ISEB学生派遣プログラム
【2019年度】第70回 IAC(United States of America, Washington D.C.)
派遣期間 | 2019年10月18日(金)~10月28日(月) |
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派遣先 | United States of America, Washington D.C. |
主なスケジュール
日付 | 内容 |
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19日(土) | ●ワシントン日本語学校 特別授業 |
20日(日) | ●ISEB プログラム(Orientation, Cultural Awareness Workshop, STEM Engagement Training, ISEB Reception) |
21日(月) | ●IAC プログラム(Opening Ceremony, Technical Session, Plenary, IAC Welcome Reception) ●ISEB プログラム(Head of Agency Interactive Session) |
22日(火) | ●IAC プログラム(Technical Session, Plenary) ●ISEB プログラム(Lunchtime Session, Networking Session) |
23日(水) | ●IAC プログラム(Technical Session, Plenary) ●ISEB プログラム(STEM Engagement) ●その他(NASA本部訪問) |
24日(木) | ●IAC プログラム(Technical Session, Plenary) ●ISEB プログラム(STEM Engagement) |
25日(金) | ●IAC プログラム(Technical Session, Plenary, Closing Ceremony) ●その他(会場ブース撤収作業) |
26日(土) | ●ISEB プログラム (ISEB Cultural Activity) |
◆IAC(国際宇宙会議)について
IACは、IAF(国際宇宙航行連盟)、IAA(国際宇宙航行学会)、及びIISL(国際宇宙法学会)が主催する世界最大の宇宙会議です。毎年秋季に開催され、最新の宇宙開発計画やアカデミックな研究成果の発表の場とて、各国の宇宙機関、学者、研究者、企業、学生等が参加しています。IACは1949年に第1回目が始まり、2019年は第70回目としてアメリカの首都ワシントンD.C.で開催されました。
◆ISEB学生派遣プログラムについて
本プログラムは、IAC公式プログラムに加え、ISEB参加機関・団体(AEM、CNES、CSA、ESA、JAXA, KARI、NASA、SANSA、UAESA、VSSEC)が協力して作る独自の国際交流プログラムへの参加機会を大学生・大学院生に提供しています。幅広い分野で将来の宇宙活動を担う学生の皆さんに、学術・人材交流を通じて宇宙分野の知見を深め、国際理解と親善の促進、及び研究成果の発表や宇宙教育活動を実践していただくことを目的に、毎年IAC会期中に実施されます。2019年は、ISEB参加機関より派遣された61名(CNES:6名、CSA:14名ESA:10、JAXA:6名、KARI:5名、NASA:13名、UAESA:4名、VSSEC:3名)の学生がこのプログラムに参加しました。
また、JAXA宇宙教育センターは、より日本の派遣学生に資するプログラム作りを目指して、準備・企画段階から学生主導のもと、さらなる宇宙教育活動に取り組んでいます。2019年度は、「ワシントン日本語学校」の協力を得てJAXA職員と学生たちで訪問し、「宇宙」を素材とした特別授業をおこないました。
以下、ISEB学生派遣プログラムに参加した日本の学生の皆さんの感想を交えた活動報告をさせていただきます。※記載されている学生の所属大学・学年等については、IAC2019当時(2019年10月現在)のものです。
◆ISEB Program ①
Orientation, Cultural Awareness Workshop, STEM Engagement Training etc.
ISEB派遣学生と職員が会場に集まり、今年のISEBプログラムがスタートしました。
はじめに、各宇宙機関の教育長による挨拶やISEBプログラムに参加する心構えなどのメッセージが学生たちに伝えられました。
"Cultural Awareness Workshop" では、主に Tetra Map という手法を使ったコミュニケーショントレーニングがおこなわれました。自己分析をし、互いの「気質」への理解を深めながらその価値を見つめることで、さまざまな人と関わり協力することの大切さを考えました。
最後に "STEM Engagement Training" にて、ISEBプログラムの中盤に予定されている現地ワシントンD.C.の中学生600人に向けた宇宙教育アウトリーチ活動の予習をし、学生たちは長い1日を終えました。
【Cultural Awareness Workshop の感想】
- 私の座った机には、UAE やフランス、カナダなど様々な国から来た学生が集まっていました。始めの自己紹介では、研究内容や趣味についてお互いに発表しました。年代は近いこともあって共通の趣味もあり、思いの外盛り上がりました。また、時間を制限された自己紹介では、年下の学生や同じ学部生、私の研究内容を法律の観点から学んでいる学生などと話すことが出来ました。少ない時間の中でも多分野で様々な話を聞くことができ、とてもワクワクすると共に今後のプログラムにも期待が膨らみました。テトラマップを使った自己分析では、なぜ自分がこの性質になるのか、多国間で話し合い、自分の意見を主張したことがとても印象的でした。最後に、Cultural Workshop を担当してくださった先生に、言語の壁を恐れずに困ったことがあったら協力を求めること、と教わり、本プログラムが終わってからも忘れずにいようと思います。
(派遣学生 阿久津 壮希)
◆ISEB Program ② Head of Agency Interactive Session
本セッションは、ISEBを構成する各国の宇宙機関長が "ISZ (International Student Zone)"※ に集まり、学生たちの質問に答えていく対話形式で進行されます。今年は宇宙機関長とより近い距離で意見交換が行われました。JAXA派遣学生からは、1名がグループのファシリテーターを務め、3名が宇宙機関長に質問をする機会を得ました。宇宙機関長が一同に会する貴重な機会のため、ISEB関係者以外にも多くの聴衆が集まり、盛況のうちにセッションを終えました。
※ISZ (International Student Zone):ISEB学生の研究発表や人材交流の場として、IAC会場内に設置されるブースのこと。
【Head of Agency Interactive Session の感想】
- 各機関の機関長にISZにて、非常に近い距離で参加学生からの質問に答えていただくというセッションに参加した。各機関の状況を踏まえ、非常に丁寧に各質問に答えていらっしゃった姿が印象的であった。中でも特に記憶に残っているのは、セッションの後に、JAXAの山川理事長がJAXAの派遣学生と話す時間を設けて下さったことである。学生からの質問に対し、普段よりも踏み込んだ回答をしていただき、JAXAや航空宇宙の分野について理解を深めることができた。
(派遣学生 竹村 英晃)
◆ISEB Program ③ ISEB International Student Zone(ISZ)における活動
JAXA派遣学生からは、2名の学生が"Lunchtime Session" で研究発表を行いました。また、ISZには、ISEB参加機関のブースがそれぞれ設置され、JAXAブースにおいては、学生の研究成果や学生団体活動などをポスターとして掲示し、ブースに立ち寄るさまざまな人とのコミュニケーションツールとして活用しました。
【Lunchtime Session の感想】
- 各機関から数人ずつが各自の研究を発表するセッションに参加した。そして自分は ここで、自分の研究について発表した。専門が天文ということもあり、工学を専門とする人が大半の中で発表するのは難しかったが、馴染みがないであろう、天文学者が 何を知りたくて、どのようなアプローチで研究をしているのかを伝えることはできたと感じている。他の参加学生の発表は、普段聞くことがない分野の発表でとても新鮮であった。どの学生も自分と同じように、ある目標にむけて、生じた問題を解決しながら一歩ずつ研究を進めていることが改めてわかったことは収穫であった。一方で、一部の学生の発表しか聞くことができなかったこと、自分の研究について十分に伝えきれなかったことは残念であった。
(派遣学生 竹村 英晃)
◆ISEBプログラム④ Networking Session
ISEB派遣学生とスタッフを含めた "Networking Session"(交流会)が開かれました。このセッションには、NASAの現役職員や宇宙飛行士も参加し、和やかな雰囲気のもと、興味深いお話をたくさん伺うことができました。プログラムが始まって数日が経ち、学生同士の交流も深まりました。
【Networking Sessionの感想】
- Head of Agency Interactive Session がフォーマルな場だとすると networking night はインフォーマルな場で、NASA の上層部とかなり深い話をじっくりすることができた。特に、NASA が宇宙開発の目的や、宇宙開発計画を遂行する上でどのような利害関係者を調整しどのように意思決定をしているのか、具体的に話ができたのは今後宇宙開発というものを考えるにあたって非常に有用になると期待される。
- このような方々と一度に深く議論する場というのは、プログラムという枠組みなしでは設けることが難しいものであり、この経験が出来たことは ISEB プログラムに参加した大きな意義と感じている。今後もぜひこのような機会を設けていただきたい。
(派遣学生 野村 俊一郎)
◆ISEBプログラム⑤ STEM Engagement
2日間にかけて現地ワシントンD.C.の中学生600名をIAC会場に招き、2種類の宇宙教育アウトリーチ活動を実施しました。一つは、日本でも理科教材や玩具として知られている「ポンポン船」の製作実習です。ISEB学生は、中学生と一緒にポンポン船を作り、推進力の仕組みをわかりやすく伝えながら、水に浮かべた船の進み具合を観察しました。
2つ目は、同上の中学生を対象にJAXA派遣学生が出発前から準備した「曲線折り」の体験です。ソーラー電力セイル「IKAROS」のように大きな膜をコンパクトに収納する方法を生徒たちに学んでもらうために、学生たちは出発前に試作を繰り返しながら型紙やフリップを作成して準備に励みました。活動当日は、JAXA派遣学生総動員で多くの生徒を迎え入れました。生徒たちは熱心に「曲線折り」に取り組み、余った時間で学生から折り紙を習いました。
【STEM Engagement の感想①】
- はじめは宇宙教育センターの方がミウラ折りを提案してくださったのだが、もう一人のメンバーの専門ということで曲線折りに変更となった。彼が曲線折りのパターン生成を担当し、私は折り目パターンを見栄えの良いデザインに落とし込む作業を担当した。作成したデザインは何度も印刷し、宇宙教育センターや参加学生で試しに折り、そのたびに改善点を見つけて修正するというループを繰り返した。このループの中で、いかに中学生が楽しく、ときめきながら取り組んでくれるかを想像したのだが、アメリカの中学生の能力を推し量るのが想像以上に難しかった。結果からいえば興味をそんなに持たない生徒から深く興味を持ってくれる生徒まで幅広かった。とりあえず遊ぶ→手を動かして物を作る→原理を説明する、などのように段階的にすることによって、どのような興味の生徒に対しても楽しんでもらえるような教材としてあらかじめデザインすることができれば良かったように思う。実際にもその場で臨機応変に対応していたので問題はなかった。
- 当日、JAXA の周りのブースは比較的遊びに重点を置いた企画で、紙を折るだけの企画はそれに比べて地味なのではという心配が頭をよぎった。しかしそれは杞憂で、たくさんの生徒が JAXA のブースで曲線折りを体験し、ほとんどの生徒が直線折りと曲線折りを完成させた。何人かの生徒は、なぜ曲線折りの方が綺麗に巻き付くのかの説明をじっくり聞き、理解してくれた。ほとんどの中学生は自分が予想していたよりも知的好奇心旺盛で、その好奇心に応えるような教育プログラムの重要性を実感できる経験だった。
(派遣学生 野村 俊一郎)
【STEM Engagement の感想②】
- 午前中は、JAXAのSTEMブースで、現地のミドルスクールに通っている生徒たちを対象にソーラーパネルの折り方にも使われている折り方を教えた。初日にも同じように子供達に教えることを行なったが、今回はより対話的な形式であり、言語も英語であった。準備段階の時点では、現地の学校の生徒が本当に興味を示すのか分からなかったので不安であったが、やってみると子供達はとても真剣にやってくれ、さらに質問を投げかけるとしっかりと考え自分の思う意見で返してくれた。中には、ちゃんと本質を見抜いた生徒もいて、驚いた。また英語ではあったが、しっかりとコミュニケーションが取れたことも自分的にはいい経験になったと感じている。午後からはVSSEC主催のポンポン船の実験を同様に現地の学校の生徒に行った。自分一人に対して、子供が6人くらいいて、かつ英語でコミュニケーションを取らないといけないということもあり、かなり不安ではあったが、こちらもしっかりとコミュニケーションが取れ実験に興味を示し頑張って原理を理解しようとしてもらえた。子供の興味を刺激することが出来たのは嬉しかった。
(派遣学生 井上 拓也)
【STEM Engagement の感想③】
- このISEBプログラム中に、幾度とない他国の派遣学生と机を囲んだ談話をすることができ、さらにはアメリカの小学生に英語でSTEM教育を行うことができた。自分の拙く、文にならないことも多い英語であってもしっかりと聞いて答えてくれた。さらに、非英語圏の英語に慣れているであろう学生だけでなく、アメリカの中学生が私の英語によるSTEM教育の授業内容の説明を理解し納得してくれ、その内容を引率の先生に話してくれた。
- このことは自分の英語でも十分考えを伝えることができるのだと大きな自信になった。今までは海外旅行程度ならいいが仕事までは厳しいと考えていたが、このプログラムを通して、英語で行う仕事も積極的に引き受けていきたいと思えるようになった。
(派遣学生 田村 匠)
◆JAXA宇宙教育センター独自プログラム
JAXA派遣学生による日本語学校特別授業 ~ソーラーパネルについて学ぼう~
準備・企画段階からJAXA派遣学生が主導の下、ワシントン日本語学校にご協力いただき、小学6年生の生徒たちを対象に「宇宙」を素材に特別授業を実施しました。授業では、教材用ソーラーパネルを使い、実際に発電する様子をさまざまな形で生徒たちに体験してもらいました。さらには、ソーラーパネルが探査機や人工衛星にも使われている様子を説明し、生徒たちに宇宙を身近に感じてもらうよう努めました。ワシントン日本語学校の生徒さんは、元気いっぱいで積極的に授業に参加し、たくさんの質問や学生からの問いかけに応えてくれました。
【特別授業の感想①】
- 授業前からも子どもたちが私たちの所に来て質問をしてくれました。次から次へと出てくる質問に、子どもたちの宇宙への大きな興味を感じました。授業本番では、私たちの問いかけに果敢に手を上げ、発言している様子が印象的でした。間違えることもありましたが、決して諦めずクラス全体で答えようとする様子を今でも鮮明に覚えています。実験では、静観する子どもはおらず、相手の意見も尊重しながら、自分の意見を主張する姿に感心すると共に、この授業計画がうまく噛み合ったと思いました。話し合いの大切さ、科学を通しての競争、実験の楽しさを経験してくれたと思います。最後には、現地の先生から、お褒めの言葉をいただき、子どもたちに手を振ってお見送りしれくれたことがとても嬉しかったです。多くの子どもたちが、興味・関心のある宇宙だからこそ、宇宙教育の必要性をまざまざと感じました。そして何より、教育に携わることの楽しさを実感し、自分自身にもとても貴重な経験でした。
(派遣学生 阿久津 壮希)
【特別授業の感想②】
- 日本語学校補習校授業を行った。私はアルバイトで中学一年のクラスの集団授業を行っているのでそれに近い感じかなと思っていたが、想像以上に小学生たちは無限に元気で、好奇心旺盛であった。授業内容としてはソーラーパネルにつないだLEDが光った時の電圧が、光をパネルにどのように当てた時が一番高くなるか、また波長の異なる光やセロハンを用意して、どのようなときに一番電圧が高くなるかを5人程度のグループで考えて競わせた。もともと渡航前の準備の段階でLEDではなく豆電球を用いてこの実験をしようとしていたのだが、電流が足らず光らないという事実に気づき、LEDに変えた。しかしLEDを用いても光の当て方や種類を変えた際にあまり電圧に有意な差が現れず、若干個体差のせいではないかと思われる場面もあった。ここがやや反省点である。しかし授業自体は大成功であった。質問タイムになるとたくさん手が挙がって、鋭い質問をたくさん受けた。よくそこが不思議に思うな、と感心するものばかりであった。
(派遣学生 河野 麗)
おわりに・・・
今年度のISEB学生派遣プログラムには、学部生から博士課程まで、多種多様な専攻分野から、幅広い層の学生が参加しました。JAXA派遣学生の参加報告書より一部抜粋した文章を掲載いたします。
※記載されている学生の所属大学・学年等については、IAC2019当時(2019年10月現在)のものです。
阿久津 壮希
東京理科大学 理学部第一部 応用物理学科 B4
【全体を通して目的の達成、得られたこと、今後の展望】
- 参加の目的は 3つありました。私は、今年の 4 月から宇宙研に所属し、研究を行っています。そこで、感じたことは自分自身の知識不足です。子どもの頃から宇宙に興味はありましたが、興味だけで知識やそれを応用する能力が無いことを体感しました。そこで、本プログラムに参加し、IACに参加することで、宇宙技術の現状を国際的な視点で知りたいと考えていました。これに関しては、テクニカルセッションの参加や、実際に企業や機関の方とお話しすることによって、国際的で多方面の意見を聞き、宇宙技術の現状を体験することが出来ました。次に、今後宇宙や研究に対してどのように行動すればいいのか、その参考にするため、同年代の学生がどのように考え、どのように行動しているのかを知りたかったです。これに関しても、同じ学部生のみならず修士・博士課程の方から多くの話を聞くことが出来ました。もちろん国際的に、その生活や研究活動について話を聞くことが出来ましたが、同じ JAXA 派遣学生の実体験もとても参考になりました。国内外からの意見を聞けたため、とても今後の活動に参考になる体験が出来きました。3つ目は宇宙教育に自分自身が率先して触れることです。今回、補習校授業があることを知り、実際に講師になり子ども達に宇宙教育をしたいと思いました。私と同様に宇宙に興味を持つ子どもは多いことに気づき、本プログラムでの経験を通して宇宙技術の現状を子ども達にも共有したいと考えていました。宇宙教育に関しては、今後も活動を続けていきたいと考えています。やはり、本プログラムを通して宇宙教育の必要性について身をもって体験しました。今後は、子どもたちと実際に交流する形で宇宙教育を行っていきたいです。
- 本プログラムに参加して、良かったと思うことは沢山あります。研究面では勿論のこと、発表方法なども勉強になります。何よりも人脈が広がることが大きな魅力です。文化交流を通じて、沢山の一生の思い出が出来ました。何よりも、宇宙好きの学生や企業の方に囲まれ、沢山の会話を交わすことで、自分自身の研究を頑張ろうと思います。それもまた、本プログラムの大きな魅力だと思います。
【学生派遣プログラムのすすめ】
井上 拓也(JAXA派遣学生リーダー)
同志社大学大学院 理工学研究科 機械工学専攻 博士前期課程2年
【全体を通して目的の達成、得られたこと、今後の展望】
- 今回のISEBプログラムを通して、私は多くの経験をし、そこから多くの学びを得ました。70回目という記念すべき時に世界で一番大きい宇宙の会議であるIACに参加でき、またISEBで集まった各国の宇宙機関から派遣された同世代の人達と繋がりを持つことができ、普段は絶対に会って話すことすらできない宇宙機関長と話すことができ、今回のプログラムに応募して良かったと感じています。また、準備段階から今回のプログラムのJAXA派遣学生のリーダーを務めさせてもらい、所々にリーダーの役割としての欠陥がありましたがISEBメンバーの支えがあり、乗り越えることができ、またそれらから学ぶことも多くありました。私は将来的にアウトリーチ活動を行いたいと考えていたため、宇宙教育を介したアウトリーチ活動を行える本プログラムに応募しました。これまでジェネラルエンジニアリングを含め、理学のバックグラウンドを持つ自分としても幅広い背景を持った多様な人々が一同に会し、様々な出会いがあることに期待していましたが、期待以上の経験を得ることができました。
河野 麗
東京大学 工学部 電気電子工学科 B3
【全体を通して目的の達成、得られたこと、今後の展望】
- 今回の派遣にあたって一番の目的としていたのは他国の学生との交流であった。折角の機会なのだから、委縮して日本人とばかり一緒にいても日本にいるときと何ら変わらない、一人で積極的に話しかけていこうと心に決めていた。意外とESA,CNES,UAEにちょこちょこと学部生がいて安心した。CNESには19才の方もおり、とても驚いた。日が経つにつれ、どんどん仲良くなる学生が増えていった。初日は一人一人の顔の判別がほぼついていない状況だったのだが、最後にはほぼ全員と一度は会話していた。ISEBの10日間は私にとって夢のような環境で、毎日が非常に充実していた。(中略) 私は将来教育に携わる職業には就かないかもしれないが、今回の経験を通じて得られた知見、宇宙教育のすばらしさを今後も発信していけたらと思っている。この度はこのような最高の機会を提供していただき、誠にありがとうございました。
竹村 英晃
総合研究大学院大学 物理科学研究科 天文科学専攻 M2
【宇宙教育活動を幅広く推進する上で、重要と思われること】
- まず、宇宙という分野には人を惹きつけることができるコンテンツがたくさんあると感じている。そして、今回補習校授業でテーマとして扱った太陽光パネルなどの宇宙と地上で使われている技術は繋がる部分が多く、物理法則は何ら変わらないので、きっかけがあれば興味を持ちやすい分野なのではないかと思う。よって内容が充実しているからこそ、大切なのは伝え方と適切なレベル設定だとこのプログラムで感じた。また、やはり手を動かしてもらうことは大事で、「実験が終わった」、「ものが完成した」ということがわかりやすいものの方がいいのではないかと思った。そして、学年が下に行くほど達成感を得させてあげることが良いと、補習校の授業やSTEMのブースで感じた。補習校の授業で電圧を測って競ったことはとても良かった。宇宙とは直接関係はなかったが、折り紙も「できた」ということがわかりやすかった。さらに、補習校授業での太陽光パネルの仕組みのような、「難しくて今は理解できない」という要素が少し盛り込まれていると、好奇心を刺激できるのかなとも感じた。あとは、宇宙教育をしている側も楽しんでいるか、ということも伝わると思うので、重要だと思った。
田村 匠
東京工業大学 工学院 機械系 機械コース M2
【全体を通して目的の達成、得られたこと、今後の展望】
- 元々プログラムに求めていたものは、他の日本の派遣学生も含めた世界の優秀な学生とのネットワークを広げていきたいというものであった。
この点については期待以上であった。留学経験や海外インターン経験が豊富で優秀な日本の学生に加えて、アメリカ国旗を背負った写真を撮るようなNASAの学生など世界のトップレベルの学生、さらには各国宇宙機関長や宇宙飛行士と話すことができた。これだけでも十分であるが、個人的に何よりもうれしかったことは宇宙分野の折り紙工学という非常にニッチな自分の分野を研究する他国の学生がISEB参加者にいたことである。ISEB期間中もどのような論文を参考にしているかや研究の内容に踏み込んだ議論などをすることができ、これからも直近で研究について連絡を取り合うつもりである。以上のような素晴らしい出会いを得ることができた。 - 予想していたことではあったものの残念だったことは、結局テクニカルセッションは自分が発表するセッションしか聞くことができなかったことである。私としてはISEBの活動が楽しかったためいいことではあるが、研究者としてはより多くのテクニカルセッションを聞けた方がよかったのだろうと思う。
しかし裏を返せばそれだけ充実したISEBプログラムであった。(中略) ISEBプログラムのおかげでIAC参加の1週間を非常に有意義で充実の時間とすることができた。
野村 俊一郎
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 D2
【宇宙教育活動を幅広く推進するうえで、重要と思われること】
- 宇宙を工学と理学の面からみると、今回の補習校での授業や STEM Engagement では、工学に焦点を当てていた。自分で考えて工夫することによって失敗しながらも最終的に良い結果を出すことで、子供はものづくりに興味を持つのだと感じられた。特に曲線巻きは初めてみるものがなぜかきれいに巻き付いているという不思議を、折り線の長さという物理的な量で説明されて納得するという経験ができていて、これはまさに工学の醍醐味だと思う。理学の面でみても、火星表面の画像やリュウグウの形状など宇宙は見たことのない不思議な現象をたくさん見せてくれる。
- 宇宙教育活動推進のためには、これらの不思議な現象を宇宙ミッションがもたらすように働きかけることが重要であると思う。純粋な工学的・理学的価値のみに基づいて設計された宇宙ミッションに対して、子供を含む一般の方に響くような成果を出すにはどうすれば良いのかという視点を加えることで、宇宙開発に従事する人を集めたり、宇宙開発に対する市民の理解醸成に繋がったりと、長期的な価値をもたらすことができる。このためには、宇宙教育センターに勤める方だけではなく実際に宇宙ミッションを設計する人たちが宇宙教育とはどういうものかを体感しておくことが重要だと思う。