教員研修

島根大学教育学部(総合演習)テーマ『宇宙教育の理念にもとづいた教育活動の検討と実践』

島根県・島根大学教育学部

概要

全授業を通した指導目標

公教育の目的を明確にすると同時に、宇宙教育の理念についての認識を深めることによって、従来の学校教育活動を再検討し、そこから抽出される課題を自らの教育活動をとおして乗り越える姿勢と実践する力を、教員養成課程の学生に育むことを目的とする。

対象

大学2~3年生 70名

期間

平成22年6月11日~平成22年12月15日

構成表

実施日
時間
形式
人数
内容
1
120分
講義
80名
事前授業:「なぜ、宇宙教育か…公教育の意義とその目的:現代の教育をめぐる諸課題」
講師:百合田 真樹人
(島根大学教育学部/准教授)
2
180分
講義
80名
宇宙教育についての講義
講師:遠藤 純夫
(全国中学校理科教育研究会 顧問)
ディスカッション
「JAXAのもつ教育資源を教育の現場にどのように落とすか、その課題と対策」
講師:黒谷 明美
(宇宙科学研究所宇宙環境利用科学研究系/准教授)
支援:松岡 均
3
90分
発表・講評
80名
意見の発表・講評
指導:黒谷 明美
(宇宙科学研究所宇宙環境利用科学研究系/准教授)
支援:松岡 均
4
7月4日
240分
演習
80名
「水ロケットの製作と、打ち上げ:教育現場での実践を想定して:実践を通した安全管理と指導手順の確認」 
指導:亀山英嗣氏 宇宙少年団八雲ホシカミ分団 
協力:松江市教育委員会生涯教育課 (地域市民の参加あり) @ 松江市立女子高等学校
5
7月11日
360分
演習
80名
体験学修: 「日本宇宙少年団・中国地方水ロケット大会」の会場設営/運営補助/児童観察
支援: 宇宙少年団
協力:松江市教育委員会生涯教育課

島根県・島根大学教育学部(総合演習)

第1回目/全5回『授業記録シート』

実施日
6月11日
合計時間
120分
参加数
80名
時間配分
研修内容
受講者のようす・感想
研修の感想・メモ
導入
(15分)
・ 宇宙教育とは何か、なぜ「宇宙」教育を教員養成課程で行うのか、という問いかけをおこない、教員養成課程で宇宙教育を行う意義について考察するという講義の目的を明示した。
「宇宙」を教えてもらうという意識で出席している学生が多いことが想定されるため、講義がねらう点について明示することに努めた。
展開
・ 公教育の目的を確認し、その目的と現在の教育をめぐるディスコースの対比を行った。
・ 現在の教育をめぐる諸課題について検討し、宇宙を教育にもちいる狙いについての認識を深めた。
△ 随時、問いかけをしながらすすめた。教員養成課程や学校教育の現場で「前提」とされ、問いかけられることの少ない点について、それらの意味や目的とするものについて批判的検討(critical analysis)を行った。
(例)学校教育における知識とは何か、教科枠の存在意義とその弊害とは何か、評価制度の功罪とその議論を超えた評価へのアプローチとはどういうものか、なぜ社会は教育に投資するのか…など
職業選択肢のひとつとしての教師と、プロフェッショナルとしての教師がもつ目的意識の違いを明確にするとともに、学生自らの教育観を再検討させることに努めた。
また、宇宙を主体的に教育活動に用いることが、教育の社会的な目的と個人的な目的の両方の達成に、具体的な手段を提示する可能性を見いださせるように留意した。
まとめ
◎ 教育をめぐる諸問題や、教育活動において前提とされているものについて主体的に考察し、公教育の目的を達成するための手段として宇宙教育がもつ可能性について認識させ、総合演習(宇宙教育)に対する期待を高めた。
次回からの活動が狙いとするもの、またどのような視点をもって活動/学習すべきかという点について、共通認識を持たせるように留意した。

島根県・島根大学教育学部(総合演習)

第2回目/全5回『授業記録シート』

実施日
6月12日
合計時間
180分
参加数
80名
時間配分
研修内容
受講者のようす・感想
研修の感想・メモ
導入
水ロケットの製作演習
◎ 簡単なガイドラインのみを提供し、学生に試行錯誤させた。
製作方法などについては、1枚ものの簡単な説明書を渡す以外は、何も指導しない。既製品や詳細な製作方法を伝えるのではなく、試行錯誤を通して自らが学校教育活動や社会教育活動を行う場合に、何が(素材などの準備)どのように(教育方法/Pedagogy)必要かという点に気づかせる。
展開
◎ 机間指導
△ グループに分かれて、水ロケットの製作(及びその方法の検討)。製作時、ペットボトルの切断に必要な工夫を考察したり、切断面の安全性を検討したほか、学齢期にあわせてどこまで何を用意するべきかという点について検討していた。
水ロケットを製作する目的として、自らが教育現場で指導することを想定しながら製作するように意識させる。
まとめ
◎ 製作中に気づいた「指導時における留意点」を集約し、全体と共有。実践の前のトライアルの有用性と必要性についての認識を体験的に形成。
子どもに指導する際にどのような点に注意しなくてはならないか、何を用意するべきかなどについて机間指導を通して得た視点や気づきを集約。打ち上げできる完成品の製作を目的としていないので、製作途中で打ち切ってかまわない。

授業の感想・メモ

  • 実際に試行錯誤をさせることによって、水ロケットの製作過程を自ら考えるようにうながすことが可能となった。
    また、低学年の子どもを対象とした場合と高学年の子どもを対象にした場合とで、どのような準備や指導方法の違いがあるかと言うことについて、自らの製作体験と試行錯誤の経験を通して体験的に理解させることにつながった。
    今後指導することを想定して…という動機付けは、教員養成課程の学生にとって「教育をする側」としての具体性のあるものであり、また今次の教育活動の目的を明確にするものとなった。

島根県・島根大学教育学部(総合演習)

第3回目/全5回『授業記録シート』

実施日
6月13日
合計時間
90分
参加数
80名
時間配分
研修内容
受講者のようす・感想
研修の感想・メモ
導入
水ロケットの打上などの活動を単発的なイベントに終わらせることがないように、どのように学習活動に結びつけるかを考えさせる。
各専攻分野(自然科学/共生社会/言語教育/初等教育/芸術文化/体育)ごとに、水ロケット活動からどのように自分の専攻分野の教育活動に結びつけるか考察をうながす(各専攻分野ごとに検討の土台となる資料を用意/配布)
展開
グループ内で討議
机間指導: 学生は各専攻グループ内で討議

自らの専攻分野で行う教育活動では、何をなぜ教えるのかという点について明文化させると同時に、宇宙を用いた教育活動を各専攻分野での教育ではどのように行うかを検討させた。
教育の目標について検討させる際には、学習指導要領などの基準を天井とするのではなく、それを踏み台とするように学生の思考をうながす。
まとめ
討議結果を基に、レポートを各個人で作成、提出させることを連絡し、個々人でのさらなる検討をうながす。

授業の感想・メモ

  • 公教育の目的と意義にまで踏み込んで、自らの専攻分野で行う教育活動について、批判的に検討(Critical Thinking)する機会を作り出すことに成功した。自らの専攻分野での教育活動において、どのように宇宙を素材や舞台として活用できるかを考えさせることで、外的規範である指導要領に限定されるのではなく、指導要領を超えた教育そのものの目標を想起した指導計画を立案する意義と必要性を、教員養成課程の学生に感じさせることができたと考える。

島根県・島根大学教育学部(総合演習)

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