授業連携

火星への人類の第一歩にチャレンジ

東京都・東京都立小石川中等教育学校

  • 中学校
  • 中1
  • 総合的な学習の時間

概要

<全授業を通した指導目標>

宇宙の環境について調査し、火星を構成する元素について考え、化学的な視点から火星での人類の移住をするためのテーマを4人1組の班で設定し、その課題を解決するために、火星に行くために必要な化学物質を考え、火星への移動プランを立案し、ポスターを作成し、発表する。宇宙教育を通して、地球環境の保全に目を向けさせるきっかけとしたい。

<対象>

中学1年生C組 40名

<期間>

平成24年2月20日~3月12日

<区分>

総合学習の時間

構成表

実施日
時間
形式
人数
授業内容
1
45分
講義・実験
40名
【導入】火星を覆う酸化鉄や、大気成分である二酸化炭素について知る。地球の大気成分である空気で起こる燃焼が火星では起こりにくいことや人間が火星で暮らすためにはどのような環境へのはたらきかけを行う必要があるのかを考える。地球環境では大気により遮蔽されている放射線が、宇宙では放射線を多く受けることになる。これを解決するために、放射線の遮蔽実験を行い、どのような仕組みの宇宙船や住居を考える必要があるか計画を立てさせる。
2
45分
講義・実験
40名
【展開1】JAXAのビデオ教材を観て、宇宙がどのような環境の場所であるかを知る。火星についてのビデオも観た後、各班ごとに宇宙生活を行うための課題をテーマとして設定する。【テーマ】睡眠、食料、水、衣料、お風呂、健康維持、ストレスケア、放射線、地球外生命、発電、惑星間移動
3
45分
講義
40名
【展開2】JAXA宇宙科学研究所 名誉教授 山下雅道先生による宇宙農業の研究に関する講演。火星に行くには潮待ちの時間が必要であり、行くのに2年、帰ってくるのにも潮待ちして2年に一回となる、つまり、宇宙に長期滞在する必要があり、食料を宇宙で生産する手立てを考えなくてはならない。
4
45分
発表
40名
【まとめ】各班ごとの課題を解決するための宇宙で長期滞在をするためのモジュールを設計する。モジュールについての発表を行い、10台のモジュールを連結させる。火星への移住計画を考えることがいかに困難であるかを考え、地球環境の保全への意識を高め、宇宙環境利用の科学技術へ興味をもたせる。

第1回目/全4回『授業記録シート』

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(10分)
テーマを「火星に足跡を残せるか」として、放射線の測定実験を行うことを知る。
放射線源の扱い方の注意点を知る。
△放射線の測定方法、放射線源の扱い方について知る。
放射線源は安全な放射線量であるが、ポケットに入れたままにしたりということがないように注意する。
展開
(25分)
放射線でもある宇宙線の問題について、実験を行い考察する。
〔実験〕放射線をどのように遮蔽することができるかという方法を調べる。
地球環境では地磁気や大気により遮蔽されている放射線を、宇宙空間の被曝量はとても多くなってしまう。これを解決するために、放射線の遮蔽実験を行い、どのような構造の宇宙船や住居を考える必要があるか考える。
新聞記事を読み、これから人類が火星に到達するにはどのような宇宙船を考えなくてはならないかを議論する。
日本アイソトープ協会と文部科学省から実験器具の提供を受け、放射線源からの距離と放射線量の関係、ペットボトルに入れた水を用いた放射線の水による遮蔽効果を確認する実験を行う。
まとめ
(10分)
昨秋帰還した古川宇宙飛行士の話を交えて、宇宙線を避けるためにどの様にしたらよいのかを考えました。
班で話し合い発表する。

授業の感想・メモ

  • 宇宙線の人体への影響、化学推進エンジンの技術開発、地球と火星の距離から食料や水の問題を挙げている意見が多くありました。

第2回目/全4回『授業記録シート』

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(5分)
「宇宙とはどんなところか」をテーマとして、宇宙について知り、各班でテーマを設定することを知る。
△話を聞く。
展開
(35分)
JAXAの宇宙教材ビデオで、最先端の宇宙についての調査結果を知り、宇宙について詳しく知るという活動を行う。
火星へ到達するために、「睡眠、食料、水、衣料、健康維持、ストレスケア、放射線、地球外生命、発電、惑星間移動」の10種類の課題を10班で分担する。
△ビデオを見てプリントの記入を行う。

△班で話し合い、どのテーマにするかを決める。
まとめ
(5分)
班で話し合ったテーマを発表し、テーマ重なっている班の調整を行う。
△班のテーマをプリントに記録する。
班長が代表で出て調整を行う。

授業の感想・メモ

  • 生徒の感想の中には「映像がくっきりしている上、説明がわかりやすく、宇宙について今まで知らなかったこともよくわかった。」、「宇宙はとても過酷な場所であるということがわかった。」という感想がありました。

第3回目/全4回『授業記録シート』

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(5分)
JAXA宇宙科学研究所名誉教授山下雅道氏に「火星に行こう」をテーマに講演を行っていただくことを知る。内容は「何のために火星に行くのか、どうやって火星に行くのか、火星で生きる宇宙農業、宇宙探検の心理学」など。
◎山下先生を紹介。

◎講演の内容について説明。
展開
(25分)
山下先生の講演
△講演を聞く。
まとめ
(10分)
質疑応答
△講演内容や自分の班のテーマについての質問を行う。

授業の感想・メモ

  • カイコを育て、さなぎとなったものを粉末にしてクッキーに加工して食べるという「宇宙農業」の研究は生徒を驚かせました。質疑応答では「宇宙では有機物を落とした方がよいのではないか」、「宇宙には生物がたくさんいる可能性があるというが、地球で起こったように単細胞生物が人間のように進化する可能性はあるのか」、「ストレスケアをテーマとして調べているが、何をしたらよいか」という質問が出ました。ストレスケアに対しては、宇宙では個食を絶対にせず、皆で一緒に食事をし、誕生日や記念日にはごちそうを用意して楽しむなどメリハリをつけるという、興味深いお話がありました。宇宙開発の第一線で活躍されている研究者の話を聞くことで、生徒は宇宙開発を現実のものとしてとらえることができるように変化していきました。

第4回目/全4回『授業記録シート』

時間配分
学習内容
◎教師の活動
△生徒の活動
指導上の留意事項
導入
(5分)
テーマを「宇宙で長期滞在するためのモジュールの設計」であることを知る。
△班のテーマである、宇宙生活の課題を解決したモジュールを設計することが本時の活動内容であることを理解する。
展開
(25分)
4人1組の班で話し合い活動を行い、火星に行くときに想定される課題解決した装置を備えたモジュールを図と文章で表現する。
火星を地球環境と同じ状態に変えることは、環境破壊につながることを認識させる。
△配布された画用紙に、班で話し合ったモジュールを図と簡単な説明で表現する。

△居住環境を火星につくるためにどのようにしていけばよいのか、火星への移動プランを立て、ポスターにまとめる。各班で作成したモジュールになぞらえたポスターを、共通規格の連結ユニット(黒い画用紙を切ったもの)でつなぎ合わせる。
まとめ
(15分)
班で話し合って作ったモジュールについて発表する。
最後に班で考えたモジュールについて発表する。

授業の感想・メモ

  • JAXAと連携した宇宙教育により生徒は本物の体験をすることができます。宇宙について興味はあっても、身近なものとして捉えられていないという生徒が始めは大半でしたが、SFの世界の宇宙から「自分も宇宙開発を仕事にしたい」「宇宙開発への夢が膨らみました。開発することの楽しさを知りました」「宇宙を汚してはいけない」「まずは地球を大切にする」という意見が多く見られるように変化しました。

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