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レベル:大学生以上

JAXAアカデミー 夏のホームワーク✍
【軌道設計、スイングバイ】募集期間:8月31日まで

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2022年8月31日(水)に募集を締め切りました。

更新情報

2022/12/13 発表会の様子を公開しました。 特設ページはこちら NEW

2022/12/13 参加者からの質問に尾崎直哉特任助教が回答しました。 本記事の「質疑応答」をご覧ください。 NEW

2022/ 8/24 課題を進めるにあたり、この動画を見るとヒントが得られるかも?! 補足動画はこちら(YouTube動画リンク

2022/ 8/ 5 募集課題の詳細を公開しました。 ※募集は終了しました。





開催情報

JAXA宇宙科学研究所 尾崎 直哉

木星の衛星エウロパに着陸探査したい。小惑星ケレスからサンプルリターンしたい。 そうした宇宙ミッションを計画するときに、真っ先に考えなければいけないことが探査機の軌道設計(=探査機を飛ばす飛行ルートを決めること)である。
一見、地味な分野に思われるかもしれないが、軌道設計とミッション実現性は密に関連しているため、特に宇宙を志す者の教養として知っておいて損はない。
また、軌道設計には数学・物理の知識がたくさん用いられる。
数学・物理が好きな人は楽しみながら,数学・物理が苦手な人は今後学習を進めるためのモチベーションにしていただきたい。
今回の夏のホームワークでは、軌道設計のワザとして最も有名な「スイングバイ」の軌道設計に取り組んでもらいたい。
より多くの人に参加してもらうためにも、種類の異なる2つの部門を用意した。
「教材「高校数学・物理で学ぶスイングバイ軌道の作り方①」および「高校数学・物理で学ぶスイングバイ軌道の作り方②」」を読んだ上で、好きな部門1つを選んで、回答していただきたい。




このプログラムはスイングバイの計算に必要な物理、数学の知識をステップごとに学び、A.ミッションデザイン部門、B.クリエイティブ部門について作品を募集します。優秀作品はJAXAが運営するSNSやウェブサイトなどでの公開やJAXA相模原キャンパスの宇宙科学探査交流棟にて掲示の他、下記日程において優秀者を相模原キャンパスにご招待し作品の紹介と発表を行います。また、相模原キャンパス施設見学ツアーにも特別にご案内いたします。

発表会:2022年10月23日(日)
場 所:JAXA相模原キャンパス


▶発表者のご自宅等(国内)からJAXA相模原キャンパスまでの往復の旅費を支援いたします。チームで参加された場合は、代表者1名に限ります。
なお全額支援できかねる場合もありますで、ご了承ください。


募集課題


以下2つの部門を設けます。

A. ミッションデザイン部門

本部門では,自身がプロジェクトマネージャとなって,実現したいミッションの軌道設計を行ってもらいます。設計された軌道のオリジナリティと軌道設計手法の新規性を評価いたします。


  • 好きな対象天体(惑星でも仮想的な小惑星を作成しても良い)を決めて、その対象天体を探査するための軌道設計を行うこと。
  • 打上げ時のV∞は5km/s以下とし、スイングバイを1回以上用いて、ΔVの総量(=各ΔVベクトルの大きさの合計値)は5km/s以下となるようにすること。その他、仮定されている条件は自由に設定して良い。



計算過程・最終結果をポスター(パワーポイントやPDF、手書きなど)とPythonプログラムのソースコードをまとめて提出すること、特に軌道設計手法に工夫があれば、解説を加えることを期待します。


B. クリエイティブ部門

本部門では、スイングバイの原理と有効性をわかりやすく伝えるための動画を作成してもらいます。「原理」と「有効性」の2つの観点を美しく&分かりやすく伝えられているかを評価いたします。


  • 高校生に説明可能なレベルの内容で数分程度の動画を作成すること、
    作成した動画は,Youtubeに限定公開でアップロードし,そのURLを提出すること。


注記:今回選ばれた優秀作品は、JAXAアカデミー関連のウェブサイトまたはSNSなどでの公開や、JAXA相模原キャンパスの宇宙科学探査交流棟にて掲示を予定しておりますのであらかじめご承知おきください。




募集詳細

対象 どなたでもご参加できます​
応募締切 2022年8月31日(水) 申込は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。
提出形式
  1. ポスター:ファイル容量は50MBを上限とします。電子ファイルのアップロードにはGoogleアカウントが必要です。
  2. ソースコード:Pythonプログラムのソースコードとし、原則「.py」か「.ipynb」の形式でご提出ください。
  3. 動画:YouTubeに限定公開した上で、そのURLをご提出ください。ただしYouTubeの公開にはご自身でのログインが必要です。
提出方法 提出フォームに必要事項を記入の上、ポスターの電子ファイルまたは動画URLをご提出ください。
提出フォーム https://forms.gle/TubauRVWnGYt5H7X6
問合せ窓口 JAXAアカデミー事務局 jaxa_academy,jaxa.jp

※新型コロナの感染状況などの理由により、予告なく中止やプログラム変更を行う可能性があります。

提出される場合は、必ず上記詳細をお読みのうえ、ご提出ください。​

2022年8月31日(水)に募集を締め切りました。

質疑応答

発表者からの質問に尾崎直哉特任助教が答えました 

Q.今回の計算ではわずかに条件がズレただけで結果が大きく変わってしまうことが分かりました。実際の軌道設計はどの程度の誤差を考えているのか、どのようにして精度良く探査機の軌道を制御するのか興味が湧きました。

A.確かに小さな誤差でも大きな影響が出ることが確認できたかと思います.この誤差は,どのくらいの時間,軌道伝播をするか?に大きく依存します.なので,実際には「ズレてきたな」と思ったタイミングで軌道修正を掛けて,元の軌道に戻します.小さな誤差が大きな影響を及ぼすように,この軌道修正量も小さな量で大丈夫です.この軌道修正マヌーバのことを英語の頭文字を取って,TCM (Trajectory Correction Maneuver)と呼びます.
Q.専門家でもプログラマでもない方が今回の課題に挑戦する際、効率の良いパラメータ探索の方法はありますか?

A.Pythonプログラミングの中で,初心者でも使いやすい最適化ライブラリがあるので,それを使うと良いかと思います.ただN体問題アプローチは,なかなか限界があるので,少し工夫が必要かもしれないです.
Q.(質問ではありません)私は宇宙に興味を持った中学3年のころから、星を見るのと同時に天文計算にも興味を持ち、惑星の位置推算などを本で勉強しました。そんな中、1年半ほど前ネットニュースで偶然尾崎先生のことを知り、まさに私のやりたいことだという感じがしていろいろと調べたのを覚えています。探査機の軌道設計は難しそうでやったことがありませんでしたが、憧れがあり、今回スイングバイの軌道を自分で設計したことはとても楽しい経験になりました。今回の軌道は円軌道によるモデル化など現実とは違うところがあるものの、こうして設計した軌道に実際に探査機を飛ばしてみたいように思いました。おもしろい企画をありがとうございました。長文失礼しました。

A.熱いメッセージありがとうございます!
Q.デタラメに各種パラメータを変えて生成される軌道を見ることでしか軌道設計ができない状態どまりになってしまいました。pythonをいじって軌道を変えられるようになってからがとっかかりがなくて地獄でした。先生方は軌道をある程度イイ感じにできるパラメーターを計算的に予測できたりするのでしょうか?やはり動画で話しておられたように解析学的に多々試す+経験から推定するのみでしょうか?

A.今回,教材で紹介したN体問題アプローチは,かなり感度が高いので,苦戦されたかと思います.我々は,実際には二体問題・パッチドコニックス・ランベール問題等の手法を駆使して,軌道設計します.これには,Lv.50の知識が必要なので,今回は割愛しました.が,もし第二回をやるのであれば,このアプローチをブラックボックス化して(中身は詳しく解説せずに)利用するアプローチはあり得る気もしています. このLv.50のアプローチを用いて,軌道設計をしていると,自然に経験が身に付くような感じですね.この辺,AI化したいなぁというのが,私自身が取り組もうとしている研究課題の1つです.
Q.今回は、スイングバイで目標とする天体の出来るだけ近くを通過することに取り組みましたが、着陸を考えるとさらに速度ベクトルも合わせこんでいく必要があるように思います。実際のミッションの際には、チュートリアルで触れられていた位置や打ち上げ能力、ΔVの制限以外にどのような制約に気を付けているのでしょうか?

A.惑星軌道投入や着陸時に必要なΔV(到着時のV∞に大きく依存する)を制約(正確には,最適化の対象)として含むことが多いです.
Q.長い軌道を一度に求めるのはかなり難しく感じました。実際には、問題を部分問題に分割して考えられているのでしょうか?

A.今回のように1連の軌道のパラメータを最適化していくアプローチを専門用語でSingle Shootingと呼びます.実際には,軌道を複数に分割して,分割された軌道がお互いに接続されるような制約条件(時間・位置・速度が一致するように)をおいて最適化を行います.これをMultiple Shootingと呼びます.
Q.チュートリアルではΔVのグリッドサーチについて触れられていました。今回はそれに代わってブラックボックス最適化を利用してみましたが、実際のミッションではどのような最適化が行われるのでしょうか?

A. 軌道最適化は大きく2種類に分けられます.大域的最適化と(ある解近傍の)局所最適化です.まず大域的最適化で当たりをつけて,局所最適化で最終的な結果を得るアプローチを使うことが多いです.大域的最適化には,いわゆる,進化的計算等のブラックボックス最適化がよく用いられます.局所最適化には,非線形計画法や微分動的計画法などが用いられます.
Q.私は宇宙研で働きたい高専生です.尾崎先生は元高専生ということですが,何かそれに関してアドバイスをいただければ嬉しいです

A.高専生の強いところはグングン伸ばして,弱いところを補強していくことを強く進めます.具体的に,どの部分をどのように?というのは,人によりけりなので一概には言えないですが・・・.僕自身が努力して克服したのは,コミュニケーション能力(英語を含む)です.あとは,大学編入をして,大学院に進学して,視野を広げられたことが今の僕の礎になっています.頑張ってください!
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