授業連携

人工衛星を利用して地域の環境を調べる

群馬県・群馬県立前橋高等学校

  • 高等学校
  • 高1
  • 高2
  • 探究

概要

<全授業を通した指導目標>

本講座では、「だいち」の観測データを入手し、パソコンでデータ処理を行って、地域の環境の変化について自ら調査し、考察することを目的とする。
また、これらの人工衛星の利用や打ち上げまでの道のりについての講義や実習も行い、環境問題や先端科学に触れることにより、幅広い探究心を培い、問題意識をもって自ら学ぶ意欲を育成する。
また、生徒自身が実験・実習等の活動の成果をまとめ、発表することにより、プレゼンテーション能力の育成を図るとともに、参加生徒が実験・実習をとおして培った自ら学ぶ意欲や思考力、表現力を他の生徒にも波及させ、学校全体の活性化に寄与することをねらいとする。

<対象>

高校1、2年生 20名

<期間>

平成20年8月1日~平成20年12月23日

<区分>

SPP(サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト)

構成表

実施日
時間
形式
人数
授業内容
1
300分
見学
11名
筑波宇宙センター 施設見学(90分)
『宇宙と地球と私たち』(180分)
※「だいち」による観測の方法や結果、データの加工例等
講師・指導:油井 由香利
(JAXA宇宙利用推進本部 地球観測研究センター 主任開発員)
『宇宙からのリモートセンシング ~「だいち」の画像を使ってみよう~』(30分)
講師:大木 真人
(JAXA宇宙利用推進本部地球観測研究センター 主事補)
支援:岸 詔子・宮原 有香・藤沢 宏美
2
300分
講義・実習
11名
『宇宙からのリモートセンシング ~「だいち」画像解析実習~』(300分)
※「だいち」の観測データの加工方法等
講師・指導:大木 真人
(JAXA宇宙利用推進本部地球観測研究センター 主事補)
支援:岸 詔子・宮原 有香・藤沢 宏美
3
150分
発表会
11名
「成果発表・講評」
講評:大木 真人
(JAXA宇宙利用推進本部地球観測研究センター 主事補)
支援:岸 詔子

第1回目/全3回『授業記録シート』

 環境問題は現在の人類にとって最も大きな課題の一つであり、人工衛星の実際の測定データを過去のデータと比較することで、地球環境の変化やその問題点を知ることができる。そこで、本講座では、導入として筑波宇宙センターの施設見学を行った後、宇宙の成り立ち、恒星や太陽系の惑星の特徴、生命を育むかけがえのない地球について説明を受け、地球環境を守ることの大切さを学ぶ。また、その中で陸域観測衛星「だいち」の実際の観測データを解析した具体的な画像を見せていただき、人工衛星による地球観測がとても有用であることを理解させる。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(90分)
筑波宇宙センター内の施設見学
(一般見学コース)
△つくば宇宙センター内の施設見学
SPPでデータを利用する地球観測衛星「だいち」の模型や、宇宙ステーション「きぼう」のモジュール、宇宙飛行士の訓練施設などを見学し、宇宙開発に興味をもたせる。
展開
(180分)
講義「宇宙と地球と私たち」
講師:油井由香利先生
1.宇宙の観測
2.宇宙の誕生
3.大きい星・小さい星
4.地球の誕生
5.金星
6.火星
7.地球
8.環境問題

講義「宇宙からのリモートセンシング」
講師:大木真人先生
1.人工衛星からの観測の特徴
2.データの解析
△宇宙の成り立ちについて、学ぶ。

△地球の成り立ちと他の惑星との違いを理解する。

△今の地球環境が微妙なバランスの上に成り立っていることを理解し、環境を守ることの大切さを学ぶ。

△実際の観測例から、様々な環境を知るとともに、人工衛星からの観測が環境の変化を知る重要な手段であることを理解する。


△「だいち」の観測方法とデータについて学ぶ。
環境問題の重大さを理解させるとともに、その観測手段として人工衛星がとても有用であることを、具体例を通して理解させ、興味をもたせる。
まとめ
(30分)
一日の研修内容をレポートにまとめる。
△観測方法や観測例について、知識を整理した。

授業の感想・メモ

  • 人工衛星の実物大の模型や宇宙飛行士の訓練施設を興味深く見学することができた。また、油井先生の講義で、広い宇宙の中で、地球ではたまたま様々な条件が重なり合って生命を育み今に至っているということを具体的に説明していただき、あらためて地球環境を守ることの大切さを学ぶことができた。さらに、カリフォルニアの山火事、アマゾンの熱帯雨林の減少、モンゴルの砂漠化、海洋のプランクトンの分布など、実際の観測データを解析した画像を見せていただき、生徒は環境変化にとても興味をもつとともに、人工衛星による地球観測がとても有用であることを理解できた。

第2回目/全3回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
地球観測衛星「だいち」の観測データを利用したデータ処理の講義と演習を行う。その中で、測定バンドとその特性を学んで衛星画像の色合成を行い、バンドの割り当て方によってトゥルーカラーやフォルスカラーなど得たい情報が強調できることを理解させる。そして、群馬県付近の観測データを用いて、季節や年による観測データの違いから、自分達の興味に沿って調べたいテーマと場所を選び、地域の植生や土地利用などの環境の変化について調べる、という課題に取り組ませる。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(20分)
講義「宇宙からのリモートセンシング」
講師:大木真人先生
 前回のまとめ
 実習の内容
△前回の研修内容の復習

△実習内容の確認
展開
(240分)
講義と実習「宇宙からのリモートセンシング」
講師:大木真人先生
1.「だいち」の概要
2.「だいち」観測データの画像化
3.バンド色合成・色調補正
4.季節変化・経年変化
5.応用
△観測センサーPRISMとAVNIR-2の概要を学ぶ。

△Photoshopを操作する。

△衛星データの構造について学ぶ。

△データの切り出しとバンド合成。

△測定日時の異なるデータを画像化し、比較する。

△画像の重ね合わせなどの応用的な処理方法を学ぶ。

◎パソコンの操作を補助する。
デジタル画像について説明し、衛星データのファイル構造を理解させる。
画像処理ソフトPhotoshopの操作方法を理解させる。
測定波長(バンド)と反射特性を理解させる。
日時の異なる測定データから変化を読み取らせる。
まとめ
(40分)
内容のまとめ。
実習課題として、各自のテーマに沿って衛星データを可視化し、考察を始める。
質疑応答
△前橋市付近の画像の可視化
各自の実習テーマを進めさせる。

授業の感想・メモ

  • 実習で、生徒一人に一台ずつパソコンを準備していただいたので、その場でデータ処理等の操作を行うことができ、実習内容をよく理解することができた。昨年よりも実習時間を長く取ることができたことも良かった。また、前橋市付近の衛星データを数年分準備していただいたので、データ間で季節変化や経年変化などを容易に比較することができ、身近な環境の変化について、生徒が研究テーマを設定しやすかった。

第3回目/全3回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
 生徒達が、衛星データから得た画像を利用して地域の環境の変化などを調べた実習内容について、発表会を行う。また、お互いの発表内容を聞くことにより、地域の環境についてのいろいろな見方を理解させる。その際、データの利用方法や考察の仕方、まとめ方などについて講師の方に講評していただき、各々の調べ学習について評価を行う。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(5分)
発表について
◎発表の司会。進め方を話す。
お互いの発表をよく聞く。
データについて、きちんと説明する。
展開
(55分)
グループ発表
△1班.衛星画像の利用
△2班.陸域観測衛星「だいち」
△3班.衛星写真を使ってみて
他のグループの発表を聞き、メモをとる。
疑問点は積極的に質問する。
まとめ
(60分)
講師からの講評
・データの示し方、発表の仕方
・学んだことの再確認
・人工衛星の画像と地図の重ね合わせ方
・質疑応答
△学習内容の理解を深める。

△講評に基づいて発表の仕方を振り返る。

△発表をわかりやすく説明するための工夫について学ぶ。
データの場所や観測日時、処理方法を明示する。
実習や考察の内容を伝える工夫をする。

授業の感想・メモ

  • 生徒は3班に分かれて研究した内容について10~15分で発表した。各班とも前橋市の周辺の土地利用や植生について、季節変化や経年変化を調査した。前橋市内の水田の面積の割合を算出した研究や、水田のうち冬に二毛作を行っている面積を比較した研究など、興味深い発表があった。講師の方から、画像データを加工して数値化したり画像の検証にフィールドワークを行ったりしたのは良かった一方、データの観測日時や場所を明示するべきであることや画像を切り出してサイズを小さくして加工するなど工夫するべき点もあることなど指摘を受けた。また、衛星画像の場所をわかりやすく示すために、Photoshop上で画像と地図を重ね合わせる方法を教えていただいた。生徒は、SPPでの学習内容を深めたとともに、発表の仕方についても学ぶことができた。

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