ISEB学生派遣プログラム
【2017年度】第68回 IACアデレード大会
派遣期間 | 平成29年9月21日(木)~10月1日(日) |
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派遣先 | オーストラリア、アデレード市 |
主なスケジュール
日付 | 内容 |
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23日(土) | アデレード日本語補習授業校特別授業 |
24日(日) | ISEBプログラム(オリエンテーション、異文化ワークショップ、アウトリーチ活動のためのトレーニング、アイスブレイキング) |
25日(月) | IACプログラム(オープニングセレモニー、テクニカルセッション、プレナリー、ウェルカムレセプション) ISEBプログラム(ISEB HoA へのQ&Aセッション) |
26日(火) | IACプログラム(テクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー) ISEBプログラム(アウトリーチセッション、ランチタイムセッション、ネットワーキングナイト) |
27日(水) | IACプログラム(テクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー) ISEBプログラム(アウトリーチセッション、ランチタイムセッション) |
28日(木) | IACプログラム(テクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー) 樋口技術参与との懇談会 ISEBプログラム(アウトリーチセッション、ランチタイムセッション) |
29日(金) | IACプログラム(テクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー) ISEBプログラム(JAXA派遣学生プレゼンテーション) |
IAC(International Astronautical Conference)国際宇宙会議について
IACはInternational Astronautical Federation (IAF:国際宇宙航行連盟)、International Academy of Astronautics (IAA: 国際宇宙航行学会) 及びInternational Institute of Space Law (IISL: 国際宇宙法学会)が主催している国際宇宙会議です。この国際宇宙会議では、各宇宙機関長の講演、本会議、レクチャー、各分野に亘る最先端の情報を仕入れることのできる会議、研究発表、イベントなどがあり、各国の宇宙機関長並びに幹部、学者、研究者、企業、若手研究者、学生などが参加する世界最大の宇宙会議です。1949年に第1 回国際宇宙会議を開催し、今年2017年は第68回目の会議となります。本ウェブサイトでは、本会議のJAXA派遣プログラムに参加された学生の皆さんの感想を交え、これらの活動について報告をさせていただきます。
2017年度 ISEB学生派遣プログラム(第68回IACアデレード大会)におけるJAXA学生派遣プログラムについて
JAXAは活動の一環として、IACにおいては、派遣学生に公式プログラムの参加機会を提供するとともに、ISEB参加機関であるESA、NASA、JAXA、CSA、CNES、VSSEC、KARI、SANSA、AEMの9宇宙機関間・団体による協力の下、学生への宇宙分野における知識・理解増進の機会提供、学生を交えた学術・研究交流の奨励、国境や専門 領域の違いを越えた友好の輪を広げることを目指したISEB学生プログラムに参加しています。IAC2017開催の前日である9 月24日(日)を初日としてスタートし、オリエンテーション・セッションが開催され、ISEB参加機関より派遣された54名(ESA:6名・NASA: 13名・JAXA:10名・CSA: 10名・VSSEC:9名・KARI:6名)の学生が出席しました。
また、JAXAが本活動を実施するにあたり、より参加学生に資するプログラム作りを目指して、準備・企画段階から学生主導のもと、JAXA学生プレゼンテーションや宇宙教育活動を取り入れています。2017年度は派遣学生10名の参画・貢献により、有意義なプログラムを実施することができました。
ISEBオリエンテーション、異文化ワークショップ
ISEB HoA へのQ&Aセッション
本セッションは例年通り、ISEB派遣学生からの質問にISEB参加機関の機関長や代表者が回答を行うという貴重な直接的対話機会として実施されました。JAXA派遣学生からは3名が質問をする機会を得ました。
IACテクニカルセッション、プレナリー、ハイライト・レクチャー
JAXA派遣学生のうち3名がIACテクニカルセッションで研究発表をおこないました。
International Student Zone: ISZ(国際学生ゾーン)
ISEB学生プログラムの一環として、IAC2018 展示会場の中に学生のための研究活動成果発表および人材交流の場としてのInternational Student Zone ; ISZ(国際学生ゾーン)が設置され、会期中、主としてランチタイムに各機関から派遣された学生によるプレゼンテーション等が実施されました。また各学生が自分の研究やその他の活動など世界に発信したい内容のポスターを展示し、世界中の研究者や学生達との交流の場にもなりました。
JAXA派遣学生プレゼンテーション
9月29日(金)にはISZ(国際学生ゾーン)においてJAXA派遣学生が一丸となって、各々の研究内容と日本の文化 を融合した1時間のプレゼンテーションを行いました。渡航前から準備をし、直前まで練習を重ねたことにより、本番は大盛況をもたらしました。終了後、聴講者から研究発表に関する質問や多くの感想が寄せられました。
アウトリーチ活動
本年度は、ISEBのアウトリーチ活動として南オーストラリア州の中学校に通う約600名の生徒を3日間に分けてISZに招き、ipadでボール型ロボットを操作するプログラミングの体験学習がおこなわれました。ISEB参加機関のVSSECとISEB派遣学生が協力して、子供たちにプログラミングの楽しさを体感してもらいました。
補習校特別授業
今年度の派遣プログラムでは、準備・企画段階から学生主導のもと、9月23日(土)にアデレード日本語補習授業校を訪問し、幼稚園から中学生までの子供たちに、アルコールロケットの実演やワークショップ(「分光器による光の分解と合成について」「○○電話-宇宙で音は聞こえる?」)など、さまざまな形で宇宙に触れてもらうための特別授業を行いました。
※実演等は指導者の下、安全に配慮しておこなっています。
おわりに・・・
今年度の本派遣プログラムには、学部生から博士課程の学生まで、多種多様な専攻分野から、幅広い層の学生が参加しました。
※本ウェブサイトにおける執筆者の所属大学・学年等についてはIAC2017アデレード大会参加当時(平成29年9月)のものです。
静岡大学大学院 総合科学技術研究科 工学専攻
修士課程1年 相羽 祇亮
- いま僕が少なくとも感じているのは、「僕にとって居心地のいい場所がどこかにある」ということだ。 それは日本の中かも知れないし世界のどこかかも知れない。そしてその場所は自分で探すしかないのだと思う。今回出会った世界中の仲間たちは自分の生まれた国に留まっていないようなエネルギッシュな人が多かった。もちろん日本に留まることを支持する根拠もたくさんあるが、出来ることならもっと世界中を見て回って、僕はこれからどんな場所でどんなことをすればいいのかを見つけ出したい。
東京大学大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻
博士課程2年 大木 優介
- 【HoA Q&Aセッション】では,ESAの代表の方に質問する機会をいただいた。質問の内容は,「宇宙系のスタートアップが活発化してきている中で,国の宇宙機関の果たすべき役割は何だと思われますか?私は,すぐにはビジネスにつながらない,深宇宙探査を主に進めるべきだと思いますが,どう思われますか?」というものだった。ご回答は予想と全く反して,「君は本当に深宇宙探査がビジネスにつながらないと思うのか?」と始め,探査にもビジネスになりえるチャンスが多く存在しているといった趣旨のご回答を頂いた。私は,深宇宙探査は衛星事業などに比べ,短期間では利潤を生む仕組みが作りにくいと考えていたので,このご回答は全く予想外であったとともに,宇宙機関を統べる立場の方は,将来の宇宙開発について非常に幅広いビジョンを描かれているということを実感した。
北海道大学大学院工学院 機械宇宙工学専攻
修士課程2年 後藤 凌平
- 中国の宇宙技術の高さやアラブ首長国連邦の宇宙技術発展の現状、超小型人工衛星の商用利用の活発な様子、月以遠探査による宇宙法の高まり等IACに参加しなければ、触れる機会がなかったような情報を得ることができた。その中で特に印象的だったことは日本の宇宙開発の立ち位置についてだった。 樋口さんが日本の宇宙技術はやっとNASAやESAの技術に追いついてきたところがあるとおっしゃっていた。自分の今までの認識では日本の技術はとっくにNASAやESAに追いついていると思っていた。 IACに出なければ、狭い視野で間違った認識のまま、現状に奢って判断を誤る可能性があったため、IACに参加できてよかった。
岡山大学 医学部医学科 学部4年
佐々並 三紗
- このプログラムを通して私が学んだ最も重要なことは、海外でのアカデミックな視点を得たことだ。 私の出会ったISEBの学生たちはみんな目標があり、情熱があった。そしてそのために世界を股にかけて活躍していた。彼らに言語の壁は無かった。では、もし私のやりたいことが日本になくて、海外にあったら?当然行くしかないでしょう、と今の私は言いきれる。そのために今何をすべきか、何を学ぶべきか、を自分の進みたい道がぼんやりと見えてきた今の段階で知れたのは幸運だった。 今後、自分がどういうことをしたいかを世界的な視点で探して、そしてやりたいことがどこにあっても実現できるような行動力を付けていこうと心に誓った。
総合研究大学院大学 物理科学研究科宇宙科学専攻
博士課程2年 柴田 拓馬(派遣学生リーダー)
- 学会に参加する前に行った出張授業では,歳が離れていて,且つ住む国が違う子供達との交流の中で,自分がこれまでに行ってきた教育活動で得てきた力を再確認することができました. 国際交流を行うという点において,今回のIAC派遣学生としてオーストラリアの文化を知り,学生と交流することができたのはとても貴重な経験であり,今後,自分自身の将来のために還元できるものであると思っています.自分たちが作り上げた授業に興味をもって聞いてくれた学生からのメッセージは,とても嬉しいものでした.
京都大学大学院 総合生存学館 総合生存学(太陽物理学)
博士一貫課程2年(修士課程2年相当)関 大吉
- 僕は今回、2つの大きな学びを得た。1つ目は、世界における宇宙ビジネスへの熱である。世界中の宇宙機関が、宇宙のビジネスへの応用について、これから現実のものになると言及し、企業ブースでは、世界中の企業が、大きな盛り上がりを見せていた。このような、宇宙開発利用が民間のものとして意識され、そのビジネス利用について実際に議論されている場面を目の当たりにし、これからの経済活動に宇宙は重要なファクターとなることを実感できた。 2つ目は、国際的なコミュニケーションの難しさとその克服の仕方である。他国の学生がどのような話題に興味があるのか、どういった雰囲気で会話をすればよいのか、という会話の内容という点で、苦労を感じた。しかし、樋口前IAF 会長との懇談会の際に、基本的な内容は日本人と話す場合と同じであり、日本において好まれた話しをすれば良い、しかしbehavior だけは変えなければならない、というアドバイスを頂けたおかげで、その後の交流会では、以前と比較して会話・交流をお互い楽しめたように思う。
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻
博士課程1年 高尾 勇輝
- 今回のIAC学生派遣プログラムを通して,国際的な繋がり,コミュニケーション力,伝える力,最先端の研究・プロジェクトに関する知見,そしてJAXA派遣メンバーとの出会いなど,非常に多くのものを得ることができました.そして,自身の進路を考えていく上で,海外進出をより強く意識するようになりました.将来,世界の第一線で活躍する宇宙工学者となるため,自分自身を見直す良いきっかけとなりました.本プログラムに参加できたことは,これから私が今後キャリアを構築していく上で,大きな財産となることを確信しています.
総合研究大学院大学 物理科学研究科 宇宙科学専攻
博士課程1年 万戸 雄輝
- 他機関の学生との交流や宇宙教育など刺激に満ちた10 日間を過ごし、私は将来の夢を叶えたい気持ちがより一層強くなったと思います。IAC のTechnical Session では、私の研究成果も発表しました。多くの研究者の方に関心を示して頂き、今後留学したいと考えているドイツの先生ともお話ができ大変有意義なものでした。<中略> 元IAF 会長の樋口さんやJAXA 理事長の奥村さんからのお話でも「日本にとどまっていてはダメ、自分が本当に叶えたい夢や目標が海外にあるならどんどん挑戦すべきである!」という言葉の通り、この機会を通し得た事を糧に海外を舞台に宇宙に興味を持ち身近に感じてもらう活動を行い、宇宙利用に対するハードルを下げ、さらに宇宙太陽発電を実現することで世界中の人々の生活レベルの向上に貢献したいと考えています。
慶應義塾大学大学院 法学研究科 公法学専攻宇宙法専修コース
修士課程2年 三浦 光帆
- IAC派遣は、初めての海外経験、教育活動、研究発表の場であり、序に初めて演劇を披露する機会でもありました。何事も「初めて」には不安が憑き纏うものですが、それらは杞憂で、充実した日々は刹那に過ぎ去っていきました。共に派遣された学生は個性的かつ愉快な面々で、故に綱渡りの時々も見受けられた印象ですが、その綱を渡りきる力を備えた素晴らしいチームであったと自負しております。総括して、IAC派遣は膨大な経験値等を得た、実りのある10日間となりました。 特に、国内外、分野を問わず宇宙を専攻する同世代と知り合えたことは人生単位での財産となるでしょう。
大阪府立大学大学院 工学研究科 航空宇宙海洋系専攻 航空宇宙工学分野
修士課程1年 山田哲嗣
- 研究に関しては,あらゆる分野の方々と交流を持つことで,凝り固まった考えではなく幅広い視点を持って取り組んでいかなければならいことを実感させられました.目標が同じであっても,それらを達成するための手段が思いもよらぬものであったり,思わぬところへ成果を利用したりと,一つの問題を解決するにも実際には様々なアプローチがあることを認識しました. 国際学会での発表はこれが初めてであり,当初はすべてのイベントに対して非常に不安を抱いていました.しかし,それ以上に得るものの方が断然大きく,今後はそれらを整理しながら積極的に自身の人生に取り入れていきたいと考えています。