授業連携

人工衛星への挑戦 -CanSatを通して学ぶ宇宙開発-

神奈川県・神奈川県立横浜桜陽高等学校/金井高等学校/舞岡高等学校

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概要

「CanSat(カンサット)」缶ジュースサイズの超小型人工衛星

<全授業を通した指導目標>

(1)科学技術の複合体である宇宙開発を学ぶことにより、「ものづくり」の素晴らしさを体験させ、科学技術への興味・関心を引き出す。
(2)ミッション達成型の課題を与えることにより、要求仕様検討、設計、製作、実験、検証、改善、というシステムエンジニアリング、システムインテグレーションの要素を学習する。
(3)互いに異なる学校の生徒がチームを組み、ミッションに取り組むことにより、コミュニケーション能力と協働する能力を育成する。
(4)宇宙への夢と憧れを実現する科学技術の素晴らしさとそれに挑むチャレンジ精神の偉大さを体験させ、数学・理科等への興味・関心を高め、学習意欲の向上を図る。

<対象>

高校1・3年生(桜陽高校8名、金井高校3名、舞岡高校1名 合計12名)

<期間>

平成18年7月21日~8月25日
回数(総時間):8回(59時間)

<区分>

SPP(サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト)

構成表

実施日
時間
形式
人数
授業内容
1
12名
*7月21日までに資料を配布し、生徒全員がミッションについて発表できるよう指導する。
120分
講義
「人工衛星について」(20分)
講師:中須賀 真一
(東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授)
講義
「CanSat概要について」(20分)
講師:永島 隆
(東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻)
発表

授業
事前に配布していた資料を活用して、ミッションについて発表する。(50分)
ミッションごとに3チームに分かれる。(30分)
*次回授業(8月7日)までにグループで分かれて調べ学習を行う。
2
420分
授業

実習
12名
今後の作業手順の確認、スタッフ紹介のあと、ミッションについてグループごとに発表。(50分)
工作技術の演習を行ったのちに、CanSatの製作に取り掛かる。(370分)
支援:浅野 眞
3
360分
実習
12名
接続ケーブルの製作や缶の加工作業を行う。
4
450分
実習
12名
基本プログラム及びドライバーを本体へインストールし、動作確認を行う。回路設計・構造設計も行う。
5
600分
実習
12名
プログラミング・回路設計・構造設計を行う。
支援:中須賀 真一
(東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授)
支援:浅野 眞
6
720分
実習
12名
プログラミング・回路設計・構造設計を行う。
支援:永島 隆
(東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻)
7
450分
実験
11名
CanSat降下実験。大学生によるデモ実験を見学する。
支援:中須賀 真一
(東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授)
支援:永島 隆
(東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻)
支援:浅野 眞
8
420分
発表
11名
「成果発表会」
講評:永島 隆
(東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻)
講評:浅野 眞(JAXA宇宙教育センター 参事)
支援:浅野 眞

第1回目/全8回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
1)人工衛星全般に関する知識の修得とこれから取組もうとするCanSatに関するイメージを持たせる。
2)各自が予め考えてきたミッションについて説明し、グループわけを行う。
3)編成したグループごとにこれから取組むミッションの確定とスケジューリングを行う。また、プロジェクトマネージャーも決める。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(40分)
1)人工衛星全般に関する話
2)CanSatについての講義
◎パワーポイントを使用した講義。興味・関心を引き出すために適時生徒に発問を行う。
△各種質問に答える。
CanSatへの動機付けを行う。
展開
(50分)
各自が考えてきたミッションについて発表。
主に次のような発表があった。
1)決められた方向を撮影する。
2)気温などの気象情報を収集する。
3)一定時間自由落下をさせて落下実験を行う。
4)リモートコントロールでCanSatに各種の実験を行わせる。
5)自動制御で目的の地点に着地させる。
△事前に配布してあった資料を活用して、生徒はミッションについて発表する。
◎ミッションの内容について、不十分な点は適時発問しながら、より明確なミッションとなるように誘導する。
ミッションの内容を授業日までに考えさせるための事前指導を丁寧に行う。
まとめ
(30分)
ミッションにより3チームを編成。
チーム内におけるプロジェクトマネージャーの選出と、今後のスケジューリングなどを検討させる。
◎発表のあったミッションを分類し、グルーピングを誘導する。
△編成されたグループ単位で協議を行う。
協議がスムーズに進行するように配慮する。

授業の感想・メモ

  • 事前準備を丁寧におこったため、各自が行いたいミッションを的確に発表することができた。講師の方が作成されていたパワーポイントが興味・関心を引き出し、これから挑戦するプロジェクトについて意欲的に取組むための動機付けに成功した。

第2回目/全8回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
1)今後の作業手順の確認。
2)スタッフ紹介。
3)各グループミッションの発表。
4)工作練習。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(30分)
CanSatの説明及び今後の作業手順と留意点の説明。 
◎パワーポイントを使用しての解説
△ノートテイク
生徒の理解速度に合わせた説明を心がける。
展開
(370分)
1)各班のミッション、役割分担、衛星名の発表と内容検討。
2)ハンダ作業練習。
3)CanSatキットの製作開始。
◎ミッション詳細についてのチェック及び具体的なアドバイス。ハンダ作業の指導。CanSatキットのパーツ説明及び組み立ての概略説明。      
△班長による班員役割分担の紹介。ハンダ作業実習。
提案されたミッションに対して数値目標等、具体的な目標を考えるように指導助言する。作業中の事故防止に留意する。
まとめ
(20分)
本日の作業の振り返り。
具体化されたミッションの確認。
明日の作業内容の確認。
13日(実験日)までの作業を見通して、本日の進行度を確認させる。

授業の感想・メモ

  • 1)生徒が考えてきたミッション内容は「地上を撮影したい」等、具体性に欠けるものが多く、必要な物品や性能、大きさ等を一つ一つチェックする必要があった。
  • 2)ハンダ作業経験がほとんど無い生徒達であったが技術習得は早かった。
  • 3)34℃を超える猛暑の中のハンダ作業にもかかわらず、生徒は熱心に作業をおこなっていた。                                                                                               

第3回目/全8回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
1)基本キットの製作。
2)カメラ取り付け位置決め。
3)缶の加工。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(10分)
本日の作業手順と留意点の説明。
◎ホワイトボードを使用しての説明。演示。
生徒が初めて目にするパーツ類なので、丁寧に解説する。
展開
(330分)
1)接続ケーブルの製作。
2)缶の加工作業。
◎工具やパーツの扱い方の解説および実演
△共同作業による部品作りと缶の加工
ケーブル製作は繊細な作業なので開始当初は密着指導が必要
まとめ
(20分)
本日の作業の振り返り。
成果発表会(25日)の時程確認。
明日の作業内容の確認。
13日(実験日)までの作業を見通して、本日の進行度を確認させる。

授業の感想・メモ

  • ケーブル製作は繊細な作業のために予想以上の時間を要した。

第4回目/全8回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
1)基本キットの製作。
2)カメラ取り付け位置決め。
3)缶の加工。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(40分)
本日の作業手順と留意点の説明。
役割別作業内容の説明。
◎ホワイトボードを使用しての説明。
昨日までの共同作業から、役割別作業に移行するので、それぞれの役割分担と責任を再確認させる。
展開
(400分)
1)(プログラミング)基本プログラム及びドライバーを本体へインストール。動作確認。
2)(回路設計)カメラスイッチ回路の製作及び動作確認。電力設計。
3)(構造設計)カメラ設置部分等、細部の加工及び部品作り。
◎衛星本体へのプログラムインストール方法の指導。C言語の指導。動作確認方法の指導。
◎回路図の読み取り指導。スイッチ回路組み立て指導。動作確認指導。
◎工作器具取り扱い指導。        
△C言語の学習。インストール方法の学習。電子回路学習。動作確認及び不適正箇所の発見、修復。部品取り付け位置の検討及び加工。
C言語はもちろんのこと、電子回路や使用する機器の取り扱いも不慣れな生徒に対してこれまで以上の丁寧な指導が必要。 
まとめ
(10分)
作業進行度合いの確認。
12日(実験日の前日)までに完成させなければならない事項を役割ごとに確認させる。

授業の感想・メモ

  • 役割別に作業を始めてから、ようやく生徒は自分の責任部分が理解できてきた。それと同時に作業の進行度合いにも差が生じ始めてきた。衛星本体への基本プログラムの書き込みは早い班と遅い班で2時間の差があった。

第5回目/全8回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
1)プログラミング。
2)回路設計。
3)構造設計。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(30分)
本日の作業手順と留意点の説明。
役割別作業内容の説明。
◎ホワイトボードを使用しての説明。
役割別の作業内容確認。
展開
(550分)
1)(プログラミング)ミッション部分のフローチャート完成。機能要素の開発。
2)(回路設計)サーボモーターの配線。マイクロスイッチ動作確認。消費電力計算。
3)(構造設計)カメラ設置部分等、細部の加工及び部品作り。重量確認。
◎C言語の指導。動作確認方法の指導。機能についてのアドバイス。
◎スイッチ回路組み立て指導。動作確認指導。
◎構造設計指導。
△C言語の学習。動作確認及び不適正箇所の発見、修復。消費電力の計算及び必要バッテリーの確保。部品取り付け位置の検討及び加工。
プログラミング、回路設計、構造設計のそれぞれについて、きめ細かい指導が必要。
まとめ
(20分)
作業進行度合いの確認。
◎12日(実験日の前日)の予定連絡。
△12日の作業を役割ごとに確認。

授業の感想・メモ

  • 生徒は頑張っていたがサーボモーターやGPSの位置などの構造設計に、次々と課題が発生してきた。プログラミングについても生徒にスキルがない分、指導者の負担が過重になっている。全体に作業が遅れており予備日の12日も作業継続を決定。

第6回目/全8回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
1)プログラミング。
2)回路設計。
3)構造設計。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(10分)
本日の作業手順と留意点の説明。
役割別作業内容の説明。
◎ホワイトボードを使用しての説明。
役割別の作業内容確認。
展開
(690分)
1)(プログラミング)ミッション部分のフローチャート完成。機能要素の開発。
2)(回路設計)サーボモーターの配線。マイクロスイッチ動作確認。消費電力計算。
3)(構造設計)カメラ設置部分等、細部の加工及び部品作り。重量確認。
◎C言語の指導。動作確認方法の指導。機能についてのアドバイス。
◎スイッチ回路組み立て指導。動作確認指導。
◎構造設計指導。
△C言語の学習。動作確認及び不適正箇所の発見、修復。消費電力の計算及び必要バッテリーの確保。部品取り付け位置の検討及び加工。
ミッションのうちで、最終的に実験まで間にあいそうもないものをあきらめ、可能性のあるミッションを追及する。プログラミング、回路設計、構造設計のそれぞれについて、きめ細かい指導が必要。
まとめ
(20分)
実験準備
◎13日(実験日)の予定連絡。
△13日の作業確認。実験準備

授業の感想・メモ

  • 生徒は頑張っていたがサーボモーターやGPSの位置などの構造設計に次々と課題が発生してきた。プログラミングについても生徒にスキルがない分、指導者の負担が過重になっている。全体に作業が遅れており予備日の12日も作業継続を決定。

第7回目/全8回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
Cansat降下実験。データ取得。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(30分)
準備作業。
挨拶。
東大チーム、青山学院大チーム、高校生チームの紹介。
各チームミッション紹介。
本日の作業手順と留意点の説明。
◎実験実施上の注意喚起。現場において、各作業部分の技術指導。
△チームごとミッション及びメンバー紹介。
気球取り扱い上の注意。炎天下での熱中症、その他健康上の注意。
展開
(400分)
人工衛星の各部調整。
落下実験。
大学チームの実験を見学。
◎プログラム調整指導。構造調整指導。落下実験指導。
△プログラム調整。構造の最終調整。落下実験。
構造についてはビス止めすべき部分をテープ止めで間に合わせるなど、現場においての臨機応変の対応を指導する。ケガ、熱中症等の無いよう、常に生徒の状態を観察する。
まとめ
(20分)
簡単な振り返り及び撤収作業。
◎成果について各自が詳細に振り返ること。25日の成果発表会およびそれまでの予定を確認。
成功・失敗の別なくミニマムサクセスからフルサクセスまでの具体的に検証するように指示。

授業の感想・メモ

  • 京急湘南佐島なぎさの丘分譲地は天候にめぐまれ、気球落下実験には最適の天候だった。 
    生徒は昨日までに準備しきれなかった部分を東大の先生がたに支援されながら準備をした。しかし、短期間での準備不足に加えて自動車からとる電源の電気量不足のためにノートパソコンが思うように動かず、プログラムの手直しに相当の時間を要した。結果、3班のうち落下実験が実施できたのが2班。うち1班が画像データを取得することができた。残りの1班は最終調整に失敗し、実験が実施できなかった。  

第8回目/全8回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
CanSat降下の追実験。データ取得。成果発表会。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(10分)
本日の作業手順と留意点の説明。
成果発表会の進め方の説明。
◎実験実施上の注意喚起。校舎使用上の注意喚起。各チームの作業内容確認。
△各チームの作業内容確認。
校舎最上階よりCanSatを落下させるにあたって、風向・風力、地上の安全確認等を注意。
展開
(350分)
人工衛星の各部調整。
校舎最上階より落下実験。
データ解析。
発表用パワーポイント作成。
◎プログラム調整指導。構造調整指導。落下実験指導。
△プログラム調整。構造の最終調整。落下実験。

◎データ解析指導。
△データ解析。

◎パワーポイント発表資料の作成指導。
△パワーポイント発表資料作成。
実験にあたっては事故の無いように充分注意する。
落下実験の成功・失敗にとらわれず、データを詳細に解析することを留意させる。
発表
(60分)
成果発表。
講評。
△成果発表。
◎講評。
発表にあたってはテーマを選んだ動機や作業上の問題点、実験の結果と解析結果について簡潔に要点をまとめてわかりやすく発表することを留意させる。成功・失敗の別なくミニマムサクセスからフルサクセスまで、具体的に検証するように指示。

授業の感想・メモ

  • 高校生にとってはハードな内容の講座だったが生徒達は大健闘した。成果発表の内容も失敗や反省も含めて今後につながる形での発表であった。さらに東大の永島先生には、成果発表日にも追実験からデータ解析の指導、発表の方法に至るまで密着した指導をしていただき、成果発表までこぎつけることができたことを深く感謝する次第です。

神奈川県・神奈川県立横浜桜陽高等学校・金井高等学校・舞岡高等学校

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