ISEB学生派遣プログラム
【2008年度】第59回 IACグラスゴー大会
派遣期間 | 平成20年9月27日(土)~10月5日(日) |
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派遣先 | 英国・スコットランド・グラスゴー市 (SECC: Scottish Exhibition and Conference Centre)他 |
主なスケジュール
日付 | 内容 |
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9月28日(日) | ISEB学生プログラムオリエンテーション・ISEB Heads of Education / Students Session・JAXA派遣学生ブリーフィングへの出席およびJAXA学生主催イベントにかかる学生間事前打合せ・準備作業の実施 |
29日(月) | Opening Ceremony・Senior Representatives Q&A Session・IAC2008プログラム(テクニカルセッション・プレナリーセッション・ハイライトレクチャー)・Welcome Receptionなどへの出席 |
30日(火) | IAC2008プログラム(テクニカルセッション・プレナリーセッション・ハイライトレクチャー)等・ISEBランチイベント(JAXA堀川理事によるレクチャー)への出席およびJAXA派遣学生主催イベントを開催 |
10月1日(水) | IAC2008プログラム(テクニカルセッション・プレナリーセッション・ハイライトレクチャー)およびISEBランチイベント(NASA・ESAによるレクチャー)等へ出席 |
2日(木) | IAC2008プログラム(テクニカルセッション・プレナリーセッション・ハイライトレクチャー)およびISEBランチイベント(CSAによるレクチャー)・学生ポスターセッション等へ出席 |
ISEB学生派遣プログラム(第59回IACグラスゴー大会)(IAC2008)ISEB学生プログラム
本プログラムは、ISEB(国際宇宙教育会議)参加機関であるESA、NASA、JAXA、CNES、CSA(以下、「宇宙5機関」という)間協力の下に、学生への宇宙分野における知識・理解増進の機会提供、学生を交えた学術・研究交流の奨励、国境や専門領域の違いを越えた友好の輪を広げることを目指してIAC会期中に実施される学生のためのプログラムです。
9月28日(日)には、各機関よりの派遣学生対象のオリエンテーション、Heads of Education/Students Sessionが開催され、各宇宙機関より派遣された約80名(JAXA:20名・ESA:26名(内CNES学生1名を含む)・CSA:20名・NASA:17名)の学生が参加しました。
オリエンテーションの様子
HoE/Students Session(JAXAより平林宇宙教育センター長が参加)
International Student Zone ; ISZ(国際学生ゾーン)
ISEB学生プログラムの一環としてIAC2008 展示会場の中に学生のための研究活動成果発表および人材交流の場としてのInternational Student Zone ; ISZ(国際学生ゾーン)が設置され、学生対象の様々なプログラム、Senior Representatives and Students Q&A Session・Poster Session・ランチイベントとして宇宙5機関から派遣された専門家による各種レクチャーなどが実施されました。
以下、ISEB学生プログラムの様子・参加されたJAXA派遣学生の皆さんからの感想を報告します。
Senior Representatives and Students Q&A Session
本セッションは、学生の質問に宇宙5機関の代表者が直接回答するという世代を超えた貴重な直接的会話の機会としてユニークなプログラムであり、ISEB学生の日本代表学生として慶應義塾大学大学院の小林さん・楠田さんがNASAのグリフィン長官やJAXAの樋口技術参与に対し、直接質問を行いました。小林さんからの報告は次のとおりです。
※ 執筆者の所属・学年等についてはIAC2008グラスゴー大会参加当時(平成20年10月現在)のものです。
慶應義塾大学 大学院 理工学研究科 開放環境科学専攻 空間環境デザイン工学専修
吉田・高橋研究室所属 修士1年 小林 雄太
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私は、本派遣プログラムに参加するにあたって、次のようなテーマを掲げました。
「宇宙開発・宇宙輸送システムの未来」
このテーマの設定には以下に示すような背景があります。はじめに、宇宙輸送システムの未来を広い視野で見つめたいと思ったことが挙げられます。これは、私自身の研究テーマが次世代型宇宙輸送システムコンセプトである水上水平離着陸型宇宙往還機の実現性を検証するためのモデル機体を対象とした飛行制御システムの設計といった内容であることに起因します。次に、世界各国の今後の宇宙開発の動向をしっかりと知ることが、自分自身の将来像への一歩に繋がると感じたことが挙げられます。ここで、私が思い描く将来像は、確固たる技術を基盤とし、国民の生活を豊かにすることができるような宇宙の利用方法または、そのために必要となる宇宙輸送に関するプロジェクトを立ち上げ、マネジメントする立場になること、国際的に活躍することができる人材になること、自分自身の経験や技術を生かし、小中高生に対する宇宙授業を通して、様々なことを伝えることができる人になること、といったものです。
こうしたテーマを掲げて臨んだIAC2008においては、様々な刺激を与えられることとなりました。本報告書では、その中でも宇宙機関代表セッションに絞って報告したいと思います。宇宙機関代表セッションとは、NASA、ESA、JAXA、CSA、CNES各機関の理事や長官といった代表者に対して、各機関の代表学生が直接質問をし、答えて頂くというものです。NASA、ESA、JAXA、CSA各機関派遣学生からは3つのテーマに関して80を超える質問が寄せられており、計10個の質問が採用されました。幸運にもその中に私の質問が2つ選ばれたため、私は、JAXA樋口技術参与、NASAグリフィン長官のお二人に対して、「将来の宇宙探査やその他宇宙活動における学生の役割」という議題に関して、JAXA派遣学生代表として、直接質問させて頂く機会を与えられました。私自身の考えに対して、お二人の率直な意見を述べて頂くことができ、これ以上ない経験をさせてもらったことを感謝しています。しかし一方で、緊張感や語学力不足からグリフィン長官の回答の全てを聞き取ることができなかったことをとても悔しく思っています。代表質問者としての経験は、今後世界的に活躍する人材へ成長していくための大きな一歩であると感じると共に、語学力という自分自身の今後の課題をしっかりと実感させられる素晴らしい機会であったと感じています。
今回の貴重な経験を絶対にただの思い出にすることなく、一歩一歩自分の理想とする将来像へと近づくための原動力として、より一層の努力をしていきたいと思っている次第です。そのために、今回新たに出会った宇宙開発へこれ以上ない熱き思いを抱いている仲間たちと共に、今まで以上に日々研究活動に切磋琢磨していくことで、将来に生きる技術を取得していきたいと思っています。また、派遣生として得た経験を次の世代に伝えていくことで、宇宙教育活動の一端を担っていきたいと考えています。
最後になりますが、本派遣プログラムで出会った多くの仲間や、常に身近でサポートしてくださったJAXA関係者各位に、この場を借りて厚く御礼申し上げたいと思います。本当に貴重な経験をありがとうございました。
JAXA派遣学生主催イベント
今年は初の試みとして、JAXA派遣学生の自主企画・運営により、9月30日(火)のランチタイムに、JAXA派遣学生主催イベントとして、日本の学生活動であるCanSat、小型衛星、ライフサイエンス若手の会、派遣学生所属の研究室の紹介および「折り紙」のデモンストレーションによる日本の伝統文化紹介と共に宇宙構造物への技術の応用についての説明を実施しました。当日は、約100名が参加し、好評を博しました。グラスゴー現地で、本プログラムの総合調整役を務めた筑波大学大学院の長谷川さんの感想は次のとおりです。
筑波大学 大学院 システム情報工学研究科 構造エネルギー工学専攻 博士前期課程 1年
阿部・金子(旧姓藤原)研究室 長谷川 浩司
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「It was amazing!」自分達のISZでのパフォーマンスを見てくれていたNASAの職員の方のこの言葉に自分達の成功が集約されていると感じた。2日前に初めて知り合った人たちと短期間で取り組んだにもかかわらず成功したのは、1人1人が貢献意欲を発揮したからこそだと思う。
特に日本人は1人では目立ちたがらない人種かもしれない、しかし、チームで、和で動くことで最大限の力を発揮する人種であることは自信を持って世界に発信できる。そして今以上にこのチームで最大限の成果をだすことこそが今後のより発展した宇宙開発の目指すべき方向であることを踏まえると最高の経験が出来たと思う。今後この経験を生かして、文字通りの国際協力をして、自分達がこれからの世代を担っていくことで宇宙開発に貢献していきたい。
CanSat活動の紹介
JAXAは、ISEBの共同事業のひとつである「CanSat開発・実験活動」を支援し、CanSatのスペシャリストとして、東京工業大学の赤城さん、九州大学の上津原さんの2名をIAC2008に派遣し、JAXA学生主催イベントの中で、日本のCanSat活動紹介・実機の展示、説明・インドアでのデモンストレーション等の活動を実施しました。以下、本活動を通じて感じたことについて赤城さん、上津原さんに報告していただきました。
東京工業大学 工学部
機械科学科 4年 赤城 弘樹
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2008年はCanSat活動の10周年記念です。この記念すべき年に、学生代表としてIACという素晴らしい場でCanSat活動の紹介をさせて頂いたことは、非常に光栄でした。
近年日本におけるCanSat活動は拡大傾向にあり、非常にさかんになっています。国内での発展を見ていて、CanSatが海外の方にどれだけ受け入れられているのかとても気になっていました。IACでの発表は楽しみな半面、心配な気持ちもありました。しかし発表を終えた後にスペインの方が「ヨーロッパの学生は日本のCanSat開発にいつも刺激を受けている」と言ってくれました。この言葉を聞いた際に、先輩方が作り上げてきたCanSat活動は世界に広まっているものであり、日本が誇れる活動だと感じました。そして、これからも先輩方が築き上げてきたものをしっかりと継承し、発展させていかなければいけないという思いが強くなりました。
長年にわたりCanSat活動を支えて下さっている中須賀先生やUNISECの皆様方に心より感謝しています。今後も日本のみならず世界中でCanSat活動が活発になることを願っています。
九州大学 工学部 機械航空工学科 宇宙機ダイナミクス研究室
学部4年 上津原 正彦
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IACという大舞台を通じて、日本を始めとして世界で盛んなカンサットプロジェクトの価値や重要性について伝えるという目的を持って私はこの学生派遣プログラムに参加した。東工大の赤城君と共に入念に準備を進めてきたカンサット活動の紹介の発表は、IACでの本番を無事終えることができ、発表後は、ヨーロッパで私と同じようにカンサットプロジェクトに参加されている学生の方や、発表を通じてカンサットに興味を持って下さった方々から沢山のレスポンスを頂くことが出来た。特に、ヨーロッパの「カンサット屋」とのやり取りを通じて、海外にも多くの同業者がいるということが実感出来て、今後カンサット活動をよりグローバルに繋がり合った魅力的なものにしていかなければならないという新たな使命を感じた。
CanSat活動紹介の様子
日本文化の紹介
JAXA学生主催イベントにおいては、東京工業大学大学院の佐藤さん・日本大学大学院の山崎さんのオリジナル企画として、「折り紙」のデモンストレーションによる日本文化紹介、またその技術が宇宙構造物にも応用されていることが紹介されると共に、ミウラ折りのミニ体験イベントも実施されました。佐藤さん、山崎さんからの報告は次のとおりです。
東京工業大学 大学院 総合理工学研究科 人間環境システム専攻
修士課程1年 佐藤 泰貴
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各機関から派遣された学生が自分自身を世界に発信し、また、交流を図ることを目的として、IACの展示会場に国際学生ゾーン(ISZ)が設けられた。JAXAの派遣学生はこのISZにおいて学生イベントを行い、CanSatの活動紹介、日本の学生たちの活動の紹介、日本文化の紹介などをすることになった。私は宇宙構造物が専門なので、宇宙構造物に日本文化である折り紙が生かされていることを、世界中の研究者や一般の方にも知ってもらおうと思った。
まず、折り紙と宇宙構造物との関係についてプレゼンをした後、来場してくださった方々全員にミウラ折りや、回転二重折りというソーラーセイルの折り畳みパターンのキットを配り、折っていただいた。その場にいた方々は真剣になって折り始め、中にはイベントが終わってからも、完成するまでチャレンジしてくださった方もいた。チャレンジの合間には、「ほら、できたよ!」「面白いね!」という声があがっていた。私は世界の研究者や一般の方々の好奇心の強さに驚き、それと同時に、自分が専門以外の様々なことに対していかに無関心だったのかということに気付かされ、反省した。イベント後は、ISZで折り紙と宇宙構造物に関する展示をさせていただき、通り掛かったみなさんに興味を持っていただくことができた。世界の方々にこれほど興味を持っていただけたのも、一緒に企画をやっていただいた派遣学生や、宇宙教育センターの皆様のご協力があってこそだったと思う。私はIACを通して、協力することの大切さや、人に様々なことを紹介し教えあうことの楽しさ、重要性について学ぶことが出来た。また、国際豊かなIACに参加できたことで、自分自身の存在を再認識することができた。
最後にこのような機会を設けていただいたJAXAの方々に心から感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。
ミウラ折り・折り紙紹介の様子
日本大学 大学院 理工学研究科 航空宇宙工学専攻
修士課程2年 中村・宮崎研究室 山崎 政彦
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日本の文化と学生の活動を伝えたい!そんなテーマに対して、まだ出会ったばかりのIACメンバーで取り組んだ。結果は、会場に用意したモノが足りなくなるくらいの大盛況。100人近くの人が来てくださったそうだ。私は、日本の超小型人工衛星活動の発表と「折り紙と宇宙構造物」というテーマのデモンストレーションを行った。特殊な畳み方の宇宙展開構造物を折り紙で折ってイメージを作るのはこの分野では良く行われていることで、折り目通りに折っていくと宇宙展開構造物が出来上がる。日本で何度か経験のあったこの折り紙+宇宙展開構造物のデモンストレーション。子供達から大人の方々まで、馴染みあるモノが宇宙へつながっている事に本当に驚かれていた。本当に身近なモノが宇宙に続いている。今後は、こんな宇宙を身近にしていく活動がより一層大事になるのかもしれない。
デモンストレーション用の折り紙は自分の研究活動を海外の方々に説明する際にも効果を発揮し、ISZでの活動は本当に有意義なものとなりました。チームとしての取り組み、個人としての取り組み、全てが上手く混ざり合って良い形で表現できたかなと思っています。貴重な経験をさせて頂き本当にありがとうございました。
日本文化紹介の様子
JAXA派遣学生の英国惑星間協会賞(British Interplanetary Society Award)受賞
京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程1年生でJAXA派遣学生である福原始さんが、IAC2008学生セッションで、宇宙空間プラズマ中における波動-粒子相互作用を直接的に捉える新しい衛星搭載ワンチップ観測器の開発について「System Design of One-Chip Wave Particle Interaction Analyzer for Future Space Plasma Observations」と題した口頭発表を行い、その成果に対し、英国惑星間協会賞を受賞されました。福原さんの報告は次のとおりです。
The British Interplanetary Societyはこちら
京都大学 大学院 工学研究科電気工学専攻
修士課程1年 福原 始
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この度IAC2008においてBritish Interplanetary Society Prize for best technical paperという賞を頂いたことを非常に光栄に思います。発表したテーマは学部4年生で現在の研究室に配属されてから取り組んできたもので、その成果が学生賞として認められ頑張った甲斐があったと一層大きな喜びを感じていると同時に、ご指導下さった先生方や先輩に感謝の気持ちで一杯です。
IACでは航空宇宙工学分野のみならず多くの分野の方の話が聞ける学会です。私も電気工学専攻であり「こういった世界もある」と新鮮な気持ちで聞ける話が数多くありました。もちろん偉い先生方からだけではなく、同じIAC派遣学生からもです。そういった貴重な経験ができる機会を持てたこと、そこで発表を行えたこと、素晴らしい賞を頂けたことは、とても恵まれた経験であると思います。これからはその経験を自身の研究活動に活かし、また"宇宙"に関わることの興味深さを子どもたちを含めた多くの方々に伝えられるよう努めていきます。
国際宇宙法学会(IISL)への協力
本派遣プログラムでは、2001年より IISL主催の「マンフレッド・ラクス宇宙法模擬裁」に協力し、アジア・太平洋地域予選通過チームの学生2名をIAC会期中に実施されるワールド・ファイナル・コンペに派遣しています。本年の地域代表ニューサウスウェールズ大学(豪州)チームは、ワールド・チャンピオンという輝かしい成績を修めました。