ISEB学生派遣プログラム
【2016年度】第67回 IACグアダラハラ大会
派遣期間 | 平成28年9月24日(土)~10月2日(日) |
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派遣先 | メキシコ、グアダラハラ市 |
主なスケジュール
日付 | 内容 |
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25日(日) | ISEBプログラム(オリエンテーション、異文化ワークショップ、アイスブレイキング)等への出席 |
26日(月) | IAC2016プログラム(オープニングセレモニー、テクニカルセッション、プレナリー、ウェルカムレセプション)およびISEBプログラム(ISEB HoA へのQ&Aセッション)等への出席 |
27日(火) | IAC2016プログラム(テクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー)および ISEBプログラム(ランチタイムセッション、ネットワーキングセッション)等へ出席 |
28日(水) | IAC2016プログラム(テクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー)および ISEBプログラム(ランチタイムセッション、JAXA派遣学生プレゼンテーション)等へ出席 |
29日(木) | IAF樋口会長とのミーティング、IAC2016プログラム(テクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー)およびISEBプログラム(ランチタイムセッション、アウトリーチ活動のためのトレーニング)等へ出席 |
30日(金) | IAC2016プログラム(テクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー)およびISEBプログラム(アウトリーチ活動)等へ出席、グアダラハラ補習授業校特別授業 |
IAC(International Astronautical Conference)国際宇宙会議について
IACはInternational Astronautical Federation (IAF:国際宇宙航行連盟)、International Academy of Astronautics (IAA: 国際宇宙航行学会)及びInternational Institute of Space Law (IISL: 国際宇宙法学会)が主催している国際宇宙会議です。この国際宇宙会議では、各宇宙機関長の講演、本会議、レクチャー、各分野に亘る最先端の情報を仕入れることのできる会議、研究発表、イベントなどがあり、各国の宇宙機関長並びに幹部、学者、研究者、企業、若手研究者、学生などが参加する世界最大の宇宙会議です。1949年に第1回国際宇宙会議を開催し、今年2016年は第67回目の会議となります。本ウェブサイトでは、本会議のJAXA派遣プログラムに参加された学生の皆さんの感想を交え、これらの活動について報告をさせていただきます。
(※本ウェブサイトにおける執筆者の所属大学・学年等についてはIAC2016グアダラハラ大会参加当時(平成28年9月現在)のものです。)
2016年度 ISEB学生派遣プログラム(第67回IACグアダラハラ大会)におけるJAXA学生派遣プログラムについて
JAXAは活動の一環として、IACにおいては、派遣学生に公式プログラムの参加機会を提供するとともに、ISEB参加機関であるESA、NASA、JAXA、CSA、CNES、VSSEC、KARI、SANSA、AEMの9宇宙機関間・団体による協力の下、学生への宇宙分野における知識・理解増進の機会提供、学生を交えた学術・研究交流の奨励、国境や専門領域の違いを越えた友好の輪を広げることを目指したISEB学生プログラムに参加しています。また、JAXAが本活動を実施するにあたり、より参加学生に資するプログラム作りを目指して、準備・企画段階から学生主導のもと、JAXA学生プレゼンテーションを取り入れています。2016年度は派遣学生10名の参画・貢献により、有意義なプログラムを実施することができました。
ISEB学生プログラムについて
ISEB学生プログラムとしては、IAC2016開催の前日である9月25日(日)を初日としてスタートし、オリエンテーション・セッションが開催され、ISEB参加機関より派遣された70名(ESA:10名・NASA:13名・JAXA:10名・CSA:10名・VSSEC:4名・KARI:5名・AEM:18名)の学生が出席しました。
ISEBオリエンテーション・セッション、異文化ワークショップ、アイスブレイキング
ISEB学生プログラムのオリエンテーション・セッションとして、IAC会場で各機関のスタッフ紹介やISEBプログラムの概要を説明しました。学生達は世界中から参加した他国の学生たちと知り合う機会がありました。
筑波大学大学院 システム情報工学研究科知能機能システム専攻 修士1年
黒澤 茅広
- あらかじめ異文化交流ワークショップの講師であるCarol Carnettさんから英語を話す際のアドバイスをメールで頂いていたこと、オリエンテーションでネイティブ、非ネイティブの学生双方にコミュニケーションを円滑にとるためのアドバイスとアイスブレーキングの機会を頂いたことが、英語で学生と交流していく勇気になった。大事なのはコミュニケーションをとることであり、英語は道具である。できる限り道具を駆使してみようという意気込みでプログラム中多くの学生とお話しすることができた。最も身近にいたJAXA派遣学生の仲間達が、たとえ英語が分からないことがあっても、意気揚々と積極的に英語で交流をしていこうという姿勢も非常に勉強になった。
ISEB HoA へのQ&Aセッション
本セッションは例年通り、ISEB派遣学生からの質問にISEB参加機関の機関長や代表者が回答を行うという貴重な直接的対話機会として実施されました。
岡山大学 医学部医学科 学部4年 システム生理学教室所属
奥村 浩基
- Head of Agencyでは、幸運なことにKARIの長官の方に質問をする機会をいただいた。質問は、「社会には経済などの山積みの課題がある中で宇宙開発を行う意義は何なのか」というもので、答えとしては、確かに短期的な視野では多くの課題があり宇宙開発は成果が見えにくいが、長期的な視野で考えると宇宙開発は人類にとって有用であるから進める価値がある、というものであった。私の思ったことは、確かに長期的な視野で宇宙開発が有用であることは疑いようのない事実だが、その利益を国民やスポンサーに理解してもらうことが難しいので、宇宙開発によって生まれた多くの技術をPRしていくことが必要であると感じた。
総合研究大学院大学 物理科学研究科宇宙科学専攻 博士1年
柴田 拓馬
- [IAF樋口会長に]今後の日本の宇宙開発における国際性を身につけるにはどのような事が必要となるかと質問をさせていただきました。その際に、やはり日本国外の事に目を向け交流の機会を多く設ける事が必要であるとおしゃっていました。今回JAXAの派遣学生としてIACに参加し、様々な国の学生と交流を持つ中で、その必要性について私も気づきました。この機会を通して得た事を糧に自分にもできる事があるなと強く感じました。今後の自身の研究活動やアウトリーチ活動にこの経験を生かしていく事が出来ればと思っています。
IACテクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー
岡山大学 医学部医学科 学部4年 システム生理学教室所属
奥村 浩基
- 火曜日の午前は、宇宙環境における人への生理学的影響というテクニカルセッションを聞いた。このセッションは、私の専門そのものだったので、とても内容が面白かった。もっとも印象に残っているのは、通常診断で使われるエコーを用いて、骨の萎縮を防ぐことができるという研究であった。この研究は私にとって目から鱗の発想であり、私もこのように臨床と宇宙の橋渡しをするような研究をしたいと思った。その機会は日本にもあると思うが、アメリカなど世界を視野にいれて研究をすることは不可欠であると感じた。
International Student Zone: ISZ(国際学生ゾーン)
ISEB学生プログラムの一環として、IAC2016 展示会場の中に学生のための研究活動成果発表および人材交流の場としてのInternational Student Zone ; ISZ(国際学生ゾーン)が設置され、会期中、主としてランチタイムに各機関から派遣された学生によるプレゼンテーション等が実施されました。また各学生が自分の研究やその他の活動など世界に発信したい内容のポスターを展示し、世界中の研究者や学生達との交流の場にもなりました。
筑波大学大学院 システム情報工学研究科知能機能システム専攻 修士1年
黒澤 茅広
- 発表をしてみると予想外に反響があり、他分野の学生からこんな問題にも認知脳科学は応用できるのではないかといったアイデアや、近年の脳機能計測方法について質問を頂いた。宇宙分野を学ぶ学生から、積極的な意見をもらい、さらには新たな応用先のアイデアまでもらえたのは大変嬉しいことであった。ランチタイムセッションのプレゼンの参加により、自身で掲げた問題定義の解を一つ得られたように思う。
北海道大学 工学部機械知能工学科 学部3年
長田 大輝
- JAXAからの派遣学生に発表を見てもらって発表の仕方やスライドについて多くのアドバイスをもらい、直前まで練習をして当日の発表に臨んだ。自分の中では発表自体は60点位の出来だったのだが、何人かの学生は興味を持ってくれて発表後に私の所に来て質問してくれたのは本当に嬉しかった。つたない英語でもちゃんと聞いてくれる人がいた事にとても感動し、もっと自分の研究に励みたいと強く感じた瞬間だった。
JAXA派遣学生プレゼンテーション
9月28日(水)にはISZ(国際学生ゾーン)においてJAXA派遣学生が一丸となって、各々の研究内容と日本の文化を融合した1時間のプレゼンテーションを行いました。渡航前から準備をし、現地入り後も直前まで練習を重ねたことにより、本番は大盛況をもたらしました。
東京大学大学院 工学系研究科航空宇宙工学専攻 修士1年
亀山 頌互
- 昼食後はJAXA派遣学生の皆でプレゼンを行った。といっても、普通のプレゼンではなく、日本の文化を紹介する寸劇の最中に、各学生の専門についての学術発表を挟む形式である。学術プレゼンは、推進・制御・天文物理・法学の各分野に分かれ、筆者は推進班に所属した。日本文化では、百人一首・弓道・折り紙・書道を紹介して、実際に目の前でパフォーマンスを行った。
発表は大盛況であった。このために日本にいる時から準備を進め、現地入りしてからもリハーサルを繰り返してきたため、一同、達成感を感じたようである。(中略)学術プレゼンについては、前夜に何回も自分でリハーサルを繰り返したことで、ある程度スムーズにプレゼンを終えることができた。 公の場で研究について英語発表したことが今までに無かったため、良い経験になった。今後、学会で正式に発表する際には自信を持って臨めると感じている。
アウトリーチ活動
本年度は、ISEBのアウトリーチ活動としてグアダラハラの学校に通う約200名の生徒をISZに招き、プログラミング言語「SCRATCH」を使ってボール型ロボットを操作する体験学習を行いました。ISEB派遣学生と現地の学生ボランティアが協力して、子供たちにプログラミングの楽しさを体感してもらいました。
サウサンプトン大学大学院 宇宙航空研究グループ 博士2年
杉原 アフマッド 清志
- 他のISEB学生と共に現地の小学生に向けたアウトリーチ活動を行った。内容は小型ロボットを使ってアルゴリズムについて学習しようと言ったものだった。(中略)特に勉強になったのが、視覚に障がいのある子供にこれを教える事だ。英会話もできなかったのでメキシコの派遣学生に通訳をお願いして進める事になった。重要だったのがロボットを用意されていたマットの上で動かすのではなく、手で追えるように手元で動かすように予定を変更するなどと言ったその場の工夫で、結果アルゴリズムの事も学んでもらえた様で、成功だった。
補習校特別授業
今年度の派遣プログラムでは、9月30日(金)にグアダラハラ補習授業校を訪問し、幼稚園から中学2年生までの子供たちに、天体シュミレーションソフトを使用した宇宙のお話やワークショップ(宇宙の箱舟教材・ロボットハンド工作・ハニカム構造体験)など、さまざまな形で宇宙に触れてもらうための特別授業を行いました。
東京大学大学院 理学系研究科物理学専攻 修士1年
塚田 怜央 (JAXA派遣学生リーダー)
- 今年のアウトリーチ活動は、昨年度のものと比べて、新規性が強く、様々な創意工夫が見られる授業内容であった。具体例として、私の関わったハニカム構造を学ぶ授業は、一から授業を設計し、限られた時間で生徒を目標まで辿り着かせることができたと思っている。既存の授業を流用した去年とは違い、試行錯誤しながら一つのものをデザインしていく過程はとてもやりがいがあり、子供達が自分たちの予想以上の成果を出した時はあまりの出来に感動してしまったほどである。今回の授業が少しでも子供達の心に残り、将来のある日に思い出してくれることを願うばかりである。
おわりに・・・
今年度の本派遣プログラムには、学部生から博士課程の学生まで、多種多様な専攻分野から、幅広い層の学生が参加しました。
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 修士2年
井出 舜一郎
- 本プログラムにおいて私は海外という新たな視野を体験できました。研究、教育、政策、産業など多岐にわたる視点を世界規模に拡張することで、国内で完結していた課題や方針に対して考え方が広がると感じました。例えば、欧米の大小様々なスタートアップの活動報告や製品に触れることで、日本企業の活動や製品とミクロに比較することができました。また各組織のトップにお話を聞くことで、全世界的な宇宙開発の潮流をマクロに感じ取ることができました。このような国内外の多視覚的な比較や流れを把握することは、産業市場という変化の激しい領域を理解する上で、大変役に立つことだと思いました。
そして何より、ともに日本学生の代表として活動したJAXA派遣学生の仲間や世界中の宇宙を志す学生たちと繋がれたことは、私の宝物です。
京都大学 法学部 学部3年
松原 舜
- この派遣プログラムで得られたことに関しては、現在の自分と将来こうありたい理想像との距離感を把握することができたということである。将来宇宙を職にしようとしている他の派遣学生たちと今の自分を比べて、何が足りていないのか、どのようにしてそれを克服することができるのかを、実際に話したり、彼らのプレゼンを見たりして、掴むことができた気がしている。今まで自分の立ち位置を客観的に把握していなかったので、このような見識を得ることができて、本当に良かったと思っている。これを基に、自分が今後何をしていくべきかをしっかりと考えていきたいと思う。
東京大学大学院 理学系研究科 天文学専攻 修士1年里
山口 正行
- IAC学生派遣プログラムを振り返ると、世界へ飛び立ちたい思いが募った。宇宙関連を学ぶ海外学生たちは、明瞭な自己意識を持ち、情熱を兼ね備えている。世界は驚きと感動で満ち溢れていることを知った。IAC2016から宇宙教育学、航空宇宙工学、さらには宇宙法学など多岐にわたる学問領域を学び、学問的汎用性を持ち合わせる重要性さえ感じた。今回の経験を踏まえ、帰国後はさらに研究に努め、今一度、世界へ飛び立つ準備をしようと決意した。