授業連携

山口の食文化を宇宙へ
~宇宙食開発過程で明らかになった課題解決に向けた研究~

山口県・山口県立厚狭高等学校

  • 高等学校
  • 高1
  • 高2
  • 高3
  • 技術・家庭

概要

全授業を通した指導目標

総合家庭科の課題研究の授業で宇宙食研究を選択した生徒が、宇宙食の開発を行う。当プログラムを通し、生徒はこれまで「フードデザイン」等の専門科目で学んだ、健康と食生活に関する知識や郷土料理、地元特産品を活用することによる地域振興、地元理解、さらに開発をとおして、ものづくりの難しさ等を経験させることを目的とする。プロジェクトの最後に、研究グループごとに学習成果を発表する機会を設けることで、学習内容や情報を総合家庭科の生徒同士で共有する。

対象

高校3年生 1クラス 15名

実施期間

2019年6月~2019年3月

総時限数

30コマ

構成表

日付(時間) 授業内容
9月12日(100分) 授業連携① 「国際宇宙ステーションでの生活と栄養管理」について講義
9月26日(100分) 郷土料理を用いたコロッケの改良、地元特産品「寝たろうカボチャ」と「干ししいたけ」を用いた宇宙食の検討
9月上旬~(400分) 〇かぼちゃペーストを用いたレトルト食品の開発
10月上旬 〇「けんちょうコロッケ」の改良とフリーズドライ化
10月28日(50分) 〇「けんちょうコロッケ」の官能評価と栄養評価のための検査
12月上旬 〇「フリーズドライコロッケ」の油脂の酸化について調査結果の報告を受け、課題研究のまとめ
1月9日(60分) 〇郷土料理に関する講演
2月13日(100分) 授業連携② 学習成果の発表

全体の感想

  • 課題研究に取り組んだ生徒にアンケートを実施した結果、全員が学習の効果を得られたと感じていた。課題研究では、小クループでの取組であることや、自分で調べたり、まとめたり、他者と意見交換する機会が頻繁にあったことで、生徒の授業に対する意欲が高まった。また、研究してきた「宇宙食」というものが形になることで、達成感につながった。一方で、宇宙(宇宙食)についての書籍やインターネット上の情報が少なく、大学等の支援も受けにくい点で非常に苦労した。

当初設定した目的に対する生徒の達成度について(生徒の変化など含む)

  • 今回の事業により、生徒は宇宙への興味・関心を深め、宇宙開発事業を身近に感じることができた。また、宇宙食について深く知ることができただけでなく、「食」の重要性とその意義を再確認するとともに、郷土料理や日本の食文化にも関心を深めることができた。課題解決学習では、目的や目標の設定の大切さや、失敗しながらも何度も繰り返し取り組むこと、失敗についての検証等が次の結果に繋がることなどが理解できた。
  • 加工方法について学ぶ中、フリーズドライという加工方法が最も画期的である一方で、保存期間や衛生面では、これまでのレトルトパウチや缶詰が最も手軽で衛生的であることなどもわかった。フリーズドライコロッケに平行して取り組んだ、レトルトパウチの「厚狭ごはんのお友」は、コロッケよりも早く宇宙食化に成功することができた。しかし、生徒は「揚げ物」という新しい取組に挑戦できたこと、時間はかかったが、仮説を立ててそれを検証していくということを経験できたことの方にむしろ喜びや達成感を感じており、さらには科学的に物事をとらえていくという課題解決の方法の面白さを学ぶことができた。

その他感想

  • 本研究では、「宇宙食を開発する」という明確な目標があったことから、生徒は授業に対して非常に積極的に取り組めた。また、多くの生徒が、普通の高校生活では体験できないとても貴重な経験をすることができたと、学ぶ機会を与えられたことに感謝していた。
 

授業連携詳細

授業連携① 「国際宇宙ステーションでの生活と栄養管理」について講義

指導目標

国際ステーションでの生活における宇宙飛行士の健康や身体変化について知り、宇宙食の必要性と、宇宙食の非常食への応用について考えさせる。

対象

高校・総合家庭科1,2,3年生 69名

授業連携日

2020年9月12日

科目・単元

技術・家庭科

時間配分 学習内容・活動 児童・生徒の様子 教師の役割・活動
導入
5分
本時の学習について 本時の学習について確認する。 森(厚狭)
展開
55分
・宇宙ステーションでの生活と宇宙食について

・宇宙日本食開発の経緯等について
宇宙食とはどのようなものか、宇宙飛行士が宇宙で長期間滞在する間に起こる身体的な変化を知リ、厚狭高校での宇宙食開発について考える。 JAXA
・質疑応答
現在研究中の事柄の、今後の研究計画について報告し、課題解決につなげる。

生徒間での情報を共有し、今後の研究につなげる。
まとめ
10分
講義を聞いての気付きと感想について 森(厚狭)

講師:松本 暁子(JAXA有人宇宙技術部門宇宙飛行士運用技術ユニット)

授業の感想・メモ

  • 宇宙食にはたくさんの種類があることを知り、食べてみたいと思いました。同時にどんなものがあり、どのような技術を使い、保存するのかとても知りたいと思った、いろいろなことに気を付けながら、私も考えて作ってみたいと思った。(1年女子)
  • 宇宙ステーションは、アメリカやロシア、ヨーロッパの国を中心に15か国が参加しており、大きなプロジェクトだとわかった。宇宙と地上での生活は大きく違い、宇宙飛行士は骨量の著しい低下や精神的なストレス、血液、免疫の変化など、身体に大きな影響があることを知り、健康管理の難しさを感じた。食生活の課題としては、栄養が取りにくく、痩せやすいということだが、開発上の課題は残しながらも、現在認証されている宇宙食は、バリエーションが多いことに驚いた。日本の宇宙食は外国の宇宙飛行士にも人気ということであり、もっと多くの日本の宇宙食が食べられるようになり、交流をとおして会話が生まれれば、精神的なストレスも発散できるとわかり、食の重要性を確認できた。(3年女子)

授業連携② 学習成果の発表

指導目標

宇宙食研究とその後の開発、課題のまとめ、3年間の研究成果をまとめ、これまでの学習を踏まえた新しい研究への取組と今後の展開について、学習の成果を発表し、情報を共有する。

対象

高校2,3年生 35名

授業連携日

2020年2月13日

科目・単元

技術・家庭科

時間配分 学習内容・活動 児童・生徒の様子 教師の役割・活動
導入
5分
本時の学習について説明する。 発表を聞いた後、2枚の付箋に、「よかった点、わかったこと、今後に生かせること」「質問」を発表後記入することを確認する。 本時の学習の確認

付箋の使い方の説明
展開
30分
1 学習成果の発表
 1)非常食研究から宇宙食「フリーズドライコロッケ」の開発へ
 2)フリーズドライコロッケの課題と研究結果
 3)フリーズドライコロッケの官能評価
 4)地元食材を活用した新しいレトルト食品の開発と宇宙食への可能性について
1 パワーポイントを用いて発表
2 発表、研究により 「よかった点」 「疑問点」 「研究成果を今後どのように生かせるか」等を付箋に記入させ、情報を共有する。  2 発表を聞いた後、3枚の付箋にそれぞれ意見等を記入し、提出する。

3 「よかった点」「質問」等について、発表者が読み上げる。質問は答えられるものは回答し、それ以外は講師への質問とする。
付箋を回収し、生徒が答えられる質問と教員、JAXA講師が答える質問とに分類する。
まとめ
15分
講評
 
感想、アンケートの記入
「感想カード」より、生徒の気付きを取り上げられたものについて理解を深める。
「質問カード」より、生徒が回答できる内容について、答える。発表の中に答えているものは、資料をもとに振り返る。
生徒の気付きを紹介する。
質問の中で、発表内容にあった事柄については内容を振り返り生徒に確認させる。

講師:松本 暁子(JAXA有人宇宙技術部門宇宙飛行士運用技術ユニット)

授業の感想・メモ

  • 本研究では、「宇宙食を開発する」という明確な目標があったことから、生徒は授業に対して非常に積極的に取り組めた。また、多くの生徒が、普通の高校生活ではできない、とても貴重な経験をすることができ、そうした学ぶ機会を与えられたことに感謝していた。また、「食べる」という事を様々な角度から考える良い機会となり、生徒の深い学びにつながった。
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