ISEB学生派遣プログラム
【2011年度】第62回 IACケープタウン大会
派遣期間 | 平成23年9月30日(金)~10月10日(月) |
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派遣先 | 南アフリカ共和国 ケープタウン市(CTICC:ケープタウン・インターナショナル・コンベンション・センター)他 |
主なスケジュール
日付 | 内容 |
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2日(日) | ISEB学生プログラムオリエンテーション IAC登録 Meet and Greet / Space Ambassadors Ice Breaking Dinner (Gold of Africa) |
3日(月) | Opening Ceremony・Plenary Event・HoA Q&A Session with Space Ambassadors IAC2011プログラム(テクニカルセッション・プレナリーイベント)およびWelcome Reception等への出席 |
4日(火) | JAXA Day 学生発表 IAC2011プログラム(テクニカルセッション・プレナリーイベント・ハイライトレクチャー)およびISEBランチセッション(JAXA Day)等への出席 |
5日(水) | IAC2011プログラム(テクニカルセッション・プレナリーイベント・ハイライトレクチャー)およびISEBランチセッション(ESA Day)等へ出席 |
6日(木) | IAC2011プログラム(テクニカルセッション・プレナリーイベント・ハイライトレクチャー)、ISEBランチセッション(CSA Day)、Outreach Activity Orientation・IISL模擬裁判決勝等へ出席 |
7日(金) | IAC2011プログラム(テクニカルセッション・プレナリーイベント・ハイライトレクチャー)およびNASA Outreach Activity・クロージング・セレモニー等へ出席 |
IAC(International Astronautical Conference)国際宇宙会議について
IACはInternational Astronautical Federation (IAF:国際宇宙航行連盟)、International Academy of Astronautics (IAA: 国際宇宙航行学会)及びInternational Institute of Space Law (IISL: 国際宇宙法学会)が主催している国際宇宙会議です。この国際宇宙会議では、各宇宙機関長の講演、本会議、レクチャー、各分野に亘る最先端の情報を仕入れることのできる会議、研究発表、イベントなどがあり、各国の宇宙機関長並びに幹部、学者、研究者、企業、若手研究者、学生などが参加する世界最大の宇宙会議です。1949年に第1回国際宇宙会議を開催し、今年2011年は第62回目の会議となります。本ウェブサイトにおいては、本派遣プログラムに参加された学生の皆さんの感想を交え、これらの活動について報告をさせていただきます。。
※ 本ウェブサイトにおける執筆者の所属大学・学年等についてはIAC2011ケープタウン大会参加当時(平成23年10月現在)のものです。
総合研究大学院大学 物理科学研究科 宇宙科学専攻
博士1年 久本 泰慶
- IACは各国宇宙機関をはじめ宇宙関連企業、大学等の研究者が参加し、歴史は古く今回で62回を迎える世界最大の宇宙会議である。過去アフリカで開催されたことは一度もなく、記念すべき今大会は「African Astronaissance」がテーマであった。開催地となったアフリカ大陸南端の喜望峰は大航海時代を支えたところでもあり、同時期に公開された国際探査ロードマップ(GER)が目指す宇宙大航海時代にふさわしい開催地となったことも感じたところである。
IAC期間中は自身の研究分野とは異なる様々なセッションに参加した。その中で地球環境の観測にいま関心が集まっていることを知った。衛星による地球環境観測は地球全体隈なく行うことが出来るのが最大のメリットとなる。しかし観測対象となるとCO2、メタン、水蒸気など多岐にわたり、全てを解明することなど到底一国だけでは行えない。アフリカをはじめとした発展途上国となると尚更である。そのため地球環境観測も国際協力が必要不可欠な分野となっている。プレナリーセッションでアフリカでは水問題が深刻でそれを解決しようと観測データを利用し、解析結果が報告されていたが印象的であった。このように専門性の高い会議とは異なり、IACは工学・理学・政治・法律など宇宙に関連する世界動向を包括的に学ぶことが出来る会議で、視野を広げる意味では大変勉強になる。帰国した今では、自身の興味関心だけで研究・開発を進めていくのではなく、世界のニーズに合わせて貢献できる技術を考えていけるようになりたいと思う。
総合研究大学院大学 物理科学研究科 宇宙科学専攻
修士1年 班 太郎
- 今回JAXA派遣学生として人生で初めての国際学会という場に出させていただき、普段の研究室では得られない、有形・無形のあらゆる経験をさせていただいた。南アフリカでの経験は、これからの私の研究者としての日常を強く支えてくれるだろう。世界各国で同じような志を持って研究を続けている同世代との数々の出会いや、第一線で活躍されている研究者の方々の含蓄のある言葉、南アフリカの子供たちの笑顔を私はこれからもずっと胸に、これから先の研究者としてのキャリアを切り開いていこうと思っている。
名古屋大学大学院 理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻
修士2年 大内 麻衣
- IAC参加での一番の成果は、他国の宇宙機関から派遣された同年代との交流ができ、この先も連絡を取り合っていける友人ができたことです。学生のうちに知り合い、交流を深めていくことの重要さを、私は、IACやIAC日程の前に開催されたSGC(Space Generation Congress)に参加し、改めて感じました。国際交流を深め、地球規模で自分たちの未来を決めていけるような世代を作りたいと思いました。 Technical SessionやHighlight LectureではEarth Observationの分野を重点的に選びました。自分の研究にも関係のあるGOSAT(Greenhouse gases Observing SATellite )では、地球温暖化の研究を進めるため、二酸化炭素とメタンを計測しており、GCOM-W1(Global Change Observation Mission)では、水循環と気候変動を観測するというプロジェクトが始まります。アフリカでは水を宇宙から観測し、水の地図を作るという試みがあり、私たちの生活をより豊かにするための宇宙利用について話を聞くことができ、とても勉強になりました。
慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻
修士2年 池田 達彦
- IACは世界的な宇宙系の学会であり、その規模も非常に大きく、とても活気にあふれたものであった。特にPlenary SessionやHighlight Session では各宇宙開発機関のトップによる、宇宙開発の目的や将来について話を聞けたことは国ごとの考え方やアプローチの仕方を知る上でとてもよかった。また、私の学会テーマであった「有人月面探査」に対しても、Technical Sessionで最新のプロジェクトや、私の研究に近い宇宙服へのアシスト機能などについて多くを学ぶことができた。また、ポスターセッションでは従来セッションに参加しない、分野の異なる方々に対し研究を紹介し、ダイレクトにフィードバックを得ることができ、今後の研究につなげていきたいと感じた。
九州工業大学大学院 工学府 機械知能工学専攻
修士1年 西田 航平
- IACに参加して得たこととして大きく挙げられるのは、私自身の意識の変化というものがある。例えばCanSat活動に関して、日本の学生によるコミュニティー内での宇宙活動だと認識していたのですが、CanSatのことを知っている海外の方や、私たちの紹介を聞いて興味を抱いてくれた方が想像以上に多かった。特に、私のチームが作成したCanSatを見て、「これはすごくシンプルだけど、それが美しい。」と言っていただいたことがとてもうれしく感じ、これからの活動に対する熱意も生まれた。またテクニカルセッションやプレナリー活動のなかで、宇宙開発・宇宙教育・宇宙産業の今現在や今後のプランについて多く知識を学び、私たちが普段研究室で行っている研究は少なからず将来の宇宙開発にかかわっていることを改めて認識した。そこでは、専門外で普段は触れないような教育や医学に関する最先端の研究を知ることもでき、宇宙開発の重要性を再認識し、自分の知見を広げることができた。さらに、NASA、ESA、CSAからの派遣学生と交流の機会が多くあり、意見交換できたのはとても有意義であった。同じ宇宙分野を志す学生としてコミュニケーションすることができ、彼らとの交流を通じて残りの学生生活や就職後において、私たちがこれからの宇宙産業を支えていくのだと強い刺激を受けた。
ISEB学生プログラム
本プログラムは、ISEB(国際宇宙教育会議)参加機関であるESA、NASA、JAXA、CNES、CSA、VSSEC(以下、「宇宙5機関1組織」という)間協力の下に、学生への宇宙分野における知識・理解増進の機会提供、学生を交えた学術・研究交流の奨励、国境や専門領域の違いを越えた友好の輪を広げることを目指してIAC会期中に実施される学生のためのプログラムです。
ISEB学生プログラムは10月2日(日)を初日としてスタートし、Space Ambassadors Ice Breaker Dinner、Heads of Agency Q&A Session with Space Ambassadors、Student Presentation、Outreach Activityが開催され、各宇宙機関より派遣された54名(JAXA:8名・ESA:12名(内CNES学生2名を含む)・CSA:23名・NASA:9名・VSSEC:2名)の学生が参加しました。
ISEBオリエンテーション・セッション 1. Meet and Greet
ISEB学生プログラムとして、初日にMeet and Greet及び、Ice Breaker Dinnerを開催いたしました。Meet and Greetでは、各教育機関長の挨拶の後、初対面の各国派遣学生同士で自己紹介を行い、挨拶を交わしました。
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻
修士1年 塩井 宏亮
- IACの参加にあたり、私が重きを置いていたことのひとつに、他国の学生・研究者との交流である。私は将来、国際的な場で仕事をすることを目標としているが、現時点では留学の経験もなく、海外の学生と交流する機会も非常に限られていたので、この機会を最大限活かす意気込みで臨んだ。そのため、IAC参加が決まった後に紹介されたSpace Generation Congressにも積極的に参加した。英語でのネイティヴスピーカーとの議論は想像を超える難しさがあったが、各国の熱心な同世代の若者から学ぶものは多くあった。そこで鍛えられたおかげでMeet and Greet及びIce Breaker Dinnerでは、非常にスムーズかつ気楽に他の学生との交流を楽しむことができた。単に英語の必要性を痛感するだけでなく、これまで英語を勉強してきた成果として、他国の人と交流できる喜びを感じられたのは自分の中で国際的なネットワークを作る上で重要な一歩となった。
総合研究大学院大学 物理科学研究科 宇宙科学専攻
博士1年 久本 泰慶
- 学生派遣の一つの目的である他国の学生との交流は2日目のオリエンテーションから始まった。国ごとに固まって座っていた学生にNASAのメルヴィンさんから「今すぐシャッフルしなさい」という号令がかかると一気に交流モードに変わる。英語を母国語にしない日本人には些か大変ではあったが、積極的に話しかけようと左右の人に話しかけてみた。隣に座ったのはCSAとESAの学生で自己紹介や旅程の話、研究内容などをした。聞き取れてもなかなか言葉にすることが出来ず、情けないことだが簡単に答えを済ましてしまう。何としても英語を習得したいと感じた瞬間であった。
ISEBオリエンテーション・セッション 2. Ice Breaking Activity
Ice Breaker Dinnerでは、レストラン(Gold of Africa Museum Restaurant)に移動。レストランに併設された博物館を巡り、南アフリカの歴史について説明を受けた後、中庭にてアフリカの太鼓(ジャンベ)のセッションを行ないました。ドラムの音楽を通じ、一体感を共有することができました。その後のディナーでは宇宙6機関の派遣学生がランダムに着席し、アフリカ人ダンサーによる踊りを堪能しながら共に食事をし、親交を深めました。
慶應義塾大学大学院 理工学研究科 開放環境科学専攻
修士2年 池田 達彦
- ミュージアムでは食事の前にアフリカの歴史や金にまつわる文化について学び、またジャンベというアフリカの伝統的な太鼓の演奏体験などで大いに盛り上がった。ジャンベでは隣のCSA学生と競うように叩いたため、翌日には親指の付け根にあざができるほどであった。また、その後のディナーでは各派遣機関区別なくテーブルを囲んだことで研究や大学、宇宙開発等多岐にわたる話をしたが、その中で私は日本の宇宙開発の現状についての知識が乏しいことを痛感した。これは今後どのような衛星を打ち上げるか、のようなことではなく、たとえば日本の国家予算に対する宇宙開発予算の割合といったような、より政治・経済的な知識のことである。日本の大学と比べ、海外の大学で修士課程に進学する学生は工学と同時に経済や政治についても専攻するなど、幅広い視野で世の中を見る知識を持っていた。特に専門分野に走りやすい日本の研究機関においてはあまり重要視されない点であり、このような力が社会的に自立するために必要であると感じた。
総合研究大学院大学 物理科学研究科 宇宙科学専攻
博士1年 久本 泰慶
- Meet and Greetの後はISEBの学生全員でゴールドミュージアムに行って交流を兼ねたディナーが催された。アフリカの伝統的楽器をレクチャー受けながら、みんなでパーカッションしたことはとてもいい経験になった。教えてくれたお礼にとISEBの学生の一人がクイーンの「We will rock you」を歌い始めるとさらに学生が加わり、全員でパーカッションを合わせた時にはそれはもう...音楽は国や文化を超えて一つになれる魔法の杖であるように感じた。それにしても(楽器を弾かない私には)リズムに合わせて太鼓叩くのも難しい。アフリカ文化の一端に触れ、なお且つ他国の学生と交流を深められることが出来、とても有意義な時間を過ごすことが出来た。
Heads of Agency Q&A Session with Space Ambassador
本セッションでは、昨年に引き続き、ISEB派遣学生からの質問にISEB参加機関の機関長や代表者が回答を行うという貴重な直接的対話の機会として実施されました。日本の派遣学生を代表して塩井さん、大内さんが質問を行いました。
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻
修士1年 塩井 宏亮
- 各国の宇宙機関長とISEB派遣学生によるHeads of Agency Q&A Sessionでは、幸いにも私は常々疑問に思っていた世界の貧困・エネルギー問題解決に勝る宇宙開発の必要性についてNASAのボールデン長官に直接質問させていただいた。ボールデン長官は具体例を挙げて宇宙開発の意義について熱弁し、加えて若手の力と国際協調の必要性に言及した。
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻
修士1年 班 太郎
- Heads of Agencyを交えての学生との交流イベントでは、イベントの最後にNASAのボールデン長官から学生間の国際協力に関して逆質問が出されたので、思い切って挙手をして回答させていただいた。先述したとおり、私はIACの直前までSGCという学生・若手社会人の合宿プログラムに参加していた訳であるが、その時の経験をもとに、「まずは数日でも数週間でも同じ場所に集まり、ひとつのテーマについてとことん語り合い、議論しあうこと、そうすればもはや文化や風習、宗教、あるいは政治体制の違いは何の意味も持たなくなると思う。」と答えた。この私の回答に関してはそれなりの反響があったようで、イベント終了後、NASAの学生から「あなたの意見、特に政治体制の違いは私たち若い世代には何の意味の持たないという箇所に強く共感した。」という言葉をかけてもらった。将来を担う同じ世代の仲間から共感してもらったことに非常に勇気づけられたし、実際IAC期間中を通じて、学生同士の間にはいかなる壁も存在しなかった。
ISEB派遣学生の代表の一人として質問を行う東京大学の塩井宏亮さんと名古屋大学、大内麻衣さん。
International Student Zone: ISZ(国際学生ゾーン)
ISEB学生プログラムの一環としてIAC2011 展示会場の中に学生のための研究活動成果発表および人材交流の場としてのInternational Student Zone;ISZ(国際学生ゾーン)が設置され、会期中、主としてランチタイムにISEB参加3機関(JAXA, ESA,CSA)から派遣された専門家による学生対象のレクチャー、各機関から派遣された学生によるプレゼンテーション、ポスターセッション等が実施されました。IACの期間中、ISZでは、1日毎に違う宇宙機関の日があり、10月4日(火)はJAXA Day、10月5日(水)はESA Day、10月6日(木)はCSA Day、10月7日(金)はNASA Dayとして、各宇宙機関が担当しました。JAXA Day のISEB Student Presentationでは、JAXA派遣学生8人が一丸となって、それぞれの研究や日本の文化、学生の活動について資料をまとめあげ、発表を行いました。 学生ゾーンでは、各4機関のブースを設け、JAXAブースでは、学生による折り紙講座や宇宙食の試食、CanSatの展示を行い、人気を博しました。また、各学生が自分の研究やその他の活動など世界に発信したい内容のポスターを展示し、世界中の研究者や学生達との交流の場にもなりました。
ISEB Student Presentation JAXA Day 学生発表の様子
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻
修士1年 塩井 宏亮
- IACプログラムを通して関わった活動の中で特に印象に残ったのが、6月から準備をし始めたJAXA Dayのプレゼンテーションである。最初のミーティングにて、公募により選出されたJAXA派遣学生と顔を合わせた時、彼らの宇宙教育に対する情熱に圧倒された。例年より派遣メンバーが少ない分、プレゼンテーションの自由度は高く、公式な口頭発表でないことを活かして、聴き手を巻き込んだものにできればと思っていた。各人の予定を合わせるのに苦労し、このプレゼンテーションのために割ける時間は決して多くはなかったが、研究についてだけでなく、日本文化や学生活動についても紹介し、インタラクティブに進めることができた。JAXA派遣学生の仲を深める上でも、このプレゼンテーションは有意義なものであった。
東京工業大学大学院 理工学研究科 機械宇宙システム専攻
修士2年 小宮 悠太
- 2日目の昼に、ISZにおいてJAXA派遣学生の発表を行った。内容は各自の自己紹介、研究内容に加え、日本文化の紹介というものだった。プレゼンの内容は3ヶ月前の事前打合せの際から議論を重ね、凝ったものに仕上げていった。また、なかなかこまめに会って打ち合わせをするのは難しかったことから、事前の議論にはメーリングリストやSkypeを活用した。内容も一方的な発表ではなくインタラクティブなプレゼンテーションとなるよう、要所で確認クイズを入れたり、スライド全体にマリオを絡めるなど、見ていて楽しめるものとなるよう工夫した。文化紹介としては、日本の地理に関するもの、江戸文化に関するもの、日本食、学生の宇宙開発プロジェクトとUNISECの紹介などをピックアップした。発表の評価は上場だったように感じる。様々な人から「面白かった」と言ってもらえた。どうも話を聞いてみると、参加者全員で発表を行うのは日本だけだったらしく他の団体は希望者のみで行っていたらしい。気合の入れ方が違った。
名古屋大学大学院 理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻
修士2年 大内 麻衣
- ISZ(International Student Zone)では、各自の研究ポスターを張り、立ち寄ってくださった方に声をかけ、自分の研究の説明をすると共に、相手の研究についても話をしました。また、日本文化やクイズを交えた研究発表を、1人10分間の持ち時間でスライドを作り、全員で1つのプレゼンテーションにまとめ上げて発表を行いました。私は、江戸しぐさの"思いやりの心"と江戸の生活に染み付いていた"エコな暮らし"と、自分の"地球環境"についての研究と関係付けて紹介したいと思い、日本文化は江戸しぐさを選び、プレゼンテーションを行いました。また、同ゾーンで、折り紙や、宇宙食を配ったことが会話のきっかけになり、たくさんの人と交流を持つことができました。
総合研究大学院大学 物理科学研究科 宇宙科学専攻
博士1年 久本 泰慶
- 国際学生ゾーン(ISZ)では派遣された学生によるプレゼンテーションや教職員によるレクチャーが日替わりで行われた。JAXA DayではJAXA学生によるプレゼン発表を行った。学生の大学が異なり遠隔地であることからも発表準備は出発から数カ月かけて取り組んできた。各自の研究内容や近代・現代の日本文化紹介、学生生活、アウトリーチ活動などを盛り込んだ発表となった。国際会議において普段のアウトリーチ活動を紹介する機会が少ないので、発表できたことはとても有り難かった。またISZには学生のポスターなどを貼ったブースを構え、さらに折り紙など日本文化の紹介を行った。ポスターには他国のISEB学生に加え、知り合った研究者なども来ていただき、自身の研究内容を対外的に紹介するいい機会となった。
東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科
4年 布施 佑真
- プレゼンに関しては、学会で発表したことはもちろん無いですし、英語で発表したのも初めてでした。プレゼンが終わった後、話しかけてくれた人がいてカンサットについて色々と聞かれました。少しでもカンサットに興味を持ってくれたことがすごく嬉しかったです。さらに、その人に「プレゼン上手だったよ」と言ってもらえたことがすごく自信になりました。微力ながらも西田さんと共に日本のカンサットを世界の人に知ってもらえたと思います。さらに他のJAXA派遣生と共に、日本の宇宙開発はこういうことをやっているということも世界の人に知ってもらえたと思います。他の人の発表を聞くこともすごく刺激になりました。初めてだったので、自分の分野だけではなくいろんな分野の話を聞いてみました。特に印象に残っているのが、スペースメディカルケアです。まず、こんな分野があること自体知りませんでした。他にも、バルーンサットなどの面白そうな研究がたくさんありました。たくさんの人々がいろんな方向から宇宙開発に取り組んでいるというのをすごく感じました。僕が今回見たのはまだほんの一部だと思います。もっといろんな分野の研究を見たいという気持ちが生まれました。
NASA Day アウトリーチ活動
IAC会期最終日にはNASA Dayアウトリーチ活動として、地元ケープタウンの中学生400名を招き、レゴブロックやソーラーカー等を使ったアウトリーチ活動をNASAの主催で行いました。派遣学生も展示ブースの案内役等として活躍しました。開催国の中学生と直接交流をすることで、有意義な活動となりました。
慶應義塾大学大学院 理工学研究科 開放環境科学専攻
修士2年 池田 達彦
- NASA Dayではアウトリーチイベントでの現地の中学生400人を招待し、展示ブースのツアーやソーラーカーや星座早見表、LEGOの作製ボランティアを行った。私はエスコート役となり、約40人の学生を連れて展示の見学とソーラーカー作製の補助を行った。中学生が一生懸命ソーラーカーを作ったり、ブースで活発的に質問したりしている様子から、南アフリカという、今まであまり宇宙開発が盛んでなかった地域でも子供は誰でも宇宙への興味や夢を持っていること感じ、理科離れなどに対して宇宙というトピックはとても有効であること、宇宙教育の意義を再認識した。しかし一方で、当初与えられたスケジュールが不十分であったこともあり、他のグループとの意思疎通が難しく、見学場所がかぶらないように子供たちをつれまわしてしまったり、各ブースに十分な時間を取れなかったりなど、進行がスムーズに行えなかった。
九州工業大学大学院 工学府 機械知能工学専攻
修士1年 西田 航平
- IACプログラムの中で印象深かったこととして、JAXAだけでなく各国の宇宙開発機関が教育活動に力を注いでいることが挙げられる。私たちもJAXAの派遣学生として参加させていただいたこと、他の宇宙開発機関からも多くの学生が派遣されていたこと、NASAのアウトリーチ活動において、現地の子どもに宇宙と触れ合う機会を設けるイベントを行っていたこと等から、私はそう感じた。特にNASAのアウトリーチ活動については、私もボランティアとして参加し、各国の学生と協力しながら、現地の子どもと様々な活動を行った。私はエスコートを行っていたが、普段は学生として教えられる立場の私が、逆に教える立場となることで教育活動の面白さと難しさを知ることができた。このアウトリーチ活動を経て、私たちの世代だけでなく次の世代に関心をつなげていくことの大切さを身にしみて実感した。子どもたちから言われた「宇宙ってすごいね」という言葉は、簡単な言葉ではあったが、深く印象に残っている。
東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科
4年 布施 佑真
- アウトリーチ活動は、正直すごく大変でした。しかし、他の国の人と一つのことを成し遂げるという貴重な経験になりました。僕は、ソーラーカーを担当しましたが皆無事走らせることができてよかったと思います。皆出来上がったソーラーカーで無邪気に遊んでいました。アフリカの子供たちも、日本の子供と変わらないなと思いました。無邪気な笑顔がかわいかったです。この活動が、アフリカの子供たちにどんな影響を与えるかは分かりません。しかし、少しでも宇宙の分野や科学に興味をもってくれればすごく嬉しく思います。
東京工業大学大学院 理工学研究科 機械宇宙システム専攻
修士2年 小宮 悠太
- 今回のIACでは、通常の学会以上に個人的なつながりもでき、非常に有意義なものとなった。また、一緒に参加した優秀で意欲的な学生との輪も今後の糧となるだろう。今回様々な人と様々な話をしたが、最も印象に残っているのは、NASAアウトリーチ活動での各教育リーダーの経歴の話である。みんな結果的に宇宙教育に関わっているが、それまでの経歴は多様なものであり、まさに点と点を繋げて線としている人ばかりだった。私も今与えられている課題をこなしながら、どこへ行き着くか分からない自分の進路を切り開いていきたい。
国際宇宙法学会(IISL)への協力
本派遣プログラムでは、2001年よりIISL主催の「マンフレッド・ラクス宇宙法模擬裁」(http://spacemoot.org/)に協力し、アジア・太平洋地域予選通過チームの学生2名をIAC会期中に実施されるワールド・ファイナル・コンペ(世界大会)に派遣しています。本年のアジア・太平洋地域代表シンガポール国立大学チームは、優勝を逃したものの、Best Oralist Awardに加え、Runner-Up Awardを受賞しました。
おわりに・・・
今年度の本派遣プログラムでは、学部生から博士課程の学生まで、多種多様な専攻分野から、幅広い層の学生が参加されました。有意義なプログラムで派遣学生一同非常に充実した時間を過ごすことができました。