授業連携

空へ挑み、宇宙を拓くとはどういうことか考えてみよう

秋田県・能代市立能代第二中学校

  • 中学校
  • 中3
  • 探究

概要

<全授業を通した指導目標>

 中学3年生理科の「地球と宇宙」の学習において、天体観測等の体験的な学習を充実させることによって、生徒に太陽系天体とその動きについて関心をもたせ、科学的な記録を取る技能や表現力を高めさせるとともに、これらの天体についての理解を深めさせる。
 また、JAXAや石垣島国立天文台、秋田大学教育文化学部等の外部機関との連携によって、宇宙やそれに関連する科学技術に対する興味・関心を高めさせるとともに、将来宇宙飛行士や技術開発者になる高い志をもつような若者の育成を図る。

<対象>

中学校3年生 120名

<期間>

平成22年9月24日~平成22年10月21日

<区分>

SPP(サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト)

構成表

実施日
時間
形式
人数
授業内容
1
200分
授業
120名
既習事項の確認(10分)
DVD「HAYABUSA BACK TO THE EARTH」(有限会社ライブ)の視聴(30分)
「はやぶさ」の帰還の要因を考察(5分)
学習内容をまとめてレポート作成(5分)
2
290分
講義
観察
講義
観察
120名
太陽の観察の仕方及び太陽の特徴について(20分)
天体望遠鏡と太陽遮光板による太陽の観察と記録(20分)
観察をもとにした考察内容のレポート作成(10分)
放課後学習として金星の見え方に関する講義と観察(90分)
講師・支援員
秋田大学教育文化学部
准教授    川村 教一
准教授    上田 晴彦
技術長    成田 堅悦
技術専門職員 毛利 春冶
技術職員   山下 清次 他大学4年生TA3名
3
200分
講義
授業
120名
・石垣島国立天文台の紹介(10分)
・Web会議システムによる天文台との交信・講義・質疑応答(35分)
・講評・感想発表(5分)
講師:宮地 竹史
石垣島国立天文台副所長)
4
120分
講義
講義
120名
講師及びJAXAの理念の紹介。(5分)
金星探査機「あかつき」に関する講義(50分)
講師:大月祥子
(JAXA宇宙科学共通基礎研究系)
講義
ロケットの原理に関する講義(20分)
講師:赤城 弘樹
(JAXA環境試験技術センター 開発員)
実験
注射器ロケットの実験(45分)
支援:立元 恵・二ノ宮 裕美
5
200分
120名
これまでの授業の振り返り

第1回目/全5回『授業記録シート』

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(10分)
・既習事項に関する事前調査



・H-IIAロケット打ち上げの様子視聴
◎小学4年生の教科書を使って、既習事項を確認した。

△既習事項を振り返り、事前調査のアンケートに答えた。

△探査機はやぶさをのせたH-IIAロケット打ち上げの様子を視聴し、学習課題「探査機はやぶさが帰還できた要因は何か」をつかんだ。
・小学校4年生の教科書の内容を見せながら、既習事項を想起させた。
・大スクリーンを用いて、迫力あるH-IIAロケット打ち上げの様子を視聴した。
展開
(30分)
・DVD「HAYABUSA BACK TO THE EARTH」視聴

・探査機はやぶさが帰還できた要因を考察
△探査機はやぶさについて知っていることを、簡単に交流した。

△DVDを視聴した。

△探査機はやぶさが帰還できた要因について、視聴内容をもとに自分の考えをまとめた。
・探査機はやぶさを支えた日本の高い科学技術とJAXAの人たちに着目させた。
まとめ
(10分)
・考察内容の発表


・感想発表
△考察内容を発表し合った。

◎発表内容ををもとに、はやぶさの帰還についてまとめた。

△授業を振り返って感想を発表し合った。
・まとめとして、はやぶさは最先端の科学技術とチームのあきらめない気持ちによって奇跡の生還を果たしたことを確認した。

授業の感想・メモ

  • 大スクリーンで迫力のあるDVDを視聴し、生徒が感動しているようすを見て取ることができた。生徒の感想では「宇宙のスケールの大きさを感じた」や「日本の科学技術のすごさが分かった」「はやぶさとJAXAの人たちの頑張りに感動した」などがあった。
  • 概ね単元の学習に対する興味・関心の向上を図ることができた。

第2回目/全5回『授業記録シート』

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(5分)
・講師紹介


・学習の流れと学習課題の確認
◎秋田大学教育文化学部講師(8名)からの簡単な自己紹介をしてもらった。

△学習課題「太陽の表面のようすを調べよう」を確認した。
展開
(40分)
・太陽の観察と太陽の特徴についての講義(20分)

・理科室からグランドへ移動(5分)

・天体望遠鏡での太陽の観察と考察(15分)
◎秋田大学講師から太陽観察の諸注意と太陽の特徴についての基礎知識についてせつめいしてもらった。

△講義の内容を自分なりにメモをして記録をとった。

△3~4人の小グループを編成して、天体望遠鏡と太陽遮光板を用いて太陽を観察した。

△スケッチや気付いた点を記録し、太陽の表面の特徴とその原因について考察した。
・世界各地での太陽観察のようすを中心中心とした話で、太陽への関心を高めた。
・各グループに一人ずつ講師を助言者として配置した。
まとめ
(5分)
・講師から講評

・生徒からの感想発表と講師へのお礼の言葉
◎代表の講師が太陽の観察を振り返って講評をした。

△複数名の生徒が感想を発表し、学級代表として級長が講師へのお礼の言葉を述べた。

授業の感想・メモ

  • 晴天に恵まれ、4クラスとも予定通りの授業を行うことができた。
  • 生徒からは、太陽が絶えず動いていることや黒点などの太陽表面のようす、太陽遮光板を通して肉眼で太陽が緑色に見えることなどに驚きの声を上げていた。
  • 放課後の日暮れ頃、希望生徒54名に対して、秋田大学講師からの金星の見え方についての講義と天体望遠鏡による観察を行った。
  • 天体望遠鏡で見えた三日月型の金星のようすに生徒の目が輝いていた。

第3回目/全5回『授業記録シート』

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(10分)
・前時の振り返り



・学習課題の確認
◎前時に撮影した動画を見ながら、金星の満ち欠けの仕方について復習した。

△学習課題「太陽系についてもっと理解を深めよう」を確認した。
展開
(30分)
・石垣島国立天文台との交信



・石垣島天文台の紹介と天体観測や金星の見え方についての講義
・質疑・応答
◎石垣島天文台講師を紹介し、講師と生徒が画面上で挨拶を交わした。

◎天文台の「むりかぶし望遠鏡」についての説明や金星の見え方についての講義をした。

△太陽系や天体観測に関する質問をして、講師からの回答をもとにして宇宙に関する疑問を解決した。
・インターネットを活用したWeb会議システムを使って交信した。
まとめ
(10分)
・講師からの講評



・生徒からの感想発表・代表生徒お礼の言葉
◎講師からの授業の感想と生徒に対するメッセージを語ってもらった。

△生徒から講義の感想とお礼の言葉を発表した。

授業の感想・メモ

  • 石垣島との交流を通して、「遠くの人と表情を見て話ができるのはすごいと思った」、「またぜひやってほしい」などほとんどの生徒がWeb会議システムの利点を理解することができた。また、「金星は何からできているか?」「外から地球を見るとどう見えるか?」「宇宙に限界はあるのか?」などの率直な疑問を投げかけ、「自らの疑問が解決してすっきりした」などの感想があった。
  • その他の感想からは、宇宙に関する興味がさらに深まったという生徒も多く見られた。

第4回目/全5回『授業記録シート』

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(5分)
・講師紹介とJAXA理念についての紹介



・学習課題の確認
◎講師4名の簡単な紹介と、主講師2名のプロフィールを紹介したのち、JAXAの理念である「空に挑み、宇宙を拓く」の説明をした。

△学習課題「『空へ挑み、宇宙を拓く』とはどういうことか考えてみよう」を確認した。
展開
(110分)
・金星探査機「あかつき」についての講義(50分)



・ロケットについての講義(20分)



・注射器ロケットの実験(45分)
◎大月祥子講師から金星探査機「あかつき」の概要と金星についての基礎知識の講義や金星に関する質疑応答をした。

◎赤城弘樹講師からH-IIAロケット打ち上げの解説やロケットの原理等に関する講義をしてもらった。

△クラスごとに分かれて、注射器ロケットの発射実験を行い、遠くに飛ばす条件について考察した。
まとめ
(5分)
・講師からの講評



・生徒からの感想発表・代表生徒お礼の言葉
◎主講師2名からの授業を振り返っての感想と生徒に対するメッセージを語ってもらった。

△代表生徒から講義と実験の感想とお礼の言葉を発表した。

授業の感想・メモ

  • 「あかつき」の講義では、現在も探査機あかつきが金星に向かっていることに驚き、「あかつきの存在を初めて知った」、「これからは到着するのを見守っていきたい」などの感想があった。講義の後の質疑応答では、「あかつきはいつ地球に帰還するか?」「なぜ金星を探査することになったのか?」など突っ込んだ質問が出て、大月講師からは懇切丁寧な説明があった。内容は非常に高度な部分も含まれていたが、生徒のレポートにはびっしりとメモが書かれており、興味・関心が高まった生徒が多いことを確認できた。
  • ロケットについての講義では、ロケット発射の瞬間を真剣に見つめ、それを支えた日本の科学技術の基礎的なことが理解することができた。
  • 注射器ロケット発射実験のようすはTVニュースでも放映され、目を輝かせて生き生きと実験に取り組み、より遠くへ飛ばそうと発射角度やエタノールの量を慎重に調整する生徒の姿が多く見られた。授業を振り返っての生徒の感想では「滅多にない貴重な経験ができた」、「宇宙に対して興味が湧いてきた」などがあり、本物に触れることの意義の大きさを改めて実感した。

第5回目/全5回『授業記録シート』

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(10分)
・前時の復習


・学習課題の確認
◎前時までの金星についての学習をプレゼン資料と映像で振り返った。

◎学習課題「金星についての学習内容を整理してまとめよう」を確認した。
展開
(30分)
・教科書の学習内容の整理



・理科ノートの問題練習
△金星の動きと見え方についての基礎的な事項を、プレゼン資料を見ながら確認した。

△各自教科書やワークシート等を見直しながら、理科ノートの問題練習に取り組んだ。
まとめ
(10分)
・SPP講座のアンケート調査の実施
△SPP講座の中学生・高校生用アンケートを記入した。

授業の感想・メモ

  • JAXAとの連携授業がTVや新聞各社で報道されたことの反響が大きく、生徒の授業への意欲の向上を感じ取ることができた。
  • SPP講座において体験的な学習に重点を置いたため、学習内容の整理にかける時間が不足してしまったことが反省として残った。
  • ある程度の学習のまとめはできたので、今後知識の定着を図りたい思う。 

秋田県・能代市立能代第二中学校

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