東京都・国立大学法人筑波大学附属視覚特別支援学校(2) |
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中学部第3学年生(いずれも点字使用者) 中学部第3学年生徒(いずれも墨字(活字)使用者(弱視者)) |
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いずれも5名 |
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平成22年10月26日、27日 |
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中学校理科(第2分野) |
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立体月球儀 |
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導入の教材として 発展教材として 習得させる学習内容として |
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「これは何だろう?」と月球儀を提示し、生徒それぞれがじっくり観察を始めました。点字使用の生徒からは、「宇宙のゴミ?」「天球儀?」という発言もありましたが、「月」と気が付くのにそれほど時間はかかりませんでした。実際の月を見たことがないにもかかわらず、早い段階で正解が出てきたことは驚きでした。 まず、観察にあたって、凸凹が高さ方向に10倍強調されていることを伝えました。 以下、文中のSは生徒、Tは授業者を表します。 T「月のどの部分が地球から見えているのかな?」 S「つるつるしたところが見えないんだよ。だから、こっちが裏。」 T「裏とか表というのはどういうこと?月に裏と表があるのかな?」 やりとりをしながら、いつも地球から見えている方(つるつるしているところ)が表であることを説明します。つまり、見えている面と見えない面があるということです。 次に、大きさについて尋ねました。 T「月よりも地球の方が大きいかな。小さいかな?」 S「地球の方が小さいから、月がよく見えるんじゃない?」 月がよく見えている、というイメージから、月の方が大きいとイメージをもっている点字使用の生徒がいました。 T「月よりも、地球の方が大きい。だから、意外と、見えている月は小さく感じるよ。では、地球は、月の何倍くらい大きいのかな?」 月の直径の約4倍であることを説明します。 T「月と地球はどのくらい離れているか?」 S「月3個分くらい。」 T「それよりも遠い人?近い人?」 S「1mくらい。」 T「答えは……、11m。」 S「あれ!」 以上のやりとりの後、実際にその距離を廊下など直線距離で実感してみます。 この縮尺では約11m離れているにすぎないが、実際には約38万km離れていることになるので、「おとなり」といってもかなりの距離があり、宇宙の広さが少し分かったのではないかと思います。41年前に、アメリカのアポロ計画があったこと、その中で数日間かけて月まで行ったこと、も説明しました。 その後、改めてじっくりと観察を続けました。 つるつるしたところと凸凹したところに分かれていることを確かめました。凸凹したところは、クレーターといって、隕石がぶつかって穴があいたところであり、穴があくとともに、縁がもりあがっていることを確認します。火山のカルデラのような形です。日本の観測データでつくられた立体月球儀であることを伝えました。 T「なぜ表側は、つるつるしているのか?」 S1「あまり隕石がぶつからなかった。」 S2「地球が守ってくれた。」 T「11mも離れているのに?すぐ隣にいれば、かげになって守ってくれるけど、11mも離れていたら地球のかげに入らないよね?」 T「実は、月も火山活動があり、つるつるしている部分は、月の火山活動によって噴出した溶岩が埋め尽くした部分です。」 ここで、以前に火山の分野で学習した、黒っぽい溶岩は、有色鉱物が多いことを思い出します。粘りけは弱く、玄武岩質マグマであることを確認しました。逆に、クレーターの部分は、無色鉱物の割合が多いのではないかと類推されました。 「ウサギがいる」といわれてきたのは、つるつるの部分が黒っぽく、その模様がそのように見えたからということも説明しました。ウサギが餅をついている様子を横から見た模様に見えるということです。外国では、女の人の横顔やライオンなどに見立てられていることも説明しました。 また、いつもこの面が見えているのは、月と地球の関係が、起き上がりこぼしのようになっていることも伝えました。 最後に、地球には、なぜクレーターがないのか、問いました。これも以前に学習した、風化・浸食によって、説明ができます。地球の表面の凸凹は、常に風雨、水によって削られてきたということで、自宅の周りにクレーターがないのはそういう訳です。(もちろん、地殻変動による表面の変容もありますが。) 地球には、このように空気があり水があることで、生命が存在しています。「おとなり」であるのに、一方は生命が存在し、もう一方はそうではないことについて、直径大きいことによって重力が大きく、水や空気を引きとめることができたことを話しました。 他に、月の成因、クレーターや海の名前、地球から天体までの距離などについても簡単に話しました。 |
授業・活動後の先生のご感想、ご要望など
- 授業の導入で立体月球儀を活用しました。視覚障害特別支援学校(盲学校)においても、生徒の宇宙への興味・関心は非常に高く、この分野の学習をすることを楽しみにしています。他の分野では、あまり興味・関心をもてなく、授業中の発言が少なかった生徒も、宇宙を取り上げ始めるといきいきとし始め、宇宙のもつ魅力に改めて素晴らしさを感じています。
今回、本校中学部の第3学年の生徒が、宇宙と地球の単元を学習するにあたり、その導入として立体月球儀を活用しました。視力の関係から、月を見たことのない生徒は、特にじっくりと触って観察(触察)し、授業者による月の説明を聞きながら、イメージを膨らませていたのが印象的でした。