授業連携

飛行機の設計ミッション

栃木県・栃木県立小山高等学校

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概要

<全授業を通した指導目標>

最先端の技術開発に携わる研究者から講義を受けたり、ディスカッションしながら、自分達のミッション目標をきめ飛行機の設計製作を行い、さらに、地上での飛行機検証を行う。製作・検証・改良の過程を通じて探究心をさらに高揚させる。

<対象>

高校1年生3名、2年生9名 合計12名

<期間>

平成20年8月8日~平成20年9月15日

<区分>

SPP(サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト)

構成表

実施日
時間
形式
人数
授業内容
1
300分
見学
11名
JAXA調布航空宇宙センター 施設見学
・2m×2m低速風洞
・飛行機シュミレータ
・実験用飛行機
講義
「飛行機の基礎を学ぼう」
飛行機のしくみについての講義により、揚力や物体自体の安定性の理論について学ぶとともに、模型飛行機の製作を行い、製作や飛行試験の際の注意や試験による改善方法について学ぶ。飛行機設計ミッションについて検討する。
講師:穂積 弘毅
(JAXA研究開発本部飛行技術研究センター 主任研究員)
副講師:小河 昭夫
(JAXA総合技術研究本部 業務推進部業務課広報 航空プログラムグループ企画推進室 広報)
副講師:木下 円
(JAXA総合技術研究本部 業務推進部業務課広報 航空プログラムグループ企画推進室 広報)
支援:浅野 眞・宮原 有香
2
240分
授業
12名
・飛行機制作
飛行機の設計を行い、ダンボールを用いて試作飛行機を製作する。飛翔実験を行い、試作飛行機の飛び方を観察し改良点を検討する。試験飛行機の飛翔距離の測定や飛行の様子を観察し、試作飛行機の課題を確認し、改良飛行機の設計を行う。
支援:浅野 眞
3
240分
実験
12名
・飛行試験
※製作した飛行機を実際に飛ばし、距離や滞空時間などを計測する(体育館にて)
講師:穂積 弘毅
(JAXA総合技術研究本部 飛行システム技術開発センター 主任研究員)
指導:小河 昭夫
(JAXA総合技術研究本部 業務推進部業務課広報 航空プログラムグループ企画推進室 広報)
指導:木下 円
(JAXA総合技術研究本部 業務推進部業務課広報 航空プログラムグループ企画推進室 広報)
支援:浅野 眞・宮原 有香

第1回目/全3回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
講座を始めるにあたり、航空宇宙技術センターを見学し、航空宇宙開発に関する基礎的な知識を得る。また、飛行機のしくみについての講義により、揚力や物体自体の安定性の理論について学ぶとともに、模型飛行機の製作を行い、製作や飛行試験の際の注意や試験による改善方法について学ぶ。飛行機設計ミッションについて検討する。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(120分)
航空技術宇宙センター分室での施設見学と模擬体験
1.飛行シュミレーション体験(固定式コックピットシステム・回転翼機型コックピットシステム)により、現実の飛行機の操縦感覚を得る。

2.2m×2m低速風洞の内部見学と風の体験

3.実験用飛行機の見学
△メモを取ったりデジタルカメラで撮影したりして、記録を行いながら積極的に体験する。

◎生徒と共に体験し、また、生徒が積極的に体験できるよう質問を促す。
全員が積極的に、また均等に体験できるように配慮した。
展開
(150分)
講義「飛行機の基礎を学ぼう」
講師:穂積 弘毅
飛行機の構成
・揚力発生のしくみ
・力と釣合い
・安定性
・操縦法などについて

実習「教材用キットを用いての飛行機製作と飛翔実験」
講師:穂積 弘毅
副講師:小河 昭夫
副講師:木下 円
支援:浅野 眞・宮原 有香
△用意されたレジュメに従い、必要事項をメモ取りながら学習を行う。
揚力の計算式を用い、各値を代入して理論値を求めた。

◎難しい内容について補足を行い、また、質問を促した。

△キットの飛行機を作ることで、飛行機の基本的な構造と飛ばし方、また改良のポイントと注意点について実践的に学習した。

◎生徒と一緒に飛行機を製作し、飛翔実験を行った。
難しい内容に対しての生徒の理解度を確認するため、机間巡視を行った。


遠くに飛ぶためのポイント、まっすぐに飛ぶためのポイント、揚力が生じている飛び方について気づかせる。
まとめ
(30分)
次回からの目標を確認する。
△本日の講義と実習のまとめを行い、次回からの飛行機設計に関して課題と条件を確認する。                 

◎本日の講座のまとめと次回以降との関連を説明し、生徒に目標を意識させる。
次回まで時間が空いてしまうため、本日の学習内容の復習を促す。

授業の感想・メモ

  • 交通事情のため、JAXA航空宇宙技術センターへの到着が遅れてしまい、「センター紹介ビデオと展示室見学」が省略となってしまったことは残念であった。施設見学と模擬体験は、生徒の興味関心を高揚させる導入として大変効果的であった。特に、新しい搭載機器や運航方式などの研究開発に活用されているコックピットシステムでの飛行シュミレーションは、大変刺激的な体験であった。飛行機の基礎に関する講義内容は難しい内容もあり、特に、「揚力の求め方の計算」など、あまり理解できている様子ではなかった。時間をかけて説明を頂いた内容であり、このあたりが、次回以降の飛行機設計・製作にどのように影響するか心配な点である。

第2回目/全3回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
第一日目の講義や実習体験をふまえて、飛行機の設計を行い、ダンボールを用いて試作飛行機を製作する。飛翔実験を行い、試作飛行機の飛び方を観察し改良点を検討する。
試験飛行機の飛翔距離の測定や飛行の様子を観察し、試作飛行機の課題を確認し、改良飛行機の設計を行う。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(60分)
課題と条件を確認し、ボール紙に設計図を描きモデル飛行機を製作する。
△ダンボールでの製作の前に、ボール紙に設計図を描き簡単に製作して飛行させる。

◎課題・条件を黒板に書き、本日の目的を確認させる。
前回の講義内容を確認しながら設計に取り組ませる。
直ぐに取り組めるようボール紙にまず設計を行わせる。
展開
(210分)
ダンボールで飛行機設計を行い、「製作→飛翔実験→改良」を繰り返す。

設計課題「単三電池2本を積んで、できるだけ遠くに飛べる、飛行機(グライダー)をつくる。」

設計条件「主翼の幅が20cm以上あること、材料は支給されたダンボール紙を使用すること」
△ボール紙での製作を参考に、ダンボールで各部品(胴体・主翼・尾翼)を設計し、カッターで切り取り、木工用ボンドで組み立てる。また、乾電池2本を荷物として飛行機に乗せ、教室内で飛ばしてみる。改良を繰り返し行い、試作飛行機を体育館で飛ばしてみる。
アドバイザー浅野氏にアドバイスを頂きながら改良飛行機を完成させた。

◎生徒の製作や飛翔実験を観察しながら、問題点や改良のためのポイントを生徒と一緒に考える。
前回の講義のポイントを思い出させ、考えながら設計させる。「胴体の強度」「ダンボールの目の方向」「飛ばし方」などに注意させる。
「飛ばない飛行機」「まっすぐ飛ばない飛行機」の原因を探り、改良のポイントを考えさせる。
まとめ
(30分)
本日の改良飛行機を一人ずつ飛行させビデオに録画する。
△一人ずつ改良飛行機のポイントを発表し、体育館の2階から飛ばす。
本日の試験飛行を反省し、次回の課題を確認する。                              
◎一人ずつの飛翔の様子をビデオで撮影し、次回への課題確認へ活用する。
「遠くへ飛ばす」ことが目的であることを確認する。

授業の感想・メモ

  • 実際に製作が始まると、設計にかなりの時間をかける生徒が多く、「製作→飛翔実験→改良」を繰り返すはずであったが、なかなか試作第一号が完成しなかった。教室内で軽く飛ばしてみても、ほとんどが「直ぐ墜落」「胴体や主翼の破損」の状態で、前回の学習の成果が活かされていない状態であった。本日最後の体育館での飛翔実験では、12人のうち、揚力が感じられながら飛んだのはわずか3機で、残りの飛行機はほぼ墜落という結果であった。最終日までに、どの程度挽回し、飛翔距離が伸びる飛行機を製作できるか課題が残った。

第3回目/全3回『授業記録シート』

<今回の授業の指導目標>
 前回の試作飛行機の段階で、設計や製作に多くの問題が残っていることから、もう一度、第一日の講義の内容や模型飛行機の製作を確認させ、理論に従った設計・製作を目標とさせる。理論に従った改良を意識させ、完成飛行機のへと微調整を行う。講座のまとめとして、完成飛行機の発表会を行い実際に飛翔させる。各飛行機の飛翔距離を測定することで、お互いの飛行機の評価を行う。

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(30分)
前回製作した試作飛行機の問題点と改良のポイントの確認
◎講師の穂積氏に御指摘頂いた問題点について生徒に伝え、改良型飛行機を製作する上でのポイントを意識させる。

△自分の製作した飛行機の問題点と改良のポイントを確認する。
ほとんどの飛行機についての問題点
「主翼が小さすぎる」
「重心が後ろ過ぎる」
「胴体が弱すぎる」
展開
(240分)
改良飛行機の改良・飛翔実験・問題点の把握を繰り返し、問題点の解消とより遠く飛ぶための改良を行う。


飛翔コンテストとして、完成飛行機を一人2回ずつ飛翔させる。
△講師のアドバイスを参考に、「ダンボールの効率良い利用」「重心の位置の確認」「揚力を感じる飛行機の構造と飛ばし方」などを意識して改良を重ねる。
講師の穂積氏が製作した飛行機とその飛翔を観察し、改良の参考とする。

◎第一日の講義で理解が十分でなかった「揚力の計算式」を確認させ、実際に計算を行うことで理解を深めさせる。


△前半後半の2つのグループに分かれ、一人2回ずつ、アリーナ2階から飛行機を飛ばし、飛行距離を競う。
飛行距離測定,滞空時間測定,記録など役割分担して協力する。 

◎効率よく、また公正にコンテストが行われるよう指示する。    
改良・実験を繰り返し行うよう作業を急がせる。
理論に従って製作することが、実際の飛行に大きく影響することに気づかせる。

今回の目的は、「遠くへ飛ばすこと」であり「滞空時間の長さ」ではないことを始めに確認する。
まとめ
(30分)
表彰式とまとめ
コンテストの成績発表と成績上位者に対しての表彰を行う。
講師による講評とまとめを行う。
△講師の先生の講評を聞き、またアンケートに答えることで、今回のそれぞれの活動について振り返る。

◎今回の講座に関するアンケートに回答し、また生徒にもアンケートを実施する。
今回の講座で、科学の理論が実際の実験で活かされていることが体験できたことを認識させる。

授業の感想・メモ

  • 第3日目の前に、前回の最後に録画した各飛行機の飛行の様子を講師の穂積氏に見ていただき、問題点を指摘していただいた。このことを反省材料に、もう一度設計から考え直し製作を行った。生徒は、飛行機の製作・飛翔実験・改良を繰り返す中で、飛行機の重心の位置に問題があることを実感するようになり、また、材料のダンボールを効率よく利用し、前回よりも大型の飛行機を作ることで、「遠くまで飛ぶ飛行機の特徴」について理解を深めているようであった。また、何度か飛行試験を行いながら穂積氏のアドバイスをいただき、飛行機の構造と共に、飛ばし方のこつも体得しているようであった。最後に行った飛翔コンテストでは、優勝は、30m弱の飛行距離であった。中には、揚力を感じて飛んでいるにもかかわらず、飛翔バランスが悪く、旋回してしまうものがあり。飛行距離ではなく、飛行時間で競ったならば、別の成績順位になっていた。

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