明らかにする目的で、別途人為的に特定因子を限度まで作用させた試料を調製する場合もあります。これはポジティブ・コントロールと呼ばれます。
こちらは満点をとった時の基準作りです。これがあれば、実験群試料から得られたデータ値が百点満点中、何点に相当するのか、容易につかめるのです。

宇宙飛行群:実験群(宇宙放射線の低線量長期被曝)
(2008年3月11日(日本時間)土井隆雄宇宙飛行士と共にISSへ打上げ、2008年12月1日(日本時間)地上へ回収)

地上対照群:ネガティブ・コントロール(放射線被曝がほとんどない)

地上照射群*:ポジティブ・コントロール(宇宙放射線の一種を高線量短時間被曝)
(* 理化学研究所サイクロトロンを使い、重粒子線を放射線育種実験レベルにて照射)

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▲理化学研究所RIビームファクトリー(RIBF)の全容: 理研RIBFは世界で最もバラエティーに富んだ放射性同位元素(ラジオアイソトープ:RI)をビームとして発生することができます。(提供:理化学研究所)

今回の実験ではアサガオ、ミヤコグサ共に数千粒に及ぶそれぞれ3つのグループの種子を試料として、特別の技術、経験、施設の必要なく日本全国の学校、生徒、児童、園児さんたちが共同して育てた観察データを持ち寄り集め、大きな一つの実験にまとめ上げることにより、大人たち専門家による研究と同質、サイエンスとして意味のある実験へ自ずと成立させること、それに参加体験できることを目的とするものです。

なお、今回、地上にて宇宙放射線の一種を高線量短時間で種子に照射した装置については、「理化学研究所サイクロトロン」教材を、また基盤情報として「宇宙放射線」、「植物の育種、及び放射線育種」教材もご参照願います。