授業連携

ロケット研究開発への挑戦

三重県・伊賀市立城東中学校

  • 中学校
  • 中1
  • 技術・家庭

概要

<全授業を通した指導目標>

傘袋ロケットの製作と実験を通して、ロケットの安定飛行について意見を交流し考えを深め、ペットボトルロケットの製作と打ち上げ実験を通して、水・空気圧と推進力の関係について考察し、ロケットの推力の理論をまとめる。そして、JAXAのロケット開発の研究と取り組みについて話を聞き、ものづくりの意義を学んでいく。

<対象>

中学1年生 99名

<期間>

平成24年2月1日~2月3日

<区分>

教科 (技術・家庭科)

構成表

実施日
時間
形式
人数
授業内容
1
110分
実験
実習
講義
33名
傘袋ロケット製作・実習、協議、意見交流
講師:竹前 俊昭
(JAXA 宇宙科学研究所 宇宙航行システム研究系)
2
110分
実験
実習
授業
33名
水ロケット製作・実習・打ち上げ実験、協議、意見交換
講師:竹前 俊昭
(JAXA 宇宙科学研究所 宇宙航行システム研究系)
3
50分
講義
99名
日本のロケット研究開発についての現状と観測ロケットについての講義
講師:竹前 俊昭
(JAXA 宇宙科学研究所 宇宙航行システム研究系)

第1回目/全3回『授業記録シート』

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(15分)
・傘袋ロケットの説明を聞く。

・傘袋ロケットの飛び方を観察する。

・安定して飛ぶための工夫について考え、意見を交流する。
◎(教師の活動)
傘袋ロケットの製作(空気の入れ方や密封方法等)について簡単に説明する。

△(子供の活動)
どのようにするとまっすぐに安定して飛ぶのかを考え、意見を出し合う。
・傘袋ロケットを実演を交えてイメージさせる。


・子供たちの意見を反映させて、製作した傘袋ロケットを飛ばして観察させる。
展開
(80分)
・傘袋ロケットを製作する。





・傘袋ロケットの飛行実験をする。










・安定して、遠くまで飛ぶロケットについて考える。
△(子供の活動)
フィンの形状・枚数、接続位置、おもり、ビニールテープ、粘土等、各自で工夫して、自由に取り組む。

△(子供の活動)
傘袋ロケットが完成したものから、場所を多目的スペースに移動し、まっすぐ、安定して、遠くまでとぶか実験する。          





△(子供の活動)
安定した飛行に必要な条件について考える。
・まっすぐに安定して遠くまでとばせる工夫について自由に考えさせて、製作にあたらせたい。

・飛行実験に取り組む中で、安定して遠くに飛ばすための工夫について考えさせたい。

・さらに工夫改善して飛行実験に取り組ませる。

・飛行距離についても記録するようにさせる。

・子供たちが製作したロケットを比較しながら考えをまとめさせたい。
まとめ
(15分)
・ロケットの安定飛行の条件についてまとめる。(重心、圧力中心)




・安定飛行の条件を理解し、傘袋ロケット製作を完成し、学習をまとめる。
◎(教師の活動)
扇風機を利用して、風見鶏効果の実験を観察させながら重心と圧力中心の関係を説明する。

△(子供の活動)
重心と圧力中心の関係をいかして、自分の傘袋ロケットを完成する。
・実験に注目させ、重心と圧力中心の位置関係を確認させる。


・実際の宇宙開発用のロケットも重心と圧力中心のバランスが計算されており、ロケット製作の重要な要素であることを伝えたい。

授業の感想・メモ

  • 傘袋ロケットに何もつけないで、飛ばしたらあまり飛ばなかったけど、ロケットの先におもりをつけて後ろにフィンをつけたら安定しながら遠くまで飛ぶということ。
  • 初めは、全然飛ばなかったけれど、フィンやおもりをつけて、実験するとだいぶ遠くまで飛ぶようになりました。条件を少しずつ換えていくことでよい状態を作れることが分かりました。
  • 最初は、全然飛ばなかったけど、少しずつテープを巻いたり、フィンをつけたりして、改良していったりして、遠くに飛ぶようになりました。軽かったらまっすぐ飛びませんでした。

第2回目/全3回『授業記録シート』

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(15分)
・水ロケットの競技について説明を聞く。





・ワークシートに名前を記入し、水量と空気圧の設定を決める。
◎(教師の活動)
ワークシートを配布し、記録するデータ(水量、空気圧、飛距離)について説明する。打ち上げは、3回以上を目標とする。

△(子供の活動)
それぞれの打ち上げについて、水量、空気圧、ペットボトルの種類等の必要なデータは、その都度記録する。
・安全に学習を進めるために、競技方法、ルール、取り組み方について徹底する。


・空気圧については、上限値を決め、それ以上は危険であることを周知する。
展開
(80分)
・水ロケットに設定した量の水を入れる。







・水ロケットを発射台に設置する。




・水ロケットに設定した量の空気を入れる。




・水ロケットを発射する。




・自分のロケットを回収する。



・水の量、空気圧、飛距離についてデータを記録する。
△(子供の活動)
 各自が設定した水の量を測定し、ペットボトルに注入する。





水を注入したロケットを発射台に設置する。
※このとき、発射台の前に立たないようにする。

発射台への設置を確認、完了後、一斉に空気を注入を各自の設定まで行う。
※上限値は必ず守るようにする。

空気の注入が終わり、打上準備の完了を確認し、「秒読み開始、発射」の合図に従って、発射ボタンを押す。

全ての水ロケットの打上が完了したことを確認し、回収に行く。

水の量、空気圧および飛距離を確認し、記録用紙にデータを記入する。
・安全に実習を行うために、打ち上げ準備から、打ち上げ後のロケット回収まで、周囲を確認しながら一斉に行うようにする。

・ペットボトルへの水の注入は、こぼれないように注する。












・周囲の安全を確認して、「発射」の合図でスイッチボタンを押すように指示する。

・必要なデータは、備考欄に記入するように指示する。
まとめ
(15分)
・水ロケットの打ち上げ実験結果をまとめる。




・安定して遠くまでとぶ飛行の条件について、意見を交流する。






・水ロケットのよく飛ぶ安定飛行の条件についてまとめる。

・研究開発に取り組む姿勢や考えを聞く。
◎(教師の活動)
実験結果から、ロケットの形状やフィンの枚数、水の量、空気圧と飛距離の関係について考えをまとめる。

△(子供の活動)
傘袋ロケット、水ロケットの実験・実習より、安定して遠くまで飛ぶ飛行の条件について、水の量、空気圧、重心・圧力中心以外にも、考えられる条件を交流する。

◎(教師の活動)
ロケットの安定飛行の条件についてまとめ、今回の一連の学習が、宇宙やロケット開発研究の考え方と深く結びついていることを説明する。
・打ち上げ実験結果より、水ロケットの安定飛行について各自の考えをまとめさせたい。

・できるだけ多くの意見を取り上げ、安定飛行につながる条件について詳しく分析させたい。


・水量と空気圧との関係、重心と圧力中心の位置関係、フィンの形状、機体の接続部の強度等についても紹介し、安定飛行の条件について考えを深めさせたい。

授業の感想・メモ

  • 中に入れる水の量と気圧の関係によって、飛ぶ距離が変わることがよく理解できた。
  • すべて自分で製作しなければいけないと聞いたとき、どうしたらまっすぐ飛ぶだろうと思ったけど、フィンの付け方や重心の位置を確かめることによってまっすぐとぶことがわかった。
  • 水の量や気圧、重心、角度など、それぞれの条件がぴったり合うとよく飛ぶということが分かりました。先端に粘土を入れるなど、ちょっとした作業で飛距離が結構変わってくることが分かりました。
  • 水の量、気圧、風、角度など色々な条件が合って、遠くまで飛ぶと分かりました。

第3回目/全3回『授業記録シート』

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(10分)
・「日本のロケット開発の研究」について話を聞く。
◎(教師の活動)
日本のロケット開発の研究についての話しであることと、プレゼンテーションの構成について紹介する。
・日本のロケット開発の取り組みを聞き、実際のロケット利用の方法についてより専門的な知識を深めたい。
展開
(30分)
・ロケットと人工衛星について知る。


・観測ロケットについて知る。
(目的・意義・現状)



・ロケットの打ち上げについて知る。


・日本のロケット開発の歴史を知る。




・「はやぶさ」のプロジェクトについて説明を聞く。
◎(教師の活動)
ロケットの開発の目的を説明し、ロケットの種類について紹介する。
実際の観測ロケットの打ち上げの様子や観測画像、データを紹介しながら説明する。

・内之浦、種子島宇宙センターの様子を紹介する。

・ペンシルロケットの研究開発から日本初の人工衛星「おおすみ」の成功を振り返り話を進める。

・小惑星「イトカワ」に着陸し、微粒子を採取し、7年もの歳月をかけて地球に帰還したはやぶさが、幾度のトラブルを乗り越えて成功したというねばり強い取り組みについて伝える。また、チーム力の重要性についてもふれる。
・ロケットと人工衛星について深入りしないで、概要を説明するように工夫する。

・打ち上げシーケンスが水ロケットと同じシステムであることも紹介する。





・現在の日本のロケット開発が、多くの苦難があり、それを乗り越えて成し遂げられてきたことを伝えたい。
まとめ
(10分)
・研究や学習の進め方についての考え方をまとめる。






・将来、目的をもって物事に取り組んでいくことの意義とあきらめない姿勢が、成功につながることを確認する。 




・講演について質問、意見、感想を交流する。
◎(教師の活動)
技術・家庭科で学習してきた「材料加工」「エネルギー変換」「情報」「生物育成」の取り組みが、ロケット開発の研究開発と同様であることを説明する。

傘袋ロケット、水ロケット、モデルロケットの3つのロケットの製作と打ち上げ実験、改善・改良の繰り返しが、より質の高い次の学習・研究につながることを実感させる。

△(生徒の活動)
ロケットを取り上げた学習全般について、意見感想を出し合う。
・ロケット開発の研究が、計画・実行・反省のサイクルで行われてきていることを伝え、技術科での学習の進め方と同じであることを意識させたい。


・技術科で学習してきたことが、宇宙開発の研究に結びついていることを伝え、学習のまとめにする。

授業の感想・メモ

  • 一番初めの人工衛星は、飛ばすのに何度も失敗して世間の人から「もうやめなよ。」って言われたけど、そこであきらめずに、続けて、ついに飛んだという話から、「その人たちの苦労と努力とがんばりのおかげで、今の日本のロケットがあるんだな。」と思いました。
  • ロケットには、色々な種類があって、打ち上げの用途に合わせて使うということを知りました。今の日本のロケットは、昔からの苦労があるからこそ、実在しているのだと思いました。
  • ロケットを打ち上げるためには、膨大なお金や時間がかかるけど、その分とても価値のあることだと思うし、もっと研究が進んで、宇宙のことをいろいろ知ることが出来たらいいなあと思いました。

三重県・伊賀市立城東中学校(1)

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