ISEB学生派遣プログラム
【2015年度】第66回 IACエルサレム大会
派遣期間 | 平成27年10月9日(金)~10月18日(日) |
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派遣先 | イスラエル、エルサレム市 |
主なスケジュール
日付 | 内容 |
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11日(日) | ISEB 学生プログラム(アウトリーチ活動のためのトレーニング、オリエンテーション、異文化ワークショップ、アイスブレイキング)等への出席 |
12日(月) | IAC2015プログラム(オープニングセレモニー、テクニカルセッション、プレナリー、ウェルカムイベント等)・ISEBイベント(ISEB HoA へのQ&Aセッション)等への出席 |
13日(火) | IAC2015プログラム(テクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー)および ISEBイベント(ランチタイムセッション)等へ出席 |
14日(水) | 樋口IAF会長とのミーティング、IAC2015プログラム(テクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー)および ISEBイベント(JAXA派遣学生発表、ランチタイムセッション)等へ出席 |
15日(木) | IAC2015プログラム(テクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー)およびISEBイベント(ランチタイムセッション)、等へ出席 |
16日(金) | IAC2015プログラム(テクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー)およびISEBイベント(アウトリーチ活動)等へ出席 |
IAC(International Astronautical Conference)国際宇宙会議について
IACはInternational Astronautical Federation (IAF:国際宇宙航行連盟)、International Academy of Astronautics (IAA: 国際宇宙航行学会)及びInternational Institute of Space Law (IISL: 国際宇宙法学会)が主催している国際宇宙会議です。この国際宇宙会議では、各宇宙機関長の講演、本会議、レクチャー、各分野に亘る最先端の情報を仕入れることのできる会議、研究発表、イベントなどがあり、各国の宇宙機関長並びに幹部、学者、研究者、企業、若手研究者、学生などが参加する世界最大の宇宙会議です。1949年に第1回国際宇宙会議を開催し、今年2015年は第66回目の会議となります。本ウェブサイトでは、本会議のJAXA派遣プログラムに参加された学生の皆さんの感想を交え、これらの活動について報告をします。
(※本ウェブサイトにおける執筆者の所属大学・学年等についてはIAC2015エルサレム大会参加当時(平成27年10月現在)のものです)
ISEB学生派遣プログラム(第66回IACエルサレム大会)(IAC2015)におけるJAXA学生派遣プログラムについて
JAXAは活動の一環として、IACにおいては、派遣学生に公式プログラムの参加機会を提供するとともに、ISEB参加機関であるESA、NASA、JAXA、CSA、CNES、VSSEC、KARI、SANSA、AEMの宇宙9機関間協力のもと、学生への宇宙分野における知識・理解増進の機会提供、学生を交えた学術・研究交流の奨励、国境や専門領域の違いを越えた友好の輪を広げることを目指したISEB学生プログラムに参加しています。また、JAXAが本活動を実施するにあたり、より参加学生に資するプログラム作りを目指して、準備・企画段階から学生主導のもと、JAXA学生プレゼンテーションを取り入れています。2015年度は派遣学生6名全員の参画・貢献により、有意義なプログラムに発展させていくことができました。
ISEB学生プログラムについて
ISEB学生プログラムとしては、IAC2016開催の前日である9月25日(日)を初日としてスタートし、オリエンテーション・セッションが開催され、ISEB参加機関より派遣された70名(ESA:10名・NASA:13名・JAXA:10名・CSA:10名・VSSEC:4名・KARI:5名・AEM:18名)の学生が出席しました。
ISEBオリエンテーション・セッション、異文化ワークショップ、アイスブレイキング
ISEB学生プログラムのオリエンテーション・セッションとして、IAC会場で各機関のスタッフの紹介やISEBプログラムの概要を説明しました。学生達は世界中から参加した他国の学生たちと知り合い、交流する機会を得ました。
東京大学大学院 修士2年
青柳 祐基
- [オリエンテーションでは]ただただ自分の英語力の無さを痛感した.英語で論文を読んだり書いたりする練習は日頃しているが,Technical Writing と英会話は根本的に異なるものであり,いざ会話となるとこんなにも言葉が出てこないものなのかと感じた.ただこれは実際は狙い通りで,参加する前からたくさん恥をかくつもりでいた.小手先の準備でその場を切り抜けるよりも,思い通りに自分の意志を表現できないストレス下にあえて自分の身をおいた方が,今後の英語会話の練習の動機付けという意味ではより効果的であると考えたからである.レセプションの場でISU でNon-native english speaking を専門とされるCarol 氏にそのこと話したところ,英会話の効果的な学習法についての親身なアドバイスをくださった.
ISEB HoA へのQ&Aセッション
本セッションは、ISEB派遣学生からの質問にISEB参加機関の機関長や代表者が回答を行うという貴重な直接的対話機会として実施されました。
IACテクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー
首都大学東京大学院 修士1年
猪瀬 裕士
- Technical sessionでは様々な研究発表を聞いたが、withdrawや欠席が多かったため、少し残念だった。自分自身の研究に関連する内容の発表が聞け、今後に役に立つことばかりだけでなく、自分の研究とは異なる分野でも興味深い発表を聞くことが出来た。また研究の内容だけでなく、プレゼンのテクニックといった点でも参考になる部分は多かった。学会での発表経験の多い方々ばかりなので、スライドの内容から話し方、身振り手振りまで工夫されており、聞き入ってしまうプレゼンばかりだった。特にアクシデントが発生したときに、気の利いたジョークで会場を和ませ時間を作るといった余裕を持った行動はぜひ真似したいと感じた。
Plenary eventはHoAが印象に残っており、Highlight lecture ではロゼッタに関する話が印象に残っている。今回のように宇宙に携わる著名な方々のお話を聞く機会はそうないので本当に貴重な経験だった。自分より遥かに年上の方々が未だに楽しそうに宇宙の話や壮大なプロジェクトの話をしているのを見ると、自分もそのように宇宙に関わり続けたいと強く感じた。
International Student Zone: ISZ(国際学生ゾーン)
ISEB学生プログラムの一環として、IAC2015 展示会場の中に学生のための研究活動成果発表および人材交流の場としてのInternational Student Zone ; ISZ(国際学生ゾーン)が設置され、会期中、主としてランチタイムに各機関から派遣された学生によるプレゼンテーション等が実施されました。また各学生が自分の研究やその他の活動など世界に発信したい内容のポスターを展示し、世界中の研究者や学生達との交流の場にもなりました。
JAXA派遣学生プレゼンテーション
10月14日(水)にはJAXA派遣学生が一丸となって1時間のプレゼンテーションをISZで行いました。学生は研究内容と日本の伝統文化・現代文化を融合した発表を行い、大盛況をもたらしました。
慶應義塾大学理工学部機械工学科 学部4年
田中 鴻輝
- 会期中の午後の時間帯には毎日ISEBのランチタイム活動が組み込まれていたが,私たち若い学生を鼓舞するような話であったり,各国派遣学生によるプレゼンテーションがあったりして,会議そのもののセッションよりも身近に感じて楽しいものであった.特に,私たちJAXA派遣学生は寸劇風のプレゼンテーションを行ったが,事前の準備段階ではこれを行うためにIACに参加したというほどの意気込みであったことから,待ちに待った本番では楽しく発表ができたと思う.他の派遣学生の発表とは一線を画す内容で,聴衆の方々にも喜んでもらえたようで幸いであった.しかし,このプレゼンテーションによる一番の収穫は,JAXA派遣学生同士の関係性が非常に深まった点のように感じている.今後の人生においてこの出会いは大切にしたいと考えているが,彼らのことを思い出すにつけて頭に浮かぶのはいつもプレゼンテーション時の色鮮やかな法被姿である.
アウトリーチ活動
本年度は、ISEBのアウトリーチ活動としてエルサレムの学校に通う約50名の生徒をISZに招き、惑星の距離・真空実験・Mission X:クルーアセンブリ・ミウラ折りの4つの参加型セッションを行いました。参加した生徒達はそれぞれ興味のあるセッションを選び、積極的に楽しんでいました。
国際基督教大学教養学部経営学専攻3年
小暮 日和
- 私の担当はミッションXの宇宙パズルであり、実際に準備する過程では授業を受ける学生にとって難易度は問題ないか、宇宙服を着て仕事をする宇宙飛行士の困難をきちんと伝えることができるかという心配もありましたが、イスラエルの学生たちはみな熱心にパズルに挑戦し時には質問を交えながら取り組んでくれました。この時の経験を通して、宇宙教育の推進には子供たちが持っている好奇心や挑戦したいという気持ちを上手に導き実践を通してその問いの答えに気づくことができるようサポートすることの大切さを学びました。
国際宇宙法学会(IISL)への協力
JAXAは、2001年よりIISL主催の「マンフレッド・ラクス宇宙法模擬裁」に協力し、アジア・太平洋地域予選通過チームの学生2名をIAC会期中に実施されるワールド・ファイナル・コンペに派遣しています。本年のアジア・太平洋地域代表ナルザー法科大学チームは残念ながら準決勝で敗退しましたが、貴重な機会を得て多くを学んだとの感想が寄せられました。
おわりに・・・
今年度の本派遣プログラムには、学部生から博士課程の学生まで、多種多様な専攻分野から、幅広い層の学生が参加しました。
東京大学工学部物理工学科 学部4年
塚田 怜央
- 宇宙教育活動に関しては、IAF会長の樋口さんが仰っていたことが心に残った。「教育活動の定性的な価値を定量的に示すのは難しく、宇宙教育活動の普及は地道に行うしかない。」私自身も今まである程度の教育活動に携わってきて感じることは、教育の真価は実際に教育を受けたものにしか理解できないということである。私は、宇宙科学に限らす知的好奇心の探求は人生を精神的に豊かにすると信じている。教育の前では人間はみな平等で、ケニアの子でもイスラエルの子でも、不思議なことには目を輝かせる。しかしながら、それを定量的な価値として表すことができないならば、被教育者の子供たちが将来的に教育者になるほかないと思われる。そのためには今教育者である者たちが、憧れの対象になるようなロールモデルにならなければならない。人間誰しも、カッコいいものには憧れを抱くものであるから、教育者すなわち私たちがカッコよければ子供たちは自然とついてきてくれる。そのような教育者をいかにして輩出していくかが、今後の教育活動の軸になるのではないだろうか。
大阪府立大学大学院 工学研究科 航空宇宙海洋系専攻 博士後期課程1年
佐々木 貴広
- このIAC学生派遣プログラムで得た出会いについて記します。通常の国際学会参加では出会えない、数々の素晴らしい出会いがありました。まずは、他の派遣学生との交流です。今回はJAXA (日本), KARI (韓国), NASA (アメリカ), VSSEC (オーストラリア)の派遣学生がISEB(国際宇宙教育会議)に参加しました。全員同じホテルということもあり、顔を合わせる機会も多く、初日のCross Cultural Seminar による異文化コミュニケーションのイベントも手助けとなり、お互いに打ち解けるまでにそう時間はかかりませんでした。同世代で宇宙という共通のテーマがあるだけで話は盛り上がります。将来IACで出会ったメンバーが各国の宇宙開発を担う人物となり、また何年後かのIACで再開し、これからの未来の宇宙開発について語る、そういった妄想に胸を膨らませました。そして、IAF(国際宇宙航行連盟)会長の樋口清司氏、宇宙飛行士の野口聡一氏との出会いもまた特別なものでした。宇宙の国連を代表する樋口氏、実際に宇宙へと行った野口氏、そんなお二方との会話はすべてに深みがあり、一緒にいるだけでとてもわくわくしました。将来自分も誰かをわくわくさせられるような人物になりたいとういう思いが強くなりました。