ISEB学生派遣プログラム
【2002年度】第53回 IAF大会
※ 2005年のISEB設立以前はJAXAおよび他機関との協力事業として実施
※ 2004年度以前の実績は派遣当時の参加者報告を原文のまま参考掲載しています。なお使用している写真・文章は、提供者本人の許可を得て掲載しています。
派遣期間 | 平成14年10月13日(日)~10月20日(日) |
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派遣先 | International World Space Congress ・2002(2nd Week) 第53回IAF大会(アメリカ合衆国テキサス州ヒューストン市 George R. Brown Convention Center他) |
主なスケジュール
日付 | 内容 |
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10月13日(日) | 出発→ヒューストン着 |
14日(月) | IAF大会Inaugural Ceremony→COSPAR&IAF大会→Inauguration Night Reception出席 |
15日(火) | COSPAR&IAF大会→Poster Night出席 |
16日(水) | COSPAR&IAF大会→Johnson Space Center及びSpace Center Houston見学→Texas BBQ Hoedown出席 |
17日(木) | COSPAR&IAF大会→Houston大学施設見学→Houston大・ESA共催Student Party出席 |
18日(金) | COSPAR&IAF大会→夕食会またはIAF Gala Dinner & IAC Award出席 |
19日(土)~20日(日) | 帰国 |
参加者の声「第53回IAF大会に参加して」
※ 下記執筆者の所属等についてはIAF大会参加時(平成14年10月現在)のものです。
[その1] 慶應義塾大学 経済学部
2年 山本 浩司
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僕が今回のIAF大会学生派遣プログラムに応募したのは、昨年8月筑波スペースセンターで宇宙航空研究開発機構(NASDA)主催によって行われたサマースクールで出会った仲間から教えてもらったのがきかっけでした。まだ学部2年で指導教官も専門も持たず推薦書一つ手に入れるのにも本当に苦労した自分が選抜試験に合格できたのは理解ある協力者が周りにいてくれて支えてくれたおかげでした。
そして、僕がこの学生派遣にあたって持った主な目標が以下の2つです。一つは一般的に認知されている「宇宙開発=理系のみが活躍する分野」といったイメージを一新したかったことです。確かに宇宙開発というフィールドにおいて高度な専門知識を持った理系の人たちが最先端技術を研究しているのは周知の事実ではあるけれど、今回の派遣によって今後宇宙開発が発展していけばいくほど、その発展に比例して社会科学を勉強してきたいわゆる文系の人間が必要になってくるのではないかと考えさせられました。つまり、将来の宇宙開発の土台は自然科学、社会科学どちらを欠いても成立し得ないものになると確信させられたのです。IAF大会前の時期は、政治や法律や経済や教育などさまざまなことを学んできた人たちがどのように宇宙開発に携わっていけばいいのか、そもそも関係すること自体が可能なことなのかどうか、ということを考えていたので今回の派遣はとても貴重な体験になりました。
二つめはこの派遣によって一番得たいものとして、さまざまな人との出会いを本当に楽しみにしていました。もちろん、派遣期間中にセッションに参加して最新の研究を聴講することは非常に有意義なことだと思います。実際、自分もたくさんのセッションを通して体験したことはとても勉強になりました。
しかし、世界中から「宇宙」に興味を持って集まってきた様々な専攻をもった人に出会い、刺激を受けるのは知識や情報といったものを超える素晴らしいものを僕たちに与えてくれたと思います。IAF期間中、特に同じ日本からの派遣生や関係者の皆さんに出会い、たくさんのことを教えてもらいました。これは決して、ただ勉強して得られるようなものではないと思います。
さて、IAF大会期間中の内容はといえば、朝早くから1日が始まり、会場に向かい午前午後のセッションやイベントを聴講して、展示会場などを見て(大量のグッズを集めながら)、夜はパーティーなどの集まりがあるといったかんじでした。滞在したホテルでのパーティー、展示会場での立食、テキサスBBQ、欧州宇宙機関(ESA)の学生主催のStudent party、野口宇宙飛行士たちが飛び入り参加した最後の夕食、そしてジョンソンスペースセンター見学と盛りだくさんの内容でした。その中でも、特にStudent partyは自分にとって本当に素敵な思い出となりました。それは、この日に21回目の誕生日を迎え、世界中から集まったたくさんの人たちに歌をうたってもらったりして祝ってもらえたからです。これは、本当に嬉しかった。
そして今回の派遣では、同じ日本からの多くの学生がそれぞれの人生の岐路を迎えている時期でもありました。自分にもすぐにその時はやってきます。テキサス最後の夜に夕食の席で野口宇宙飛行士と話した「架け橋」になれるような人間に少しでも近づけるように自分を磨いていきたいと思います。
最後に、この派遣を素晴らしいものにしてくださった NASDAの伊藤さん、JSFの安藤さん、関係者の皆さん、日本人派遣学生のみんなにあらためて感謝したいです。このプログラムに参加できたことは自分にとって自慢であり誇りです。この経験を今後も役立つようにしていきたいです。本当にありがとうございました。
[その2] 東京大学大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻
修士課程 1年 東 伸幸
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IAF大会は僕にとって今までで一番宇宙を身近に感じた経験になりました。
特に今回の派遣はヒューストンということもあり、訓練中の野口宇宙飛行士、土井宇宙飛行士とも会える機会もあり、直接宇宙のお話を伺えました。大会会場では月を歩いたジョン・ヤング氏や各国の宇宙飛行士、また世界の宇宙開発をリードする研究者の公演や発表を毎日のように聞け、まさに宇宙三昧の日々でした。小学生の時から宇宙に憧れ、大好きな宇宙開発の勉強をし、現在スペースプレーンの研究をしようとしている僕にとって、夢のような一週間でした。
IAF大会は、僕にとっては初めて出席する国際学会であり、僕の英語力で果たして十分な成果を得て帰ってこれるのか、という一抹の不安がありました。しかし、渡米前から仲良くなった仲間とあれこれ話しているうちに、不安は消え去りいつしか、どうやってIAF大会を楽しもうかという気持ちに変わっていました。
セッションでは、自分の専門分野はもちろん、それにとらわれず他の分野の発表にも参加しました。これにより、自分のやろうとしている研究は世界的にどういった位置づけにあり、今後どう展開していくべきかといった方向性が得られました。また、宇宙開発は技術的な課題と同時に、政治・経済の情勢や社会のニーズなど、取り巻く環境も見据えて行っていかなければならない、という国際的な視野の必要性にも気づかされました。
大会期間中、ESAのStudent Squareに所属研究室の行っている研究のポスターを展示させていただきました。ポスターについて発表する時間はほとんどありませんでしたが、数人から研究に対する貴重な意見を伺うことが出来ました。日本からは、僕の他に何人か参加し、ヨーロッパの学生は多数参加していましたが、どのポスターも内容が充実していることはもちろんのことデザインや主張がハッキリしていて分かりやすく、かなり完成度が高かったです。
この派遣を通して最も大きな成果は、人との出会いでした。派遣学生として参加した学生、現地で出会った学生、更には欧州からの派遣学生達や各国の研究者と出会い、将来同じ宇宙開発という舞台で仕事をするであろう仲間たちと、次世代の宇宙開発について語り合えたことが最も大きな成果であったと思います。特に、同行した仲間とは今後も研究やプライベートで生涯の良き仲間となることと思います。
最後になりましたが、今回の派遣で出会えた学生の皆さん、派遣前から色々とお世話になったJSFの安藤さん、スペーススクール、今回の派遣とお世話になったNASDAの伊藤さんをはじめ、派遣プログラムを支えてくださった数多くの方々、本当にありがとうございました。
[その3] 慶應義塾大学 環境情報学部
3年 海上 悟
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今回の派遣プログラムは私にとって、大変貴重な体験であり、今後の目標や指針を立てることができたものだった。得たものが大きすぎて、あふれるほどの思いがある。来年も是非IAF大会に参加したいと思っている。
私の研究テーマは国際宇宙法である。国際法の中でも比較的新しい法律なので、一般的になじみが少ない。そのような法律があることさえ知られていないことが多い。法学部ではない私にとって、法律をやることにはじめ抵抗があったが、開発という観点からこの宇宙法を見ていくことにしている。
今回のWSC2002の中で一番楽しみにしていたのが、国際宇宙法学会(IISL)の学生による模擬裁判決勝である。決勝を見てみると、英語に難はあったものの雰囲気を掴むことはできた。緊迫した雰囲気、発言者の訴え方は本当に裁判をしているようだった。私にとって、実りある時間を過ごすことができた。
宇宙開発を担っていく上で、宇宙法は重要なテーマである。しかし、そこには大きなジレンマが存在する。現在の宇宙開発は、宇宙の憲法と呼ばれる宇宙条約を基本として行われている。その後いくつかの法律(条約)がつくられたが、今、新しい法律がつくられる、又は改正されるという計画はない。それは、各国の利害関係が働いているからである。それに加えて、宇宙開発が無秩序に進まないためにも法律は必要だが、厳しく規定しすぎても宇宙開発がかえって進まないといった状況になってしまう。それも宇宙法がなかなか発展しない原因の1つだろう。
今回の宇宙法セッションに参加し、学んだことを今後の自分の研究、そして日本の宇宙開発に生かせるようにしたい。日本の宇宙法に関する活動を盛んにしていけたらいいと思う。もちろん、法律だけ知っていても宇宙開発を担っていくことはできない。技術や経済に関することも学んでいく必要がある。幅広い知識が要求されるからだ。そのことも感じることができた。それにもまして、英語は私の最重要課題である。
JSF、NASDAの関係者の方々と一緒に行った仲間に深く感謝する。今後も宇宙開発を担う一員として、大きな使命感とともに努力していきたい。
ESA Student Outreach Programへの協力
"Scientific Poster展"への参加
本プログラムでは、ESAのIAF学生派遣事業に協力し、展示会場内に設けられたESA Student Squareでの"Scientific Poster展"に参加し、大会参加期間中、日本人学生の研究活動紹介の機会を提供しました。本年は、派遣学生の中から3名(4作品)が参加しました。
- 東京工業大学大学院総合理工学研究科 人間環境システム専攻 青木 宏文
1) Human spatial orientation in virtual weightless routes(共著)
2) The effect of the interior design of virtual weightless environments on spatial orientation - 神戸大学大学院自然科学研究科 構造科学専攻 田口 優介
Near-Infrared Observations of the H II Region S140 - 東京大学大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻 東 伸幸
ATREX Engine for TSTO Spaceplane
国際宇宙法学会(IISL)への協力
本プログラムでは、IISL主催の「マンフレッド・ラクス宇宙法模擬裁」に協力し、アジア・太平洋地域予選通過チームの学生2名をIAF大会に派遣しました。本年はオーストラリア・ニュー・サウス・ウェールズ大学(Victoria-Anne Davidson, Caroline Ang and Johanna O'Rourke and coached by Mr. Steven Freeland)が、WSC2002開催中に行われた本選に参加し、その結果、米・ジョージタウン大学チームが優勝、ニュー・サウス・ウェールズ大学チームは、成績2位と健闘、最優秀書面M. Galloway賞を受賞しました。