授業連携

飛行機の設計ミッション

群馬県・群馬県立館林商工高等学校

  • 高等学校
  • 高1
  • 高2
  • 探究

概要

▲7月24日「JAXA航空宇宙技術研究センター(調布)見学」

<全授業を通した指導目標>

 SPPの連携講座として、生徒に興味関心の高い宇宙・航空関係の分野をテーマに取り上げることで、好奇心を喚起しながら科学的な思考判断能力の充実を図ることを目的とする。
 H16年度のSPP講座において、「ロケットの設計」を行い、宇宙やロケットの特性を学びながら目標のミッションのためのロケットの設計を論理的に考察し、学習した。今年度は、飛行機の設計を行うことで、昨年度学習した内容を更に発展させ、設計だけでなく、製作し、試験飛行を行う。
 試行錯誤しながら飛行機の特性について学び、また、製作・検証・改良の過程を通じて、思考判断能力を向上させることをねらいとする。
 その際に、最先端の技術に実際に触れたり、開発に携わる研究者の方から講義を受けたり、ディスカッションすることで、普段の授業では聞くことのできない、生きた体験や、研究者と触れ合うことができる機会は大きな効果をもたらすと考える。

<対象>

高校1、2年 11名(1年生3名、2年生8名)

<期間>

平成19年8月22日~平成19年10月21日

<区分>

SPP(サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト)

構成表

実施日
時間
形式
人数
授業内容
1
240分
見学






講義
15人
JAXA航空宇宙技術研究センター(調布)見学(120分)
・センター紹介ビデオ
・展示室
・分室へ移動
・2m×2m低速空洞
・飛行シミュレータ設備
・実験用航空機(ビーチクラフト 65型機・MH2000A型機)
「飛行機の基礎を学ぼう」(120分)
講師:穂積 弘毅
(JAXA総合技術研究本部 飛行システム技術開発センター
主任研究員)
「教材用模型飛行機の製作と飛行試験」
講師:穂積 弘毅
(JAXA総合技術研究本部 飛行システム技術開発センター 主任研究員)
副講師:小河 昭夫
(JAXA総合技術研究本部 プログラム推進室 副室長)
教材用模型飛行機のキットを製作し、飛行機の基礎的な構造と飛行させる際の注意点について学ぶ。
支援:浅野 眞・宮原 有香
2
240分
実習
8人
1回目の講義で、学んだ原理をもとに、実際に規定の中で飛行機を作成し、試験飛行を繰り返しながら、試行錯誤学習を行うことを目標とする。講義で学んだ原理からどのように工夫すべきかを、理論的に考えられることが理想であるが、感覚としての経験的な試行錯誤することで、最終的に原理に結びつくように積極的に取り組むことをねらいとする。
支援:浅野 眞
3
120分
実験
15人
飛行試験
※製作した飛行機を実際に飛ばし、距離や滞空時間などを計測する(体育館にて)
講師:穂積 弘毅
(JAXA総合技術研究本部 飛行システム技術開発センター
主任研究員)
指導:小河 昭夫
(JAXA総合技術研究本部 業務推進部業務課広報
航空プログラムグループ企画推進室 広報)
指導:木下 円
(JAXA総合技術研究本部 業務推進部業務課広報
航空プログラムグループ企画推進室 広報)
30分
実験
講師講評・アンケート作成
支援:浅野 眞・宮原 有香

第1回目/全3回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>

 初回において、生徒に科学的興味を強く喚起するために、実際に航空・宇宙開発事業が行われている「航空宇宙技術研究センター」に足を運ぶことによって、その臨場感を体感してもらう。展示室だけでなく、実際の風洞試験や、試験実機飛行機などを間近で見ることができることは、映像や知識だけではまかなえないものがあり、生徒にとっては研究開発の現場を身近に感じることのできる効果が期待される。また、現在の航空宇宙開発に関する基礎的な知識を得る。
 講義では飛行機が飛ぶ仕組みなど、基本的な考え方を話していただき、飛行機開発の魅力や難しさについて知ることを目標とする。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
               
指導上の留意事項
導入
(20分)
航空宇宙技術センター
展示室の見学を行い、紹介ビデオを見ることで、航空宇宙研究所の主な活動内容を知る。
△必要に応じてメモを取る、カメラつき携帯電話等で写真を撮るなどを行った。
ただ、見るのではなく、どのような点がその試験機の目的なのかを考えながら見学できるように声がけするなどに留意した。
展開
(200分)
分室へ移動し、実際の試験を行う試験機の見学を行った。特に風洞では、実際に風洞試験を行うチャンバーに入り、実際に風を体験した。また、シミュレーション機では、3Dの飛行シミュレーションを体験させていただき、日本の技術の最先端を体で感じ、学ぶことができた。

・2m×2m低速風洞・飛行シミュレータ設備・実験用航空機(ビーチクラフト 65型機・MH2000A型機)

講義では、研究者の穂積さんより、「飛行機の基礎を学ぼう」と題して、飛行機の仕組みについて基本的な講義をしていただき、揚力や物体自体の安定性についての理論について学んだ。

講義後、実際に教材用模型飛行機のキットを製作し、飛行機の基礎的な構造と飛行させる際の注意点について学ぶ。実際に作る際に製作の過程での注意点や、飛行試験を行う際の飛ばし方、さらに、試験による改善方法などについて学ぶことができた。この体験学習には研究者の穂積氏、小川氏が立ち会ってくださり、講義を基にした飛行機の原理について総合的に学習することができた。
△見学のレポート用に写真を撮り、試験器について説明を受けた。

◎生徒とともに体験したり、質問を促したりすることで、受身の見学にならないように喚起する。


△講義ではメモを取りながら、学習を行う。


◎講師の方に途中で、質問を入れるなど、生徒が受身の形にならないよう生徒とともに学習する姿勢を持った。


△教材用キットを実際に製作し、飛行機自体の基本的な形を知り、製作の過程での注意点や、できた飛行機の試験の仕方、また、試験後の改善方法などについて体験しながら学ぶ。実際に手を動かすことで、理論を試してみたり、試行錯誤しながら飛行機の製作を行う。

◎生徒の作業において、難しそうな点については、ともに説明書を読むことで、同じ目線で試行錯誤を促すように支援した。
生徒にとって、理解が難しいと思われるところには、それぞれに声をかけたり、講師の方に質問をしたり、と生徒がわからないまま講義を受けることがないように留意した。



キットの製作については、生徒が主体的に考えて行うことができるように、できるだけ指示を行なわず、説明書を見たり、失敗を通して試行錯誤で学ぶことができるように配慮した。
まとめ
(20分)
自分たちが今後2、3回目で製作する飛行機のミッション目標についての発表を行い、今後の課題について確認する。
△見学レポートのまとめや、次回以降の課題について理解し、本日の講義についてファイルにまとめた。

◎次回は学校での製作となるので、次の回の連絡を行った。

授業の感想・メモ

  • 見学時には、実際の風洞の中で風を体験するなど、体で感じながら飛行機の試験の実態について知ることができた。本物の飛行機が離着陸する瞬間を見れた生徒もおり、お昼休みを利用しながら見学レポートを作成することができた。
  • 講義では、難しい場面もあったが、知識の羅列ではなく、考え方の面白さなどを実際に計算しながら行ってくださったため、実際の計算まではできないにしても、計算式で、試験機の評価ができるなどの大まかな流れを知ることができたと思われる。翼の形や胴体の形などのことについても、ポイントをしっかりメモを取りながら講義を受けることができた生徒もおり、飛行機を実際に製作する際の大きなヒントをいただくことができた。

第2回目/全3回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>

 1回目の講義で、学んだ原理をもとに、実際に規定の中で飛行機を作成し、試験飛行を繰り返しながら、試行錯誤学習を行うことを目標とする。講義で学んだ原理からどのように工夫すべきかを、理論的に考えられることが理想であるが、感覚としての経験的な試行錯誤することで、最終的に原理に結びつくように積極的に取り組むことをねらいとする。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
                       
指導上の留意事項
          
導入
(10分)
前回の講義資料をもとに、飛行機の原理を復習する。
講師より出されたミッション目標を確認し、目的を知る。
△前回の講義資料を復習し、飛行機の基本的な形や、どのような原理で飛行するかなどの確認を行う。
 また、今回のミッション目標、使用できるものの確認を行う。
展開
(200分)
実際にダンボールを使って飛行機を製作し、試験飛行を繰り返す。

原理と実際、製作段階での難関をどのように工夫することができるかを考えながら作業を行う。
●材料は段ボールのみであること

●主翼は20cm以上であること

●単3の電池を荷物として積み、高いところから飛ばして最も遠くまで飛ぶ飛行機を製作すること

△以上の条件下で、実際にダンボールを使って、試作1号機を作り、高いところから飛行させ、どの軌跡がどのように滑空したかによって、どのような工夫を加えたらいいのかを考察する。

◎講師の浅野氏にアドバイスをいただきながら、生徒ともに考え、どのような形にすると、飛行軌跡が変わるのかを試行錯誤しながら支援する。生徒の試験機の飛び方について、動画記録し、生徒との飛行検証に使うことで、改良点のヒントを与えた。
生徒が感覚だけでなく、体験的に得たものが、講義での原理と結びつくことに気づかせる支援を行う。
まとめ
(30分)
本日の試作1号機と、最終飛行機での改良の過程と、試験飛行から得られたデータより、どのような工夫をこれから加えていくことが適当か、などの考察を行う。
△試作1号機からの改良の過程等をレポートにまとめ、自分の飛行機の試行錯誤の過程をまとめる。最新機での改良点をさらに考察し、次回の製作時間にどのような工夫を行う予定かを書き記し、次の目標を明確にする。

◎生徒の改良の過程について、それぞれの生徒へ復習を行い、忘れてしまった部分に関しては、撮影した動画を振り返る等の支援を行う。
何度も試行錯誤することで、その思考の過程が理論的であるのかを、文字にすることでまとめる。体感的な試行錯誤にとどまらないように、理論とどのように結びつくかについて考察できるようにレポートを記述させる。

授業の感想・メモ

  • 前回の講義から、しばらく時間が空いてしまったこともあって、講義内容を忘れてしまっていたり、理解できていない生徒が目立ったため、製作に関しては不安要素があった。試作1号機においては、感覚的な製作が目立ったが、飛行試験を行うと、どのようにしたらどのように飛ぶのかなどを、理論的に考えることができるようになっていったように思う。講師の浅野氏の支援により、理論的に改良していくと、その結果について評価をすることができ、更なる改良へとつながっていくことができた。次回の最終回における最終改良と、飛行評価が楽しみとなった。

第3回目/全3回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>

 今回、最終改良を加えた飛行機を実際に校内フリースペースで、滑空させ、一人3回までの飛行で、どの飛行機が最も長い距離を飛ぶことができるかを競う。このことで、自分の飛行機の特徴はもちろん、ほかの飛行機の特徴や、どのような点が長所・短所となっているのかについて考察する能力を養う。
 また、講師の方から、最終飛行の評価を一人ひとりにしていただき、ディスカッションすることで、自分の理論について客観的に分析する力をつける。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
                    
指導上の留意事項
導入
(120分)
前回までに製作した飛行機の試験飛行をフリースペースで行い、最終調整と発表に向けた準備を行う。
△製作した飛行機をフリースペースで、試験し、微調整を行う。

◎安定した飛行のための原理などについて、生徒と共に考察し、次の工夫をどのようにすべきかを導き出す。

△最終飛行機に到るまでの経緯を、プリントにまとめ、発表時の資料作成を行う。
生徒が自ら考えて、工夫を行うことができるように注意する。
展開
(90分)
実際にフリースペースで1人3回の飛行を行い、飛行距離を測定する。互いに役割を分担し、協力して作業を行う。

講師である穂積さんの製作してくださった飛行機の飛行を見学する。
△協力して飛行競技を行う。互いの飛行機の特徴と飛行形態について観察を行う。




△講師の方の飛行機の飛行形態を見学する。
一人ひとりの飛行機の形の違いにより、飛行がどのように変化するかを、友人の飛行機の結果を観察することで考察できるように留意する。
まとめ
(30分)
競技結果を発表し、1位から順に一人ひとりの飛行機の特徴と飛行結果について発表を行う。
△製作した飛行機の改良の過程と最終結果、その結果となった考察を発表する。

◎改良の過程での補足を行い、生徒が製作の過程を整理できるように促す。

△講師の方々の講評を頂き、自らの飛行機の結果について、初回の講義で教えていただいた理論に基づくものだということを理解する。

△友人の発表を聞き、それぞれの飛行機の特徴について理解する。
理論と結果が結びつくことについて、もう一度初回の講義に振り返ることができるように留意する。
自分以外の飛行機の特徴についても積極的に考察できるように促す。

授業の感想・メモ

  • 実際に飛行機を飛ばしてみることで、自分の作った飛行機の特徴を振り返ることができた。製作の段階で初回の理論に基づいて設計している生徒は少なかったが、感覚的に製作したものも、その飛行の特徴をみることで、結果的に理論に結びつくことが理解できていたと思う。1人ひとりの飛行機について、実際の飛行機を設計させている研究者の方に講評をいただくことができたのは、生徒にとって大きく刺激を与えることができたと実感している。

群馬県・群馬県立館林商工高等学校

授業連携実績一覧

このページのTOPへ